キリンサイ(Kappaphycus alvarezii、別名Doty Doty)は栄養や機能性成分を豊富に含む海藻として知られていますが、独特の強い生臭さがあるため、生の状態で食べる用途には広がっていませんでした。スリランカのペラデニヤ大学食品科学技術学科などの研究グループは、この生臭さを抑えつつ衛生的にも安全な状態にする処理方法を探る研究を行いました。海藻を新鮮なまま食用として普及させることを目指した内容です。

研究では、まず消毒のための4つの方法(湯通し、塩素処理、石灰水処理、塩と酢に浸す処理)を用意し、それぞれに脱臭のための2つの処理(緑茶浸漬、20%エタノール浸漬)を組み合わせ、合計8通りの処理の組み合わせを比較しました。評価には、わずかな違いを見分けられるかを調べる三点識別法、好ましさを9段階で評価するヒドニックテスト、複数の試料に順位をつける選好順位法、そして評価者が自由に印象を言葉にする自由選択プロファイリング法という、複数の官能評価の手法が用いられました。あわせて、微生物学的な安全性を確認するために、一般生菌数と好塩性細菌数の測定も行われています。

処理によって何が変わったのか

三点識別法による評価では、8通りの処理の組み合わせすべてで、未処理の海藻と比べて統計的に意味のある(p<0.05)臭いの軽減が確認されました。研究チームは、これらの処理はいずれも脱臭の目的に対して同程度に推奨できるとしています。一方で、好ましさを問うヒドニックテストでは、処理の組み合わせ同士を比べた際の臭いの評価に統計的な差は見られませんでした(p>0.05)。つまり、臭いは未処理よりは軽減されるものの、どの組み合わせが最も好まれるかという点では大きな差がなかったということです。

色については状況が異なり、処理方法によって統計的に意味のある(p<0.05)違いが見られました。官能評価のパネリストが色の観点で特に好んだのは、湯通しと緑茶浸漬を組み合わせた処理、および石灰水(ライムジュース)とエタノール浸漬を組み合わせた処理でした。また微生物検査では、すべての消毒方法において菌数が安全とされる基準値(10の5乗CFU/g未満)を下回る結果となり、生食用としての適性を支持する結果が得られています。

この研究をどう読むか

この研究は、身近な調理法に近い湯通しや塩素・石灰水・塩と酢への浸漬といった処理と、緑茶やエタノールによる脱臭処理を組み合わせることで、キリンサイの臭いを抑えつつ微生物学的な安全性も確保できる可能性を示したものです。ただし、これは一つの研究であり、報告されているのはあくまで今回の実験条件のもとでの官能評価と微生物検査の結果です。臭いの軽減効果についてはどの組み合わせも同程度と評価された一方、色の好ましさには差が見られたなど、処理方法の選び方によって仕上がりの印象が変わりうる点にも注意が必要です。今回の情報の範囲では、日本の研究機関や日本の食習慣への言及は含まれていません。

まとめ

今回の研究では、独特の生臭さが利用の妨げとなっていたキリンサイという紅藻について、消毒と脱臭を組み合わせた8通りの処理法を比較し、臭いの軽減と微生物学的な安全性の両立が期待できることが示唆されました。海藻を新鮮な状態でより広く食用に活用していくための、実用的な処理の手がかりを提供する研究といえます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:B. A. T. T. Wijedasa, Nadeera Rajapakse, Pabodha Weththasinghe, et al. Promoting the utilization of Kappaphycus alvarezii (Doty Doty) red algae through chemical and physical treatments: Disinfection, deodorisation, and microbial & sensory quality evaluation. セイロン・ジャーナル・オブ・サイエンス (2026). DOI: 10.4038/cjs.v55i5.9733. 原著ライセンス: cc-by.