「野菜をよく食べる人はストレスに強い」「パンや麺類ばかりだと疲れやすい」――そんな話を耳にしたことがある人は多いかもしれません。しかし、こうした食習慣とこころ・からだの状態との関係は、実際にはどの程度、どのような形で結びついているのでしょうか。食事と気分の関係を調べる研究分野では、食事がメンタルヘルスに与える影響を調べる「栄養精神医学」と、逆にストレスなどの感情が食行動に影響する「感情的摂食」という、双方向の視点が存在します。栄養素の摂取量と健康アウトカムの間の量的な関係(多く摂るほど効果が強まる、あるいはある量を境に変化するといった関係)はこれまでも研究されてきましたが、食品群ごとの摂取頻度とストレスとの関係をこうした観点から詳しく調べた研究は、まだ多くありませんでした。今回紹介する論文は、日本の地域住民を対象にした観察研究のデータを用い、食品群別の摂取頻度とストレス反応との関連を統計的に推定したものです。

研究でわかったこと

この研究では、日本の青年期・若年成人(男性48名、平均年齢32.3歳/女性124名、平均年齢29.8歳)を対象にした地域観察研究のデータが使われました。こころとからだの状態は「職業性ストレス簡易調査票」に含まれる、心理的ストレス反応・身体的ストレス反応に関する項目の回答値をもとに評価されています。また、各食品群の摂取頻度は、食物摂取頻度調査票(FFQ)によって把握されました。FFQは本来「ほとんど食べない」「週に数回」といった段階(順序尺度)で回答するものですが、この研究では構造方程式モデリングという統計手法を用いることで、これらの回答を月あたりの摂取回数を表す整数値として扱えることを示し、その上で摂取頻度とストレス反応との関連を推定しています。

分析の結果、女性では、緑黄色野菜については「どれくらいの頻度で食べているか」よりも「食べているかどうか」自体が、ストレス反応の大きさと関連していることが示されました。一方、パン・麺類・でんぷん質食品については、摂取頻度が増えるほど疲労感も増すという、単調な正の関連(頻度が上がるにつれて一方向に強まっていく関係)が観察されたと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

著者らも述べているように、この研究で示された関連からは、食事がストレスに影響を与えているのか、それともストレスが食事の摂り方に影響を与えているのか、その因果の方向を切り分けることはできません。食事とこころ・からだの健康は双方向に関係し合っている可能性があり、今回の結果はあくまで、特定の食品群の摂取頻度とストレス反応との間に見られた、線形あるいは非線形の「関連」を示したものです。特定の食品を食べればストレスが改善する、あるいは特定の食品が疲労の原因になる、と断定するものではない点に注意が必要です。また、対象者数や地域が限定された観察研究であることも踏まえ、一つの研究としてこの結果を受け止めることが大切です。

まとめ

この研究は、青年期・若年成人を対象に、食品群ごとの摂取頻度とストレス反応との関連を、量的な観点から探ったものです。女性における緑黄色野菜の「摂取の有無」との関連や、パン・麺類・でんぷん質食品の摂取頻度と疲労感との単調な関連が示唆されており、食事とストレスの関係を考えるうえで一つの手がかりを提供するものと言えそうです。今後、こうした関連の背景にある因果関係を明らかにするためには、さらなる研究の積み重ねが必要とされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:青年期・若年成人における食事摂取とストレス反応の用量依存的関連の推定:日本の地域観察研究からのエビデンス(ニュートリエンツ・2026年08月)