はちみつは自然の甘味料として世界中で親しまれていますが、収穫されてから私たちの食卓に届くまでには、時に数年単位の保存期間があります。この保存の間に、はちみつの品質はどのように変化するのでしょうか。今回紹介するのは、西アフリカのブルキナファソにあるクドゥグ養蜂センターで生産されたはちみつを対象に、保存期間が栄養的な品質にどう影響するかを調べた研究です。この養蜂センターでは2003年以降、良質なはちみつ収穫の取り組みが行われ、理化学的に質の高いはちみつが生産されてきたとされていますが、収穫後の保存によって成分がどう変化するかは、依然として課題とされています。
研究でわかったこと
研究チームは、2020年から2022年にかけて異なる時期に収穫された合計15のはちみつサンプルを集め、理化学的特性(水分量や酸度など)、生化学的組成(糖分や5-ヒドロキシメチルフルフラール〈5-HMF〉、ポリフェノールなど)、そして抗酸化能を、標準的な分析方法や分光光度計を用いた方法で測定しました。
まず理化学的な特性については、全体として比較的安定していたと報告されています。ただし2020年産のはちみつは、2021年産・2022年産と比べて電気伝導度と遊離酸度が高く、pHは低い傾向が見られたとのことです。水分含量が最も高かったのは2022年産の1サンプル(22.30%)、糖度(Brix値)が最も高かったのは2021年産の1サンプル(82.00%)でした。
一方で、保存期間が大きく影響を与えたのは生化学的な組成と抗酸化能だったとされています。5-HMF(はちみつが加熱や長期保存によって変化する際に生じる物質として知られる成分)は2021年産のあるサンプルで最も高い値(1,270.63 mg/kg)を示しました。また総ポリフェノール量と抗酸化能の一部の指標(鉄イオン還元能)は2020年産のあるサンプルで最も高く、総糖分量とフリーラジカル消去能(IC50、値が低いほど能力が高いとされる指標ですが、本研究では最も高い抗酸化力を示したサンプルの数値として報告されています)も2020年産のサンプルで最も高い値が記録されました。これらの結果から、研究チームはクドゥグ産はちみつの栄養品質が保存期間の影響を受けることが示されたとまとめています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ブルキナファソの特定の養蜂センターで生産された15サンプルを対象にした調査であり、他の地域や異なる種類のはちみつにそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。また、はちみつの「良し悪し」を一概に判断するものではなく、保存期間によって特定の成分の量が変動することを示したものです。5-HMFやポリフェノール、抗酸化能といった数値がどのように健康と関わるかについては、この研究の要旨では直接述べられておらず、あくまで成分の変化を客観的に測定した結果として捉えるのが適切です。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点にも留意が必要です。
まとめ
今回の研究では、ブルキナファソ・クドゥグ産のはちみつについて、水分量や酸度といった理化学的特性は保存期間を通じて比較的安定していた一方、5-HMFや総ポリフェノール、総糖分、抗酸化能といった生化学的な特性は保存期間によって有意に変化することが示されたと報告されています。はちみつという身近な食品にも、保存という時間の経過が静かに影響を与えていることをうかがわせる、興味深い研究といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:保存期間がブルキナファソ産はちみつの栄養品質に与える影響(フロンティアーズ・イン・フード・サイエンス・アンド・テクノロジー・2026年08月)