著者の所属・活動拠点の国は、メキシコです。

掲載誌:Emergentes - Revista Científica

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

脂肪肝(肝脂肪症)は、多量の飲酒や原因となる薬、遺伝性の病気がないのに、肝臓に脂肪がたまる状態です。世界的に多くみられ、肥満や糖尿病など代謝に関わる要因、高カロリーの食事や超加工食品、運動不足といった生活習慣と深く関係するとされています。自覚症状がないことが多く、超音波検査や血液検査で偶然見つかることもよくあります。

治療の中心は生活習慣の見直しで、オリーブオイル、果物、野菜、豆類、魚を多くとり、加工肉や超加工食品を減らす「地中海食」はその代表的な食事パターンです。研究チームは、メキシコ社会保険庁(IMSS)の家庭医療ユニット(UMF 57、ラ・マルガリータ)で、脂肪肝のある成人に教育的な働きかけを行うと、地中海食をどの程度実践できるようになるかを調べることを目的としました。

どのように調べたか

研究は2024年12月から2025年7月にかけて、地域の一次医療(プライマリケア)の外来で行われました。対象は35〜60歳の受診者382人で、肝機能の血液検査値などを基に参加者を選び、重い慢性疾患のある人や飲酒を続けている人などは除外しました。比較のための対照群は置かず、一つのグループに介入を行い、その前後を比べる「準実験的」な方法をとっています。

介入は、理論的な情報と視聴覚教材を用いた教育と、地中海食を基にした献立の提示で構成され、3か月後と5〜6か月後に経過を確認しました。食事の実践度は、地中海食にどれだけ沿っているかを質問票で点数化する「KIDMED」という指標で評価し、介入前後の変化を同じ人の中で比べる統計手法(マクネマー検定)で分析しました。

主な結果

参加者は女性が63.1%を占め、年齢の中央値は49歳、52.9%が過体重または肥満でした。運動不足の人が多く、45.8%がジャンクフードを、41.1%が炭酸飲料を毎日とっていると報告されています。一方、肝臓の状態を示す血液検査値(ALTとAST)は、それぞれ81.2%と83.8%の人で正常範囲内でした。著者らは、脂肪肝のある人でも肝酵素が上がるのは一部にとどまるという先行研究の報告と一致するとしています。

KIDMEDによる評価では、介入前は「地中海食に近づけるよう食事の改善が必要」とされた人が67.0%、「非常に質の低い食事」とされた人が33.0%でした。介入後は前者が60.7%、後者が39.3%となりました。一人ひとりの変化を見ると、評価が良い方へ移った人は9人、悪い方へ移った人は33人で、117人は介入前後とも「非常に質の低い食事」のままでした。介入前後の分布の違いは統計的に有意と報告されています。

論文の要旨では、介入後に232人が食事の質を維持または改善し、食事パターンが有意に改善したと結論づけています。一方、本文の考察では、介入による習慣の変化は限られたものだったと述べ、仕事のために運動の時間が取りにくいことや、生鮮食品が超加工食品より高価であることが障壁になった可能性を挙げています。また、超音波検査による経過観察を行っていないため、肝臓そのものの変化は評価できなかったことを限界としています。

研究が示すこと

この研究は、地域の一次医療に通う脂肪肝のある働き盛りの成人で、ジャンクフードや炭酸飲料の頻繁な摂取など食生活の課題が多いことを示しました。また、教育的な働きかけを行っても、食事を地中海食に近づけることは容易ではない実情も浮かび上がっています。著者らは、勤務時間が健康的な生活の大きな制約になっているとして、食事の改善と運動の時間づくりを支える継続的な教育プログラムが必要だと提言しています。

原著論文の著者・所属:Leydi Yaneri Méndez Pérez(Instituto Mexicano del Seguro Social)、Adan Sergio Bonilla Becerril(Instituto Mexicano del Seguro Social)、Neidy Méndez Delgado(Instituto Mexicano del Seguro Social)、Susana Alvarado Aguilar(Instituto Mexicano del Seguro Social)、José Carlos Hernández Espinosa(Instituto Mexicano del Seguro Social)、Erika Anahí Méndez Pérez(Universidad Veracruzana)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Leydi Yaneri Méndez Pérez, Adan Sergio Bonilla Becerril, Neidy Méndez Delgado, et al. Efecto de intervención educativa en adherencia a dieta mediterránea: pacientes con esteatosis hepática, primer nivel. Emergentes - Revista Científica 2026-08-04. DOI: 10.60112/erc.v6.i3.856. 原著ライセンス:CC BY.