この研究は、イギリス、ナイジェリアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:JSFA reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

「加工食品は悪い」で片づけない

食品加工は、安全性や保存性を高め、食べやすく消化しやすくします。一方で、食品の構造(食品マトリックス)を変えたり、腸内細菌がエサにできる成分を減らしたり、添加物や加熱で生じる物質を加えたりもします。著者らは、こうした変化が腸内細菌叢と代謝の健康にどう関わるのかを、批判的レビューとして整理しました。

レビューは用語の区別から始まります。腸内細菌叢(マイクロバイオータ)は、腸にすむ細菌や真菌、ウイルスなどの微生物の集まりを指します。マイクロバイオームは、それらの微生物に加えて、遺伝子や働き、周囲の環境まで含めたより広い概念です。著者らによると、超加工食品を多くとることは肥満や2型糖尿病などとの関連が報告されており、腸内細菌がその間を仲立ちしているという説もよく挙げられます。しかし、人で因果関係を直接示した証拠は限られています。そこで著者らは、粉砕や加熱、発酵、超加工といった個々の加工が食品をどう変え、それが微生物と代謝にどう影響しうるのかを、人の研究と動物・試験管の研究を比べながら検討しました。

どのように文献を集め、評価したか

著者らは、PubMed/MEDLINEとGoogle Scholarを使い、2010年1月から2026年7月までに発表された査読付き論文を検索しました。対象には、人の介入研究、観察研究、系統的レビュー、仕組みを調べる動物実験や試験管内の実験が含まれます。

解釈で最も重視したのは、食事内容を管理して与える人の試験とランダム化試験です。次に、将来に向けて人を追跡するコホート研究や、一時点を調べる横断研究を重視しました。動物や試験管の研究は生物学的にあり得るかの説明に使い、人での臨床効果の証明とはみなしていません。研究ごとに介入の内容や測定方法が大きく異なるため、複数研究の数値を統合するメタ解析は行っていません。

主な報告:影響は一様ではない

著者らは、人を対象とした最も強い証拠を総合すると、加工の影響は「一律に有害」ではなく、加工の種類によってさまざまだと報告しています。入院環境で行われたHallらの交差試験では、超加工食中心の食事で自発的な摂取エネルギーが1日約508キロカロリー増え、2週間で平均0.9キログラム体重が増えました。ただしこの試験では腸内細菌を測定していません。著者らは、この結果は摂取量と体重への因果的な影響を示すものの、腸内細菌がその仲立ちをしたことは示していない、と注意を促しています。

添加物についても、物質ごとに結果が異なりました。16人が参加した二重盲検の管理食試験では、乳化剤のカルボキシメチルセルロースを1日15グラム、11日間とる条件で、腸内細菌の多様性の低下と代謝物の変化がみられました。また、この乳化剤をとった参加者のうち2人で、細菌が腸の粘液層に入り込む現象が観察されました。著者らは、この結果をすべての乳化剤や、日常的なより少ない摂取量に当てはめるべきではないとしています。人工甘味料を調べた120人規模の試験では、試した4種類すべてで腸内細菌が変化しました。一方、血糖反応の悪化が目立ったのはサッカリンとスクラロースで、その程度は人によって異なっていました。

加工が良い方向に働く例も報告されています。17週間の試験では、発酵食品を多くとる食事で腸内細菌の多様性が高まり、いくつかの炎症マーカーが低下しました。食物繊維を多くとる食事では、同じ期間に多様性は増えませんでした。その代わり、炭水化物を分解する細菌の酵素の遺伝子が増えました。全粒穀物と精製穀物を比べた交差試験では、全粒穀物で便中の酪酸が増えました。一方、細菌の構成全体の変化は限られていました。著者らは、細菌の種類の割合よりも、細菌が作り出す物質のほうが変化をよく映す場合があると述べています。

考えられる仕組みと、まだ分かっていないこと

仕組みとして最も一貫して支持されているのは、大腸に届く発酵可能な炭水化物の変化だと著者らは述べています。食物繊維のように小腸で消化されずに大腸へ届く成分は、腸内細菌によって酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸に変えられます。精製や構造の破壊はこうした成分を減らしたり、性質を変えたりします。逆に、加熱後に冷ますことや発酵、全粒の構造を残すことは、細菌による発酵を支えうるとされています。

このほかにも、強い加熱で生じる終末糖化産物(AGEs)、腸のバリア機能の低下、胆汁酸代謝の変化などが経路の候補として挙げられています。ただし著者らは、こうした仕組みの多くは動物実験や試験管内の研究にもとづいていると強調しています。人の試験は規模が小さく期間も短いことが多く、加工の度合いが栄養の質や食事パターン全体と切り分けにくいことも課題として指摘されています。通常の調理が腸内環境を乱すと言い切れる段階ではない、というのが著者らの見方です。

この研究が伝えること

このレビューが示すのは、「加工食品か未加工食品か」という二分法では腸内細菌と健康の関係を捉えきれないということです。食品の構造をどれだけ残すか、どの添加物をどれだけ含むか、どう加熱・発酵させたかによって、腸内細菌への影響は良い方向にも悪い方向にも変わりえます。著者らは、人で比較的確かな証拠があるのは摂取エネルギーの変化、一部の細菌由来物質の変化、そして添加物への反応の個人差だとしています。一方で、腸内細菌を介した長期的な慢性疾患への影響はまだ十分に解明されていない、と結論づけています。

著者:Elijah Kolawole Oladipo(Department of Chemical Engineering University of Birmingham Birmingham UK)、Oluwatosin Tumininu Olasinde(Division of Vaccine and Therapeutics Discovery and Development Helix Biogen Institute Ogbomoso Oyo Nigeria)、Oluwaseyi Samuel Akinpelu(Division of Vaccine and Therapeutics Discovery and Development Helix Biogen Institute Ogbomoso Oyo Nigeria)、Babarinde Jesulayomi Mercy(Department of Science Laboratory Technology Ladoke Akintola University of Technology Ogbomoso Nigeria)、Olakanmi Oluwakemi Deborah(Department of Physiology Ladoke Akintola University of Technology Ogbomoso Nigeria)、Ojo Oluwalonimi Christiana(Department of Biotechnology Osun State University Osogbo Nigeria)、Oyeyiola Olawumi Hezekiah(Department of Biochemistry Ladoke Akintola University of Technology Ogbomoso Nigeria)、Christian Chibuike Aguoru(Department of Microbiology Michael Okpara University of Agriculture Umudike Nigeria)、Diovu Charles Chinedu(Faculty of Pharmaceutical Sciences Enugu State University of Science and Technology Enugu Nigeria)、Anyaoha Emmanuel Obinna(Department of Public Health Federal University of Technology Owerri Nigeria)、Helen N. Onyeaka(Department of Chemical Engineering University of Birmingham Birmingham UK)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Elijah Kolawole Oladipo, Oluwatosin Tumininu Olasinde, Oluwaseyi Samuel Akinpelu, et al. Molecular mechanisms linking food processing to the human gut microbiome and metabolic health: A critical review. JSFA reports 2026-09-21. DOI: 10.1002/jsf2.70098. 原著ライセンス:CC BY.