著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。
掲載誌:Electroanalysis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ビールの原料であるホップ(学名 Humulus lupulus)は、香りとともに、特にビール特有の苦味を生み出す重要な素材です。麦汁を煮沸する工程では、ホップに含まれるα酸という分子が熱によって構造を変え(異性化)、イソα酸と呼ばれる化合物になります。このイソα酸が、苦味の強さと直接関係しています。
研究チームは、このイソα酸の量を測ることでビールの苦味を求める、電気化学的な測定法を提案しました。本紹介は論文の抄録に基づいています。
何を調べたか
著者らはまず、ホップの品種「サブロ(Sabro)」からα酸を取り出し、それを異性化させてイソα酸を得ました。得られた物質は、炭素原子の結合状態を調べられる13C核磁気共鳴(NMR)分光法で確認されています。
次に、測定の中心となる電極(作用電極)に薄いグラファイトのシートを使い、3本の電極からなる装置でイソα酸の電気化学的な性質を詳しく調べました。電気化学的な測定では、電極にかける電圧を変えながら流れる電流を観察し、物質が電子を失う「酸化」などの反応がどの電圧で起こるかを手がかりに、物質を検出・定量します。
主な結果
電圧を往復させて反応を調べるサイクリックボルタンメトリーという方法で測定したところ、イソα酸は基準電極(銀・塩化銀電極)に対して約+1.1ボルトで酸化反応を示しました。研究チームはこの反応を定量に利用することにしました。
定量には、より感度が高いことから矩形波ボルタンメトリーという方法が選ばれ、イソα酸の濃度が1リットルあたり0.1〜4.0ミリグラムの範囲で、濃度と信号の関係を示す検量線が得られました。
実際のビール試料については、酸性にしたイソオクタンという溶媒で成分を抽出し、無水硫酸マグネシウムで前処理したうえで測定しました。イソα酸の量から求めた苦味の値は、メーカーが公表している値と一致したと報告されています。
この研究が示すこと
従来の分光光度法では、イソα酸が最もよく吸収する波長275ナノメートルの光の吸収を測りますが、抽出の際に一緒に取り出される他の成分もこの波長を吸収するため、イソα酸だけを選んで測るのが難しいという課題がありました。著者らは、提案した電気化学的手法がこの選択性の不足を回避できるとしています。
研究チームは、グラファイトシート電極を用いた電気化学的手法が、ビールの品質管理への応用に向けて有望であることを示したと結論づけています。
原著論文の著者・所属:Karinne Teixeira Gonçalves(Institute of Chemistry Federal University of Uberlândia Uberlândia Brazil)、Marina Di‐Oliveira(Institute of Chemistry Federal University of Uberlândia Uberlândia Brazil)、Rodrigo Alejandro Abarza Munoz(Institute of Chemistry Federal University of Uberlândia Uberlândia Brazil)、Raquel Maria Ferreira Sousa(Institute of Chemistry Federal University of Uberlândia Uberlândia Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Karinne Teixeira Gonçalves, Marina Di‐Oliveira, Rodrigo Alejandro Abarza Munoz, et al. Electrochemical Characterization of Iso‐ α ‐Acids Using a Graphite Sheet Electrode: An Alternative for Bitterness Determination in Beers. Electroanalysis 2026-10-29. DOI: 10.1002/elan.70240. 原著ライセンス:CC BY.