健康や環境への意識の高まりから、植物由来の食品(プラントベースフード)を選ぶ人が増えてきたと言われています。しかし、消費者が実際にこうした食品を「買いたい」と思う気持ちや、それが日々の健康的な食習慣につながるかどうかは、どんな要因によって決まるのでしょうか。今回紹介するのは、この疑問を心理学的なモデルを使って読み解こうとしたパイロット研究(予備的な検証研究)です。

研究の視点:心の中の要因と、商品側の要因

この研究では、「計画的行動理論」と呼ばれる消費者行動の枠組みに、情報の受け取り方に関する理論や、五感に訴えるマーケティングの考え方を組み合わせて、植物性食品とそのパッケージが購買意図(買いたいという気持ち)や健康的な食行動にどう影響するかを調べています。分析にあたっては、次の7つの要因が取り上げられました。

  • 消費者の態度(食品に対してどう感じるか)
  • 社会文化的環境(周囲や社会の影響)
  • 消費者個人のニーズ(個々人が食品に求めるもの)
  • パッケージの環境配慮性(包装が環境に優しいかどうか)
  • 知覚的な体験価値(使ったり食べたりして感じる価値)
  • 食品情報要因(表示されている情報など)
  • パッケージの機能的属性(包装の使いやすさなどの機能面)

研究チームは、構造方程式モデルという統計手法を用いて、これら7つの要因同士の関係や、購買意図・健康的な食行動への影響を数量的に検証しました。

研究でわかったこと

分析の結果、7つの要因はいずれも購買意図に対して統計的に有意な正の影響を持つことが示されました。つまり、程度の差はあれ、すべての要因が「買いたい」という気持ちを後押しする方向に働いていたということです。

影響の強さには差があり、最も強い影響を示したのは「パッケージの機能的属性」でした。次いで「消費者個人のニーズ」と「食品情報要因」が続きます。「知覚的な体験価値」「消費者の態度」「パッケージの環境配慮性」は中程度の影響を示し、「社会文化的環境」の影響は最も弱いという結果でした。全体としては、パッケージや商品情報といった「外側」に関わる要因の影響が、消費者自身の内面的な要因の影響を上回る傾向が見られたと報告されています。

また、健康的な食行動への影響については、単純ではない構造が示されました。研究では「直接的な後押し」と「間接的な伝達」という二つの経路が同時に存在するとされています。具体的には、「消費者個人のニーズ」は購買意図に対しては比較的強く影響する一方、健康的な食行動そのものへの直接的な影響はそれより弱く、代わりに「個人のニーズ → 購買意図 → 健康的な食行動」という連鎖的な経路を通じて影響が伝わっていく形が見られたということです。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、計画的行動理論の応用範囲を広げ、複数の要因がどのように絡み合って購買意図や健康的な食行動に結びつくのかを示す枠組みを提示したものとされています。実務面では、植物性食品を扱う企業がパッケージデザインやマーケティングの伝え方を工夫する際の手がかりや、政策立案者にとっての参考情報になりうるとされています。

タイトルにも「パイロット研究」とあるとおり、これは予備的な位置づけの検証であり、この一つの研究だけで結論が確定したわけではありません。購買意図が実際にどの程度「買う」という行動や、長期的な健康的な食生活の定着に結びつくのかについては、今後さらなる研究による裏付けが期待される段階だと考えられます。

まとめ

この研究では、植物性食品が選ばれるかどうかには、消費者自身の考え方だけでなく、パッケージの機能性や商品情報の伝わり方といった「外側」の要因が大きく関わっている可能性が示唆されました。また、個人のニーズが健康的な食行動に結びつくまでには、購買意図を経由する間接的な道筋があることも報告されています。私たちが食品を手に取るとき、無意識のうちにパッケージや表示情報から多くの影響を受けているのかもしれません。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:植物性食品に対する消費者の購買意図と健康的な食行動に及ぼす内的・外的先行変数の影響メカニズムに関するパイロット研究(プロス・ワン・2026年07月)