著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。
掲載誌:Лингвоспектр
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
著者は、英語の「hospitality」とウズベク語の「mehmondo‘stlik」が表す「もてなし」について、共通する意味と文化的な違いを調べました。どちらも客を温かく迎え、気遣うことを指しますが、招く側と招かれる側に期待される振る舞いまで同じとは限りません。辞書の訳語だけでは捉えにくい違いを明らかにし、翻訳やウズベク語話者への英語教育にどう関わるかを考えることが目的です。
何を、どのように調べたか
著者は、辞書、ことわざ集、関連する先行研究を用いて、両言語の表現を質的に比較しました。もてなし、客、主人、招待、食事、食卓、世話などに関する語を整理し、ことわざや決まり文句が、敬意、寛大さ、温かい言葉、義務、時間、個人の意思などの何を強調しているかを検討しました。
さらに、招待、食べ物の勧め、承諾、断り、繰り返しの勧め、感謝、別れの挨拶といった典型的なやり取りの例を比較しました。表現が使われる文脈を重視し、一つのことわざをすべての話者に当てはまる規則とは扱っていません。表現や行動の出現頻度を統計的に測る研究ではなく、意味と会話上の期待を読み解く分析です。
主な報告結果
著者は、両言語が客への歓迎や気遣いを共有する一方、強調する点が異なると報告しています。ウズベク語の資料では、客を敬い、主人が積極的に世話をし、食べ物を分かち合うことが目立ちました。食卓を整える「ダスタルハン」は、食事の場だけでなく、敬意や家庭の分かち合う姿勢を表すものとして論じられています。また、温かい言葉は、十分なごちそうを用意できない場合にも大切だとすることわざが示されています。
英語の資料でも親しみや寛大さは重視されますが、「ご自由にどうぞ」「もう少しいかがですか」といった、客自身の選択を明示する表現が取り上げられています。ことわざにも、長居を避け、主人の負担にならないようにするという考えが表れていました。ただし、著者は、ウズベク語にも客の配慮を求めることわざがあり、英語にも手厚いもてなしがあるとして、両者を対立する文化として単純化していません。
違いが分かりやすく現れるのは、勧めと断りのやり取りです。ウズベク語の家庭内の場面では、最初の断りが遠慮を示し、主人が再び食べ物を勧めることが誠意や気遣いを伝える場合があります。一方、多くの英語のやり取りでは、明確な断りは本人の最終的な希望として受け止められ、その後も強く勧め続けると圧力に感じられる場合があると著者は説明しています。
この報告が示すこと
著者の結論は、もてなしの翻訳では単語を置き換えるだけでなく、話し手同士の関係や、その場で何が丁寧と受け取られるかを伝える必要があるというものです。英語教育についても、短い会話を比べ、断りや再度の勧めが文脈によってどう解釈されるかを考える方法を提案しています。
ただし、論文が示すのは言語資料に見られる傾向であり、どちらの文化がより客を大切にするかという順位ではありません。家族、地域、年齢、個人によって違いがあり、ことわざから実際の行動を予測することもできません。もてなしを理解するには、言葉の意味とともに、その場の相手への配慮の示し方を見ることが重要だとする報告です。
原著論文の著者・所属:Siddikova, Farangiz Oybek qizi(Webster University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Siddikova, Farangiz Oybek qizi. The representation of hospitality in English and Uzbek: A Comparative Linguocultural Analysis. Лингвоспектр 2026-11-01. DOI: 10.5281/zenodo.23862156. 原著ライセンス:CC BY.