すり身は魚肉をすりつぶして作る練り製品の原料で、加熱すると弾力のあるゲル状に固まる性質を利用してかまぼこなどに加工されます。このゲルの弾力や保水性は製品の食感や品質を左右する重要な要素です。今回紹介するのは、チャ(Camellia oleifera)の種子から油を搾った後に残る「種子粕」に含まれる粗タンパク質(COCP:Camellia oleifera seed-cake crude protein)を、ハクレン(silver carp)のすり身に加えるとゲルの性質がどう変わるかを調べた研究です。
研究の方法
研究チームは、ハクレンのすり身にCOCPを異なる濃度で添加し、ゲルの保水性(water holding capacity)、加熱による損失率(cooking loss)、白色度(whiteness)、テクスチャー(硬さ・弾力性・凝集性・咀嚼性など)、そして化学結合の量を測定しました。さらに、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)と走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、COCPがゲルタンパク質の二次構造や微細構造に与える影響も詳しく調べています。
わかったこと
COCPを1.5%添加したすり身ゲルでは、保水性が81.12%±0.52%と最も良好な値を示したと報告されています。テクスチャーについても、硬さ3564.49±24.09 g、弾力性0.92±0.01 mm、凝集性0.72±0.02、咀嚼性2378.48±115.67 mJという値が得られ、加熱損失率も14.33%±0.88%と最も低かったとされています。
フーリエ変換赤外分光法による解析では、COCPの添加によってゲルタンパク質の二次構造の安定性が高まったことが示されたとしています。また、無添加のすり身と比べて、1.5%のCOCPを加えたゲルでは疎水性相互作用(hydrophobic interactions)と総スルフヒドリル基(total sulfhydryl)含量が有意に増加したことも報告されています。これらの変化により、より秩序だった微細構造が形成され、ゲルの性質が改善されたとされる一方で、白色度についてはわずかに低下したことも記されています。論文の結論として、COCPを1.5%添加することで、すり身ゲルの性質が有意に改善されたとまとめられています。
この研究の位置づけと注意点
この研究は、チャ種子粕という副産物由来のタンパク質を食品加工に活用する可能性を検討した基礎研究であり、特定の食品や成分が健康効果をもたらすことを示すものではありません。今回報告された数値は特定の条件下での測定結果であり、実際の製品化や他の魚種・条件での再現性については、この論文の要旨からは判断できません。一つの研究結果として捉え、結論が確定したものではない点に留意する必要があります。なお、著者の所属機関はいずれも中国国内の大学であり、日本の研究機関や日本の食品・食習慣への言及は今回の情報には含まれていません。
まとめ
本研究は、チャ種子粕由来の粗タンパク質をハクレンすり身に添加することで、保水性やテクスチャー、加熱損失といったゲルの性質が改善される可能性を示したとする報告です。副産物の有効活用という観点からも興味深い知見ですが、あくまで一つの研究成果であり、今後のさらなる検証が期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:チャ種子粕粗タンパク質がハクレンすり身のゲル特性に及ぼす影響(ドアジ(オープンアクセス学術誌ディレクトリ)・2026年09月掲載予定)