著者の所属・活動拠点の国は、オーストラリアです。

掲載誌:Current Obesity Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:三つの研究の流れは一つの仕組みか

超加工食品とは、乳化剤や加工でんぷん、砂糖以外の甘味料、着色料、香料など、家庭の台所ではあまり使わない原料を用いて工業的に作られた製品を指します。食品を栄養素ではなく加工の程度と目的で分ける「Nova分類」の第4群に当たります。著者によると、超加工食品を多く食べる人ほど肥満になりやすいという関連は、多くの集団や研究で繰り返し報告されてきました。2024年の包括的レビューは、45件のメタ解析と約1,000万人分のデータをまとめています。また、入院環境で行われた2週間の試験では、砂糖・脂肪・食物繊維・ナトリウムをそろえた加工度の低い食事と比べ、超加工食品の食事で1日あたり約508kcal多く食べ、体重も増えたと報告されています。

一方で、なぜそうなるのかという仕組みはまだはっきりしていません。仕組みの研究は、腸内細菌と腸のバリア機能、食欲を調節する脳の視床下部の炎症、そして余ったエネルギーをため込む脂肪組織という三つの分野で、それぞれ別々に進んできました。さらにNova分類の第4群には、全粒粉の包装パンと清涼飲料水が同じ区分に入るなど、中身の違いが大きいという批判もあります。この総説で著者は、三つの分野が一つのつながった仕組みを描いているのか、そうだとすれば超加工食品の分類にどんな示唆があるのかを検討しています。

腸・脳・脂肪組織のそれぞれで何が報告されているか

腸については、乳化剤の証拠が最も明確だと著者は述べています。マウスの実験では、カルボキシメチルセルロースやポリソルベート80という乳化剤が腸を守る粘液層を薄くし、軽い炎症や代謝の異常を引き起こしました。ただし、これらの実験の濃度は人が普段とる量より高いものでした。人を対象とした試験でも腸内細菌への影響が報告されていますが、乳化剤の種類によっては目立った影響がないものもあります。甘味料の影響については、試験によって結果が分かれています。細胞壁が壊れた精製炭水化物は腸の上部ですぐに吸収されるため、大腸の細菌に届くエサが減ると説明されています。こうした変化が重なると腸のバリアが緩み、細菌由来の炎症物質であるリポ多糖(LPS)が血液中に入りやすくなると考えられています。

脳については、食欲を調整する視床下部の弓状核に注目しています。この部分に炎症が起きると、満腹を伝えるホルモンであるレプチンが効きにくくなります。ネズミでは、加工原料の多い餌を与えると、体脂肪が大きく増える前の約3日以内に視床下部の炎症が現れると報告されています。人では、英国の大規模データ(UK Biobank)で3万人以上の脳画像を分析した研究があり、超加工食品の摂取が多い人ほど、視床下部や報酬に関わる脳の領域に構造の違いが見られました。ただし、この研究は一時点の調査なので、因果の向きは分かりません。肥満そのものが脳の変化を引き起こしている可能性もあると著者は指摘しています。

脂肪組織については、内臓脂肪が大きくなると免疫細胞が集まり、炎症を促す物質を多く出すようになると説明されています。スペインの研究では、総エネルギー摂取量などを調整した後でも、超加工食品からとるエネルギーの割合が高いほど1年後の内臓脂肪が多かったと報告されています。また、缶の内側の塗装やプラスチック包装から食品に移るビスフェノールAやフタル酸エステル類には、脂肪細胞をつくる働きを促す作用があることも取り上げています。ただし、超加工食品の多い食事でこうした物質への接触が実際に増えるかどうかは、まだ示されていません。

一つの循環として捉え、分類を改める提案

著者は、三つの経路が互いを強め合う循環を形づくっている可能性を示しました。腸から入ったLPSが脳や脂肪組織の炎症を引き起こします。大きくなった脂肪組織からはレプチンが出続け、脳の炎症とレプチンの効きにくさを長引かせます。さらに、脂肪組織と腸内細菌の間でも双方向のやり取りがあるという考え方です。ただし著者は、この循環全体が人で働いていることを示した研究はまだなく、別々の実験系の結果を組み合わせた仮説にとどまると明記しています。

そのうえで分類について、Nova分類の「加工度」という軸は残し、第4群の中を仕組みに基づく負荷の大きさで区別する二つ目の軸を加えることを提案しています。具体的には、腸のバリアを乱す添加物の量、トランス脂肪酸や包装由来物質のような脂肪を増やす方向に働く要因、すぐに吸収される精製炭水化物の量などを評価します。これにより、添加物が少ない包装パンと、精製糖・甘味料・ビスフェノールで内側を塗装した容器を組み合わせた清涼飲料水を区別できるとしています。卵黄やマスタードのように、食材自体が乳化作用を持つ場合もあります。そのため、単純に「乳化」を減点するのではなく、精製された添加物と食材由来のものを区別し、人での生物学的影響で判断すべきだとも述べています。著者自身、この案は今後検証すべき仮説であり、すぐに使える道具ではないと位置づけています。

この総説が示すこと

著者は、超加工食品と肥満の関係について、腸の乱れ、脳の炎症、脂肪組織の変化がつながって働くというモデルと、既存の証拠が矛盾しないと結論づけています。同時に、証拠の強さは経路ごとに異なり、動物実験にしか基づかない部分もあると強調しています。また、この論文は系統的レビューではなく批判的な叙述型の総説であることも限界として挙げています。

それでもこの総説は、食事全体の傾向をとらえる点で優れたNova分類を土台にしながら、個々の製品の違いをより細かく見る視点を示しました。食べる量だけでなく、食べ続けさせる体内の仕組みにも目を向ける必要があることを伝えています。

原著論文の著者・所属:Jimmy Chun Yu Louie(Discipline of Dietetics, Swinburne University of Technology, Level 2, Swinburne Place West Building, 1 John St, Hawthorn, Melbourne, VIC, 3122, Australia. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jimmy Chun Yu Louie. The Gut–brain–adipose Axis in Ultra-processed Food and Obesity: A Mechanistic Synthesis and Its Implications for Food Classification. Current Obesity Reports 2026-07-29. DOI: 10.1007/s13679-026-00745-0. 原著ライセンス:CC BY.