この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Ultrasonics Sonochemistry
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
肉の加工品では、脂肪が水分の保持やなめらかな食感、色合いを支えています。しかし脂肪を減らすと、加熱時に水分やうま味が逃げやすくなり、食感が硬くなったり、見た目が損なわれたりする課題があります。
この研究では、豚の背脂の代わりに、ウツボグサ(Prunella vulgaris)から取り出した多糖類(PVP)を使った水中油型(O/W)エマルション、つまり水の中に油の粒が細かく分散した乳化物を用いました。研究チームは、この乳化物と超音波処理を組み合わせたときに、低脂肪のポークバッター(豚肉をすりつぶして練った、ソーセージなどの原料となる生地)の品質がどう変わるかを調べています。
調べた方法
研究チームは、O/Wエマルション中のPVPの割合を0%、2%、4%(重量比)の3段階に変え、さらに超音波処理を行わない場合と30分間行った場合を組み合わせて比較しました。
評価の対象としたのは、乳化の安定性、水分を保つ力(保水性)、加熱による目減り(加熱損失)、生地の中の水分の状態、筋原線維タンパク質の立体構造、色や硬さなどの物性、官能評価、そして冷蔵保存中の脂質の酸化です。
報告された主な結果
論文によると、PVPと超音波処理を組み合わせた場合、乳化安定性と保水性が統計的に意味のある差をもって改善し、加熱損失は11.75%から5.88%まで低下したと報告されています。
PVP単独でも、水とタンパク質と多糖類の相互作用が強まったとされています。水分子の動きやすさを示すT21・T22という緩和時間が短くなり、生地の中に閉じ込められて動きにくい「不動水」の割合が86.18%から93.95%へ増加し、全体として水分の移動しにくさが高まりました。
さらにPVPは筋原線維タンパク質の構造も変化させ、らせん状の構造であるα-ヘリックスが減り、シート状のβ-シート、折れ曲がり構造のβ-ターン、定まった形をとらないランダムコイルが増えたと報告されています。この変化は、明るさを示すL*値、硬さ、弾力、凝集性、噛みごたえ、さらに色・食感・全体的な好ましさについての官能評価スコアの有意な向上と関連していました。
冷蔵での7日間の保存では、PVPを加えた試料で脂質の酸化を示すTBARS値が低く、酸化が抑えられたとされています。ただし超音波処理は、この抗酸化的な働きを部分的に弱めたことも併せて報告されています。
この報告が示すこと
著者らは、PVPを用いたO/Wエマルションを豚の背脂の代替として使い、あわせて超音波処理を行うことが、低脂肪の乳化型豚肉製品において保水性、ゲル網目構造の形成、酸化安定性を同時に高めるうえで有望な方法だと結論づけています。
脂肪を減らすと失われがちな性質を、植物由来の多糖類と物理的な処理の組み合わせによって補える可能性を示した報告といえます。
著者:Jing-Chao Fan(School of Pharmacy, Shangqiu Medical College, Shangqiu 476100, PR China)、Kai Wang(School of Pharmacy, Shangqiu Medical College, Shangqiu 476100, PR China)、Guang‐Hui Liu(School of Pharmacy, Shangqiu Medical College, Shangqiu 476100, PR China)、Wen-Bin Ma(School of Pharmacy, Shangqiu Medical College, Shangqiu 476100, PR China)、Zhuangli Kang(Key Laboratory of Chinese Cuisine Intangible Cultural Heritage Technology Inheritance, Ministry of Culture and Tourism, School of Tourism and Cuisine, Yangzhou University, Yangzhou 225127, PR China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jing-Chao Fan, Kai Wang, Guang‐Hui Liu, et al. Effects of Prunella vulgaris polysaccharide-based O/W emulsions on water retention, protein conformation, and antioxidant properties of ultrasonically treated reduced-fat pork batter. Ultrasonics Sonochemistry 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.ultsonch.2026.108078. 原著ライセンス:CC BY.