著者の所属・活動拠点の国は、スペインです。
掲載誌:Journal of Agriculture and Food Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
アボカドは熱帯・亜熱帯原産ですが、近年は地中海地域でも栽培が広がっています。論文によると、スペインの栽培面積は2018年の1万2千ヘクタールから2023年には2万ヘクタールに増え、同国は欧州連合内で最大のアボカド生産国になりました。
世界で主流の品種は「ハス」ですが、スペインでは成熟の遅い晩生品種「ラム・ハス」への関心が高まっています。ハスの収穫が終わった後も欧州産アボカドを出荷できるため、販売期間を延ばしつつ、欧州市場への輸送距離を短くできる利点があると著者らは述べています。
アボカドは収穫後に追熟する果物なので、いつ収穫するかが品質を大きく左右します。しかし、地中海性気候でラム・ハスが木の上でどう成熟していくかについての情報は少なく、果皮に含まれるポリフェノール類の変化を調べた研究はありませんでした。また、ラム・ハスの収穫適期の目安は、ハスなど別品種の基準を当てはめて使われているのが現状です。そこで研究チームは、収穫期を通じてラム・ハスの主要な品質特性がどのように変化するかを明らかにすることを目指しました。
何を調べたか
研究チームは、スペイン東部ビジャレアルの商業果樹園で、2022年と2023年の2シーズンにわたって調査しました。あらかじめ選んだ7本の木から、2022年は5月から7月に3回、2023年は3月から7月に5回、それぞれ25個ずつ果実を収穫しました。
主な指標は「乾物率」です。これは果実を乾燥させたときに残る重さの割合で、油分の蓄積と強く関係するため、アボカドの収穫時期を判断する主要な目安とされています。このほか、果皮と果肉の色、果肉の硬さを測りました。色は明るさ、赤みの強さ、黄みの強さ、色の鮮やかさを数値で表す方法で評価しています。
2023年シーズンには、果皮と果肉に含まれるフェノール化合物(植物が作るポリフェノールなどの成分群)も個別に定量しました。その中には、果皮の赤紫から黒の色のもとになる色素アントシアニンも含まれます。さらに、多くの測定項目の関係をまとめて把握するため、データ全体の傾向を少数の軸に集約する統計手法(主成分分析)を用いました。
主な結果
乾物率は、どちらのシーズンでも収穫が進むにつれて上がりました。2022年は5月の約23.3%から7月には約28.8%に達しました。2023年は3月の時点ですでに約29.0%と高く、6月には約32.5%に達しました。研究チームは、2023年の3月が2022年より暖かかったこと(平均気温は12.5℃に対して15.4℃)に注目し、暖かい気象条件が成熟を早めた可能性があると考察しています。果肉の硬さは、2022年には収穫日による有意な差がなく、2023年には6〜7月にやや低下しました。
果皮の色は、どちらのシーズンでも、最初の収穫時の緑色から季節が進むにつれて紫がかった黒へと変わり、測定値では明るさや黄みが減って赤みが増しました。2023年の3月に収穫した果実は、乾物率がすでに高いにもかかわらず果皮はまだ鮮やかな緑色でした。果肉の色は、収穫が遅いほど淡い黄色から濃い黄色へと変わっていきました。主成分分析では、果実が収穫時期の違いと栽培シーズンの違いの両方によってはっきり分かれることが示されました。
2023年の分析では、果皮から11種類のフェノール化合物が定量され、カテキン、クロロゲン酸、エピカテキンが特に多く含まれていました。これらの多くは、3〜5月に収穫した果実の方が6〜7月の果実よりも多い傾向でした。一方、果皮の主要なアントシアニンであるシアニジン-3-O-グルコシドは、3月の14μg/gから7月の158μg/gへと増え、2番目に多いアントシアニンも同じく増加しました。ほかに、デルフィニジン系のアントシアニンが4月以降の果実でごく少量検出されました。果肉で検出されたフェノール化合物は果皮より種類も量も少なく、主成分のカテキンは収穫期を通じて有意な変化がありませんでした。
果皮のアントシアニン組成は主要成分がハスと共通していましたが、ほかの成分も見つかったことから、ラム・ハスの色素の構成はより複雑である可能性があると著者らは述べています。また、乾物率、果皮の赤み、アントシアニン量の間には正の相関が見られました。
研究が示すこと
この研究は、地中海性気候で育つラム・ハスの品質が、収穫時期だけでなく年ごとの気象条件によっても大きく変わることを示しました。乾物率と果皮の色やアントシアニン量が連動していたことから、著者らは、果皮の色が果実を切らずに内部の成熟度を推し量る手がかりになりうると結論づけています。同時に、他品種の基準に頼るのではなく、この品種に合った成熟度の指標を作る必要性も指摘しています。
原著論文の著者・所属:Paloma Quintanilla(Centro de Agrotecnologías Avanzadas. Unidad de Agroingeniería, IVIA, Moncada, Valencia, Spain; Centro de Agrotecnologías Avanzadas. Unidad de Postcosecha, Instituto Valenciano de Investigaciones Agrarias (IVIA), CV-315, Km 10,7. 46113, Moncada, Valencia, Spain)、Nariane Q. Vilhena(Centro de Agrotecnologías Avanzadas. Unidad de Postcosecha, Instituto Valenciano de Investigaciones Agrarias (IVIA), CV-315, Km 10,7. 46113, Moncada, Valencia, Spain)、Almudena Bermejo(Centro de Citricultura y Mejora Vegetal, IVIA, Moncada, Valencia, Spain)、Rebeca Gil(Centro de Agrotecnologías Avanzadas. Unidad de Postcosecha, Instituto Valenciano de Investigaciones Agrarias (IVIA), CV-315, Km 10,7. 46113, Moncada, Valencia, Spain)、Alejandra Salvador(Centro de Agrotecnologías Avanzadas. Unidad de Postcosecha, Instituto Valenciano de Investigaciones Agrarias (IVIA), CV-315, Km 10,7. 46113, Moncada, Valencia, Spain)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Paloma Quintanilla, Nariane Q. Vilhena, Almudena Bermejo, et al. Seasonal dynamics of quality traits in ‘Lamb Hass’ avocado under Mediterranean conditions. Journal of Agriculture and Food Research 2026-07-29. DOI: 10.1016/j.jafr.2026.103183. 原著ライセンス:CC BY.