著者の所属・活動拠点の国は、インド、アメリカです。

掲載誌:Plants

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

土壌に塩分がたまる塩害は、植物の水分吸収を妨げ、イオンの害や栄養の偏り、細胞の酸化的な損傷を引き起こして、生育や収量を低下させます。論文によると、ラッカセイは中程度の耐塩性を持つ作物とされる一方、発芽期や生育初期には塩分の影響を強く受けやすいとされています。

研究チームが着目したのは、潮の満ち引きで塩分濃度が大きく変わるマングローブ林です。こうした厳しい環境の植物と共に暮らす細菌は、複数のストレスに対応する性質を備えている可能性があります。研究チームは、マングローブ植物の組織内に住む「内生細菌」のうち、塩分に強い耐塩性の細菌が、本来の宿主とは異なるラッカセイの塩ストレスを和らげるかを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、インド・アーンドラプラデーシュ州の沿岸に生えるマングローブ植物2種(Aegiceras corniculatumとExcoecaria agallocha)の根や葉から内生細菌を分離しました。その中から6株の候補を選び、ラッカセイ品種JL24で調べました。

まず、細菌に目印となる遺伝子を組み込み、染色すると青緑色に見えるようにして、細菌がラッカセイの苗に入り込むかを確かめました。その結果、6株すべてが苗の根や茎の組織内で確認されました。ただし著者らは、この方法では定着の程度や長期間とどまるかまでは測っていないと述べています。

続いて、選ばれた3株を温室で試しました。遺伝子配列から最も近縁とされた種は、ACR52がクレブシエラ属、EAL318が枯草菌、EAR195がプロテウス属の細菌です。各株を単独で種子に与えた区、3株を等量混ぜた混合区(C3)、細菌を与えない対照区を用意し、それぞれ塩化ナトリウム濃度0、300、500ミリモルの条件で育てました。そのうえで、根や茎の長さ、植物全体の重さ、葉の水分、葉緑素の量、根粒や花の数、収量などを比べました。あわせて、細胞を傷つける過酸化水素(活性酸素の一種)や、その害を抑える抗酸化酵素の働きも測りました。

主な結果

論文の報告では、細菌の種類によって効果の現れ方が異なりました。最も強い塩条件(500ミリモル)では、EAL318と混合区で根や茎の長さが保たれやすく、EAR195とACR52では植物全体の重さが比較的大きくなりました。著者らは、ACR52は主に発芽や葉緑素、葉の水分、繁殖面の維持に、EAL318は根の維持と抗酸化防御に、EAR195は地上部の生育や糖の蓄積に関係していたとまとめています。ACR52を与えた植物では、収量の割合を示す収穫指数が11.51%で、対照の8.98%を上回ったと報告されています。

3株の混合区は、すべての項目で最高値を示したわけではありません。それでも、葉や茎の量、根粒や花の数、抗酸化の働きなど、最も幅広い性質を保ちました。強い塩条件では、混合区で抗酸化酵素の一つの活性が最も高く、過酸化水素の蓄積は最も少なかったとされています。

複数の項目の関係を調べると、過酸化水素が多いほど収量関連の値が低い傾向がありました。ただし著者らは、これらの相関は因果関係を証明するものではないと述べています。また、混合区の効果は各株の役割が補い合った結果と解釈できる一方、単独の効果の足し合わせを上回る相乗効果は統計的に確かめていないとしています。

この研究が示すこと

この研究は、マングローブ由来の内生細菌が別の植物であるラッカセイの組織にも入り込み、温室条件で塩ストレスの影響を和らげる働きを、株ごとに異なる形で示したことを報告しています。また、性質の異なる株を組み合わせると、より幅広い面で植物の状態が保たれることも示されました。

一方で著者らは、組織内のナトリウムやカリウムの量を測っていないため、仕組みの一部は推定にとどまると認めています。温室での強い塩条件は実際の塩害農地とは異なること、株の安全性は遺伝子配列の解析だけでは確認できていないことも挙げています。そのため現時点では、すぐに使える資材ではなく、微生物資材の候補と位置づけています。

原著論文の著者・所属:Nagarathnamma Yammanuri(Department of Botany, School of Life Sciences, Yogi Vemana University, Kadapa 516005, India)、Subramanyam Reddy Chinreddy(Department of Biology, Gus R. Douglass Institute, West Virginia State University, Institute, WV 25112, USA)、Preetham Naik KT(Department of Botany, School of Life Sciences, Yogi Vemana University, Kadapa 516005, India)、Vishnu Babu Vallepu(Department of Botany, School of Life Sciences, Yogi Vemana University, Kadapa 516005, India)、Chandra Sekhar Akila(Department of Biotechnology, School of Life Sciences, Yogi Vemana University, Kadapa 516005, India)、Chandra Obul Reddy Puli(Department of Botany, School of Life Sciences, Yogi Vemana University, Kadapa 516005, India)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nagarathnamma Yammanuri, Subramanyam Reddy Chinreddy, Preetham Naik KT, et al. Mangrove-Derived Halotolerant Endophytic Bacteria Confer Strain-Specific and Consortium-Mediated Salt Tolerance in Peanut (Arachis hypogaea L.). Plants 2026-10-20. DOI: 10.3390/plants15203218. 原著ライセンス:CC BY.