豆腐や豆乳、ピーナッツバター、全粒粉パン、ゴマ油、アーモンドミルクなど、植物性食品は健康志向の高まりとともに食卓に登場する機会が増えています。その一方で、こうした植物性食品を原因とする食物アレルギーも広がりを見せており、人々の健康に大きく関わる問題となっています。今回紹介する論文は、大豆、ピーナッツ、小麦、ゴマ、ナッツ類という主要な植物性アレルギー食品について、アレルギーの原因となる「アレルゲン」というタンパク質分子の特徴を整理したレビュー(総説)論文です。

そもそもアレルゲンとは、体の免疫システムがIgE抗体という物質を介して過敏に反応してしまうタンパク質のことです。同じ「ピーナッツアレルギー」といっても、原因となるタンパク質は一種類ではなく、複数の種類が関わっていることが知られています。この論文では、それぞれの食品に含まれる主要なアレルゲンの組成、加熱や消化に対する安定性、立体構造、そしてIgE抗体が結合する部位(エピトープ)について、これまでの知見がまとめられています。

研究でわかったこと

ピーナッツについては、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 6という4種類が主要なアレルゲンとして挙げられています。中でもAra h 2とAra h 6は、加熱調理や消化酵素(プロテアーゼ)による分解に対して特に強い耐性を持つとされており、これが調理後もアレルギー症状を引き起こしやすい一因である可能性が示唆されています。

大豆については、Gly m 4、Gly m 5、Gly m 6という3種類が主要なアレルゲンとして紹介されています。ゴマについては、Ses i 1、Ses i 2、Ses i 3、Ses i 6、Ses i 7が主なアレルゲンとされ、特にSes i 1は性質が安定しており、特異性が高いことから、ゴマアレルギーを調べる際の診断マーカーとして有用であると報告されています。

小麦のアレルゲンについては、体内への「摂取」によるものと、皮膚や呼吸器などからの「接触・吸入」によるものとで、関わるタンパク質の種類が異なるとして整理されています。このうち、食べることで生じる食物アレルギーに特に関連が深いのは、グリアジンやグルテニンといったタンパク質だとされています。

アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミといった各種ナッツ類については、貯蔵タンパク質と呼ばれるグループや、脂質輸送タンパク質(LTP)と呼ばれるグループが、アレルギーを引き起こす性質の中心的な役割を担っていると説明されています。

この論文の位置づけと読むうえでの注意

この論文は新たな実験を行ったものではなく、これまでに報告されてきた研究知見を整理・要約したレビュー論文です。そのため、特定の食品やアレルゲンの危険性を新たに証明したものではなく、既存の知見を体系的に見渡すことに主眼が置かれています。論文の著者らは、こうした分子レベルの特徴を理解することが、低アレルゲン性の食品を的を絞った加工方法によって開発するうえで重要であるとしつつ、これらのアレルゲンの特性についてはさらなる研究が必要だとも述べています。個別の食品や症状への影響については、要旨の中で具体的な数値や新たな結論は示されておらず、今後の研究の蓄積が待たれる分野といえます。

まとめ

植物性食品の摂取が広がる中で、大豆、ピーナッツ、小麦、ゴマ、ナッツ類に含まれる主要アレルゲンの組成や安定性、構造についての知見が、このレビューでは整理されています。Ara h 2やSes i 1のように、耐熱性や診断マーカーとしての有用性が指摘されている分子がある一方、こうした分子レベルの理解を深めることが、将来的な低アレルゲン食品の開発につながる可能性が示唆されています。ただし、これは一つのレビュー論文であり、著者ら自身もさらなる研究の必要性を指摘している段階であることには留意しておきたいところです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:主要な植物性アレルギー食品由来アレルゲンの特性に関するレビュー(フーズ・2026年07月)