この研究は、トルコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Healthcare
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
地中海食は、野菜や果物、豆類、オリーブオイル、魚などを中心とする食事のかたちで、環境への負荷が比較的小さく「持続可能性に沿った食事モデル」としても広く知られています。しかし研究チームは、地中海食を守る度合いが、実際に持続可能な食行動とどう結びついているのか、また2型糖尿病のある人において体脂肪のつき方や調理・食に関する技能、大血管合併症とどのように関連しているのかは、まだ十分に明らかになっていないと指摘しています。
そこで著者らは、2型糖尿病のある成人を対象に、これらの関連をある一時点で調べることを目的としました。ここでいう大血管合併症とは、心臓や脳、脚などの太い血管に起こる動脈硬化性の合併症を指します。
何を、どのように調べたか
対象は、内分泌代謝の外来を受診した2型糖尿病のある成人120人で、来院順に連続して組み入れられました。年齢の中央値は60歳です。
論文によれば、地中海食の順守度、持続可能で健康的な食行動(SHEB)、調理技能と食の技能(CSFS)は、いずれも妥当性が確認された評価尺度を用いて測定されました。食事摂取量は24時間思い出し法を1回実施して評価し、体格や体組成は標準化された手順で測定しています。24時間思い出し法とは、前日に食べたものを詳しく聞き取って摂取量を推定する方法です。
解析では、年齢などの影響を調整したうえで群間の差を比べる統計手法(ANCOVA)が使われました。さらに、あらかじめ設定した探索的な項目を多数比較することで偶然の差を拾ってしまう問題に対応するため、ベンジャミニ・ホックバーグ法による偽発見率(FDR)の補正が行われ、補正後の値としてq値が報告されています。
主な報告結果
著者らの報告では、地中海食の順守度が高いほど、主要評価項目である持続可能で健康的な食行動の合計得点が高いという関連がみられました(p<0.001)。個別の側面でも、品質表示への注目、旬の食材の利用と食品ロスの回避、地元産食品の選択、肉の消費を減らすことの各得点が高く、いずれもFDR補正後も有意でした(すべてq<0.05)。
持続可能な食行動の得点で3グループに分けた比較では、ウエスト・ヒップ比に有意な差が認められました(p=0.001、q=0.010)。ウエスト・ヒップ比は腰回りと尻回りの比率で、おなか周りへの脂肪のつき方の目安とされる指標です。一方、首周囲径の差は補正前には差がみられたものの、補正後には有意でなくなりました(p=0.046、q=0.230)。
大血管合併症の有無による比較では、調整後のたんぱく質摂取量が低いという差がFDR補正後も有意のままでした(p=0.002、q=0.032)。これに対し、食の技能、CSFS合計、地中海食の順守度、総脂質・飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸の摂取量、食事由来の総抗酸化能については、補正前には差がみられたものの、多重比較の補正後にはいずれも有意ではなくなりました(すべてq>0.05)。
この研究が示すこと
著者らは結論として、地中海食をよく守っている人ほど、同じ時点でみたときに、より持続可能で健康的な食行動をとっており、持続可能な食行動の得点が高い人ほどウエスト・ヒップ比が低かったと述べています。大血管合併症の有無による探索的な差の多くは、多重比較の補正後には有意でなくなっており、結果の解釈には慎重さが必要だと強調しています。
またこの研究は一時点で測定した横断研究であるため、どちらが先に起きたのかという時間的な前後関係は示せません。著者らは、時間的関係を明らかにするには前向き研究が、地中海食の順守や持続可能な食行動、調理・食の技能を変えることがその後の心血管代謝・血管の転帰に影響するかどうかを確かめるには介入研究が必要だとしています。
著者:H. Ozcaliskan Ilkay(Department of Nutrition and Dietetics, Faculty of Health Sciences, Erciyes University, 38260 Kayseri, Türkiye)、Züleyha Karaca(Department of Endocrinology, Faculty of Medicine, Erciyes University, 38030 Kayseri, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):H. Ozcaliskan Ilkay, Züleyha Karaca. Mediterranean Diet Adherence and Sustainable Eating Behaviors in Type 2 Diabetes: A Cross-Sectional Analysis of Adiposity, Cooking and Food Skills, and Macrovascular Complications. Healthcare 2026-09-09. DOI: 10.3390/healthcare14182934. 原著ライセンス:CC BY.