「同じ年齢でも、実年齢より若く見える人・老けて見える人がいる」という感覚は多くの人が持っているのではないでしょうか。近年の老化研究では、こうした個人差を「生物学的年齢」という指標で数値化する試みが進んでいます。血液検査などの一般的な臨床データから算出されるこの指標は、暦の上での年齢(暦年齢)とは別に、体が実際にどれくらい老化しているかを推定しようとするものです。今回紹介する論文は、この生物学的老化と、日々の食事パターンとの関連を調べた研究です。
研究の方法
この研究は、中国健康栄養調査(CHNS)の2009年調査データを用いた横断研究で、45歳以上の成人4,846人が対象となっています。研究チームはまず、参加者の食品群摂取量(エネルギー摂取量で調整した値)をもとに、主成分分析という統計手法を使って3つの食事パターンを抽出しました。それぞれ「南方型パターン」「欧米型パターン」「植物性食品中心パターン」と名付けられています。老化の指標としては、日常的な臨床検査値から算出される「Klemera-Doubal生物学的年齢(KDM-BA)加速」と「生理的調節不全(PD)」という2つの指標が用いられました。KDM-BA加速は暦年齢に対して体がどれだけ速く(あるいは遅く)老化しているかを示す指標、PDは体内のさまざまな生理システムのバランスの乱れ具合を示す指標と位置づけられています。研究チームは、線形回帰モデルを用いて各食事パターンのスコアとこれら2つの老化指標との関連を検討し、さらに制限付き3次スプライン回帰という手法で、量と反応の関係が直線的かどうかも調べています。
わかったこと
解析の結果、南方型パターンと欧米型パターンは、KDM-BA加速と負の関連(スコアが高いほど老化加速が小さい方向の関連)を示したのに対し、植物性食品中心パターンは正の関連(老化加速が大きい方向の関連)を示したと報告されています。一方、PD(生理的調節不全)については、南方型パターンのみが正の関連を示し、他の2つのパターンとの間には統計的に明確な関連は見られませんでした。さらに詳しく分析したところ、欧米型パターンとKDM-BA加速の関係は単純な直線ではなく、非直線的な関係を示すことが明らかになりました。一方、南方型パターンと植物性食品中心パターンについては、ほぼ直線的な関係だったとされています。
この研究を読むうえでの注意
この研究は横断研究、つまりある一時点でのデータをもとに食事パターンと老化指標の関連を調べたものであり、「この食事をすれば老化が遅くなる」といった因果関係を証明するものではありません。あくまで、ある時点での食事パターンと生物学的老化の指標との間に統計的な関連が見られた、という報告です。また対象は中国の中高年者に限られており、要旨の中で「植物性食品中心パターン」が老化加速と正の関連を示した点なども含め、結果の解釈には食品群の分類方法や地域特有の食習慣といった背景も影響している可能性があります。一つの横断研究の結果であり、これだけで結論が確定したわけではない点に留意しておくとよいでしょう。まとめ
この研究では、中国の中高年者を対象に、南方型・欧米型・植物性食品中心という3つの食事パターンと、生物学的年齢の加速や生理的調節不全との関連が横断的に検討されました。パターンによって老化指標との関連の方向性が異なっていたことから、食事パターンが健康的な老化と関連している可能性が示唆されています。今後、こうした関連がどのようなメカニズムによるものか、また他の集団でも同様の傾向が見られるかについて、さらなる研究が期待されるところです。※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:中国の中高年者における食事パターンと生物学的老化の関連:横断研究からのエビデンス(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)