健康的な食事を考えるとき、「何を減らすか」だけでなく「何に置き換えるか」が重要だという考え方が近年注目されています。ある食品を同じカロリー分だけ別の食品に置き換えたときに、病気のリスクがどう変わるかを調べる「代替分析」という手法です。赤肉や加工肉は多くの研究でリスクとの関連が指摘されてきましたが、世界的によく食べられている鶏肉については、比較対象としての位置づけが十分に整理されてこなかったといいます。今回紹介する論文は、この「鶏肉」を軸にした代替分析の知見をまとめたレビュー研究です。

研究でわかったこと

この研究では、2026年3月までにPubMedに登録された文献を検索し、心血管疾患、冠動脈性心疾患、2型糖尿病、全死亡といった健康アウトカムを対象に、鶏肉を比較対象とした前向きコホート研究、ランダム化比較試験、メタアナリシスを合わせて33件収集し、その内容を整理しています。

まず、赤肉や加工肉を鶏肉に置き換えた場合、心臓や血管、代謝に関わるリスクが低くなる傾向が報告されました。ただし、これはすべてのアウトカムや対象集団で一様に見られたわけではないとされています。一方で、鶏肉をさらにナッツや全粒穀物といった植物性食品に置き換えた場合には、心血管疾患や糖尿病のリスクがより一層低下する関連が見られたとのことです。

興味深いのは、ランダム化比較試験による検証結果です。実際に食事を管理して行われた1件の試験では、鶏肉が赤肉と比べてコレステロールを下げる効果は確認されなかったと報告されています。また、置き換えではなく鶏肉の摂取量そのものに着目した分析では、摂取量が多いほど消化器系のリスクが高まるという関連が見られたものの、これはBMI(体格指数)で調整すると弱まったとされています。卵、乳製品、魚との比較については、アウトカムによって結果が異なっていたということです。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

著者らは、鶏肉を「タンパク質源の中で中間的な位置」にあるものとして位置づけています。つまり、多くの心臓・代謝関連のアウトカムについては赤肉や加工肉よりもリスクが低い一方で、ナッツや全粒穀物、豆類と比べるとリスクは高いという整理です。これは、鶏肉が植物性食品を中心とした食事パターンへ移行するうえでの「通過点」であり、最終的な到達点ではないという見方と一致するとされています。

あわせて重要な注意点として、根拠となっているエビデンスの大部分は観察研究であり、もとになったメタアナリシスにおける確実性は「低い」から「非常に低い」と評価されているとのことです。この研究自体は既存の文献を整理したレビューであり、特定の食品の摂取が病気を防いだり改善したりすると断定するものではありません。

まとめ

今回のレビューでは、鶏肉を軸にした代替分析の結果をまとめ、赤肉・加工肉を鶏肉に置き換えることと心血管代謝リスクの低さとの関連、さらに植物性食品への置き換えでみられる追加的な関連などが報告されました。一方で、コレステロールに関する試験結果や消化器系リスクとの関連など、一様でない結果も示されています。エビデンスの確実性が限定的である点も踏まえ、一つの研究知見として受け止めることが大切だと言えそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:鶏肉摂取と慢性疾患リスク:代替分析からのエビデンス(アカデミア・ニュートリション・アンド・ダイエテティクス・2026年07月)