「植物性食品を多く摂る食生活は体に良い」というイメージは広く知られていますが、睡眠との関係はどうなのでしょうか。実は植物性食品と一口に言っても、野菜や果物、全粒穀物のような食品もあれば、精製された穀物やお菓子、ジュースのような植物由来ではあっても健康的とは言いにくい食品も含まれます。今回紹介する研究は、こうした植物性食品の『中身の違い』に着目し、成人5260人を対象に食生活と睡眠の質との関連を調べたものです。ブラジル・アラゴアス連邦大学栄養学部の研究グループ「Chronobiology, Nutrition and Health」などが参加しました。
研究でわかったこと
この研究では、18〜65歳の成人5260人を対象に、食物摂取頻度調査(15の食品グループを対象)をもとに4種類の「植物性食事指数(PDI)」が算出されました。具体的には、植物性食品全般の摂取を評価する「全体的植物性食事指数(oPDI)」、野菜・果物・全粒穀物など健康的とされる植物性食品を重視する「健康的植物性食事指数(hPDI)」、精製穀物やお菓子など不健康とされる植物性食品を重視する「不健康的植物性食事指数(uPDI)」、そして植物性食品の割合の高さを評価する「準菜食指数(PVDI)」の4指標です。睡眠の質は、広く使われる評価尺度であるピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いて測定されました。
結果として、参加者の51.12%が「睡眠の質が悪い」と回答しました。分析の結果、oPDIとuPDIのスコアが1単位上がるごとに、PSQIスコア(点数が高いほど睡眠の質が悪いことを示す)が高くなる関連が見られました(oPDIはβ=0.03、95%信頼区間0.01〜0.04/uPDIはβ=0.08、95%信頼区間0.01〜0.03)。これは睡眠の質が悪くなるオッズの増加とも関連していました。一方、hPDIとPVDIのスコアが高いほどPSQIスコアは低くなる傾向があり、睡眠の質が悪くなるオッズはそれぞれ12%低いという関連が示されました。
さらに媒介分析(ある要因が別の要因を介して結果に影響するかを調べる分析)も行われました。その結果、oPDIの上昇による睡眠悪化の一部は「うつ症状」の増加が媒介しており(寄与の割合32.58%)、uPDIの上昇による睡眠悪化の一部は「身体活動の少なさ」が媒介していました(寄与の割合19%)。逆に、hPDIとPVDIの上昇による睡眠改善は、主に「BMI(体格指数)の低さ」が媒介していると分析され、それぞれ11.9%、22%の寄与が示されました。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、植物性食品と睡眠の関係は単純な「多いか少ないか」ではなく、健康的な植物性食品か不健康な植物性食品かを区別すること、また動物性食品の摂取状況も考慮に入れることが、睡眠の健康に向けた食事指針を考えるうえで重要だと述べています。この研究は横断的な調査データに基づく関連の分析であり、食生活が睡眠を変化させたという因果関係を直接証明するものではありません。一つの研究による知見であり、結論が確定したわけではない点に留意して読む必要があります。
まとめ
今回の研究では、植物性食品の摂取状況と睡眠の質との間に、食品の「質」によって異なる方向の関連が見られたことが報告されました。健康的な植物性食品を中心とした食生活はより良い睡眠の質と、不健康な植物性食品が多い食生活はより悪い睡眠の質と関連しており、その背景にはうつ症状や身体活動量、BMIといった要因が一部関わっている可能性が示唆されています。今後さらなる研究によって、この関連の理解が深まることが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:成人における植物性食事と睡眠の質:ライフスタイルと健康媒介要因の役割の検討(ニュートリション・ブレティン・2026年08月)