米粉や米加工品の研究が進むなか、乳酸菌を使った発酵食品にも注目が集まっています。なかでも関心を集めているのが、γ-アミノ酪酸(GABA)という機能性成分です。GABAは発酵食品に含まれることが知られる成分ですが、どのような発酵条件でどれだけ増えるのかは、対象となる菌や食材ごとに確かめる必要があります。今回紹介する研究では、徳島県の伝統的な後発酵茶である阿波晩茶に着目しました。阿波晩茶は乳酸菌の働きによって発酵が進むお茶として知られており、この研究ではそこから分離された乳酸菌を、米の発酵に応用できるかを検討しています。

どのような方法で調べたのか

研究では、阿波晩茶から分離された Levilactobacillus brevis AWA2225という乳酸菌が使われました。まずこの菌をMRS寒天培地で30℃・72時間培養し、次にpH4.0〜6.0に調整したMRS液体培地に菌液を加え、30℃で24時間および48時間培養したのちの濁度(OD660)を測定して、増殖の様子を確認しています。続いて、米の浸漬液に1%のグルタミン酸ナトリウム(MSG)とこの乳酸菌の懸濁液を加え、30℃で培養することで発酵米を調製しました。発酵が進んでいるかどうかはpHの変化を目安に確認し、発酵後の浸漬液はタンパク質を除いたうえで、有機酸分析と遊離アミノ酸分析によって成分を測定しています。比較のため、乳酸菌を加えずに培養した試料も対照として用意されました。

発酵によってGABAはどう変化したか

L. brevis AWA2225が十分に増殖するにはおよそ48時間かかりましたが、雑菌が増えるリスクを考え、以降の検討は主に24時間培養の条件を中心に行われました。30℃で24時間培養した発酵米の浸漬液は、pHが5.5付近まで低下し、乳酸などの有機酸が検出されています。この結果は、阿波晩茶由来の乳酸菌が米の浸漬液の中でも発酵を進められることを示しています。さらに、この乳酸菌を加えた条件ではGABAの生成量が増える傾向がみられ、加えるMSGの量を増やすほどGABAがさらに増加する可能性が示唆されました。これらの結果から、この乳酸菌を用いた発酵米が、日常的に摂取できるGABA含有食品として利用できる可能性があると論文では述べられています。

この研究を読むうえでの注意

この研究は学会の発表要旨として報告されたものであり、示された傾向は今回の実験条件のもとで得られた結果です。GABAの増加や発酵の進み方が、培養時間やMSGの添加量、菌株の状態などの条件によってどこまで変わりうるかについては、要旨の範囲では詳しく分かりません。また、実際にこの発酵米を食品として摂取した場合の効果や安全性を確認したものでもなく、あくまで発酵条件とGABA生成量の関係を調べた基礎的な検討である点に留意する必要があります。

阿波晩茶という日本の伝統的な発酵茶に由来する乳酸菌を、米という別の食材の発酵に応用しようとする試みは、地域に根ざした発酵資源の新しい活用法を探る研究のひとつといえます。今後、条件をさらに詳しく検討することで、GABAを含む発酵米の実用化に向けた知見が積み重ねられていくことが期待されます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Ikuko Watanabe, Kiyo Okazaki, Hiroki Nishioka. 阿波晩茶由来乳酸菌を用いた乳酸発酵米調製におけるGABA生成条件の検討. 日本調理科学会大会研究発表要旨集 (2026). DOI: 10.11402/ajscs.37.0_106.