子どもの発育阻害(スタンティング)は、世界の多くの地域で子どもの成長や発達に影響を及ぼす公衆衛生上の課題とされています。その予防策の一つとして注目されているのが、地域にある食材を活かした栄養改善の取り組みです。今回紹介する研究は、インドネシアのダルンガン村で、地域の保健ボランティアである「ポシアンドゥ幹部」を対象に、海産魚を使った離乳食(MPASI)や補助栄養食(PMT)の調理に関する教育・訓練プログラムを実施し、その効果を調べたものです。

研究でわかったこと

このプログラムでは、ポシアンドゥ幹部に対して、発育阻害の予防やバランスの取れた栄養に関する講義形式の教育に加え、海産魚を使ったMPASI・PMTの実践的な調理デモンストレーションが行われました。あわせて、活動後のフォローアップにあたる伴走支援も実施されています。

参加者の知識がどの程度変化したかを見るため、プログラムの前後で理解度テスト(事前テスト・事後テスト)が行われました。その結果、発育阻害の予防やバランスの取れた栄養に関する知識について、統計的に意味のある向上が見られたと報告されています(p値=0.025、p<0.05)。あわせて、海産魚を使った栄養価の高い離乳食・補助栄養食を実際に調理する技術についても、参加者の実践スキルが向上したことが示されています。

これらの結果から、地域で入手しやすい海産魚を栄養資源として活用した教育・訓練は、ポシアンドゥ幹部の知識と実践的なスキルの両面を高めるうえで効果的であったと論文では結論づけられています。あわせて、このような取り組みは持続可能な地域密着型の栄養改善活動を支える可能性があり、「すべての人に健康と福祉を」を掲げるSDGs目標3への貢献につながる可能性があると述べられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の一つの村で実施された地域活動(コミュニティサービス活動)としての教育プログラムの報告であり、対象は子ども本人ではなく、地域の保健ボランティアであるポシアンドゥ幹部です。評価されているのも、参加者の「知識」と「調理技術」の変化であり、実際に子どもたちの発育阻害そのものがどの程度変化したかについては、この要旨だけからは述べられていません。また、対象地域や参加人数、追跡期間などの詳細も要旨には記載がないため、成果がどの程度他の地域にも当てはまるかは、この一つの研究だけでは判断できません。一つの地域活動の報告であり、結論が広く確定したものではない点には留意が必要です。

まとめ

今回紹介した研究では、インドネシア・ダルンガン村のポシアンドゥ幹部を対象に、海産魚を使った離乳食・補助栄養食の教育と調理訓練を行ったところ、参加者の知識と実践スキルの向上が示唆されたと報告されています。地域にある食資源を活かした教育活動が、発育阻害予防に向けた地域の担い手づくりに役立つ可能性を示す事例として、今後の関連研究の広がりが注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:魚介類ベースの離乳食(MPASI)およびPMT調理に関する発育阻害教育・訓練によるダルンガン村ポシアンドゥ幹部の知識向上(ブレティン・プンガブディアン・2026年04月)