この研究は、イランの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Obstetrics and Gynaecology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

妊娠中によくみられる不調のひとつに便秘があります。この研究が扱っているのは「機能性便秘」と呼ばれるもので、腸や体の病気といった明らかな原因が見つからないのに、排便の回数が少ない、便が硬い、強くいきむ必要があるといった症状が続く状態を指します。

著者らによれば、機能性便秘は身体活動や食事内容と関係があると報告されてきましたが、これまでの研究の結果は一致していませんでした。そこで研究チームは、妊婦のあいだで機能性便秘がどのくらいの割合でみられるのかを明らかにし、あわせて身体活動や食事内容との関連を調べることを目的としました。

調べ方

研究チームは横断研究という方法をとりました。これは、ある時点の状態をまとめて調べる調査方法で、時間の経過を追いかけるものではありません。対象となったのは、2024年1月から2025年2月にかけてイラン・タブリーズの都市部の保健センターを受診した健康な妊婦381人で、多段クラスター抽出という手順で選ばれています。

機能性便秘の判定にはローマIV基準という国際的に使われている診断基準を用いました。データは対面での聞き取りによって集められ、身体活動については国際身体活動質問票(IPAQ)、食事内容については食物摂取頻度調査票(FFQ)が使われています。分析には一般化推定方程式(GEE)という統計手法を用い、年齢や学歴といった他の条件の影響を調整したうえで、機能性便秘と関連する要因を探っています。

報告された主な結果

論文の報告では、妊娠期間全体を通じた機能性便秘の割合は37%でした。妊娠の時期別にみると、第1三半期では73人中41人(56%)、第2三半期では146人中53人(36%)、第3三半期では162人中47人(29%)が該当したとされています。

多変量解析では、食物繊維の摂取が多いこと(調整オッズ比0.88、95%信頼区間0.86〜0.91)と、水分の摂取が多いこと(調整オッズ比0.59、95%信頼区間0.52〜0.67)が、機能性便秘のリスクが低いことと関連していました。また、BMIが正常範囲であることも低いリスクと関連し(調整オッズ比0.35)、一方で中等教育であることは高いリスクと関連していた(調整オッズ比2.81)と報告されています。

身体活動については、調整後には機能性便秘と独立した関連が認められませんでした(調整オッズ比1.00、p=0.168)。その他の属性にも独立した関連はみられなかったとされています。なお、オッズ比が1より小さいことは関連が弱い方向にあることを示す指標であり、この研究デザインからは、食物繊維や水分の摂取が便秘を減らす原因だと結論づけることはできません。

この研究が示すこと

著者らは、機能性便秘が妊娠中に高い頻度でみられ、女性の生活の質に影響しうると述べています。そのうえで、食物繊維と水分の摂取が多いことが機能性便秘の少なさと関連していた点に触れ、妊娠中の生活習慣に目を向けることの重要性を指摘しています。

ただし今回は一時点の調査であるため、著者ら自身も、これらの知見を確かめるには時間を追って観察する前向きの縦断研究が必要だとしています。妊娠中の便秘という身近な不調について、その広がりと関連要因の輪郭を示した報告と言えます。

著者:R. Valizadeh(Midwifery Department, Faculty of Nursing and Midwifery, Tabriz University of Medical Sciences)、Khadije Hajizadeh(Department of Midwifery, Faculty of Nursing and Midwifery, Tabriz University of Medical Sciences)、Zahra Ayyari-Maralani(Department of Midwifery Counselling, Faculty of Nursing and Midwifery, Urmia University of Medical Sciences)、Mojgan Mirghafourvand‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬‬(Social Determinants of Health Research Center, Faculty of Nursing and Midwifery, Tabriz University of Medical Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):R. Valizadeh, Khadije Hajizadeh, Zahra Ayyari-Maralani, et al. Functional constipation in pregnancy and its association with dietary intake and physical activity: a cross-sectional study. Journal of Obstetrics and Gynaecology 2026-09-01. DOI: 10.1080/01443615.2026.2727541. 原著ライセンス:CC BY.