著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、トルコです。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

飲み水を届ける二つの仕組み

研究チームは、トルコの農村部で飲料水を供給する方法として、ペットボトル入りの水を配送する仕組みと、太陽光発電を使って水を利用する場所で浄水する仕組みの環境負荷を比較しました。平常時の違いに加え、災害で輸送経路が長くなったり、水の需要が増えたりした場合も調べています。

用いたのは、原料の採取から製造、輸送、使用後の処理までの環境負荷を見積もる「ライフサイクル評価」です。飲料水1,000リットルの供給を共通の比較単位とし、ボトルや浄水装置、太陽光パネル、蓄電池などに伴う負荷を計算しました。現地浄水側では既存の井戸を使い、逆浸透膜による浄水で生じる排水は家庭内で再利用するという前提を置いています。

大きな差を生んだ輸送と容器

論文が報告した地球温暖化への影響は、飲料水1,000リットル当たり、ペットボトル方式で約341キログラム、太陽光発電による現地浄水方式で約22.4キログラムでした。いずれも、温室効果ガスの影響を二酸化炭素の量に換算した値です。研究チームは、現地浄水方式では気候変動、化石資源の消費、土地利用に関する環境負荷が、ペットボトル方式より90%以上低かったと報告しています。

負荷の発生源にも違いがありました。ペットボトル方式では、充填工場から地域の配送拠点までの輸送だけで、温暖化への影響の約74.5%を占めました。一方、現地浄水方式では、浄水装置が温暖化への影響の約47%を占め、残りを主に太陽光発電設備と蓄電池が占めました。水を容器に詰めて運び続ける方式と、設備を設置してその場で処理する方式の違いが、結果に表れています。

需要が増えた場合にも異なる負荷の増え方

同じ期間に供給する水を2,000リットルへ倍増させた試算では、ペットボトル方式の温暖化への影響はほぼ2倍になりました。対して現地浄水方式では、約22.4キログラムから約34.2キログラムへ、52.7%の増加にとどまりました。著者らは、太陽光パネルや蓄電池などの長く使う設備を、水量に比例して増やす必要がないことが理由だと説明しています。

この評価は主に既存データに基づき、一部にはトルコ以外の条件を表すデータも使われています。また、水源の水質による電力消費やフィルター交換頻度の違いは、個別にはモデル化されていません。その範囲で研究が示したのは、飲料水供給の環境負荷を考える際には、浄水そのものだけでなく、容器の製造や水を運び続ける仕組みが重要だということです。

原著論文の著者・所属:Oreoluwa Lawale(School of Engineering, Kingston University London, London, SW15 3DW, UK)、Camille Merlaud(School of Engineering, Kingston University London, London, SW15 3DW, UK)、Raiyan Hossain(School of Engineering, Kingston University London, London, SW15 3DW, UK)、Nilgün Baydoğan(Istanbul Technical University, Energy Institute, Istanbul, Türkiye)、Andy Augousti(School of Engineering, Kingston University London, London, SW15 3DW, UK)、Sahand Hosouli(School of Engineering, Kingston University London, London, SW15 3DW, UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oreoluwa Lawale, Camille Merlaud, Raiyan Hossain, et al. Comparative life cycle assessment of PET-bottled versus photovoltaic point-of-use drinking water systems in Türkiye. Scientific Reports 2026-09-11. DOI: 10.1038/s41598-026-70556-9. 原著ライセンス:CC BY.