植物性ミルクやヨーグルト代替品(プラントベース・デイリー・オルタナティブ)は市場を広げている一方、大豆ベースの製品を除くと乳製品に比べてたんぱく質が少なく、食物繊維も製品によっては十分でないことが指摘されています。オーツ麦(Avena sativa)はたんぱく質や不飽和脂肪、そして血中コレステロールの低下や食後血糖値の上昇抑制に関わるとされる水溶性食物繊維「β-グルカン」を豊富に含む穀物です。今回、フィンランドの研究グループが、オーツ麦とソラマメ(Vicia faba)由来の原料でたんぱく質と食物繊維を強化した「発酵タイプ(ガート、乳酸菌発酵ヨーグルト風飲料)」と「非発酵タイプ(ポリッジ、粥状製品)」の2種類の製品を独自に開発し、心血管代謝への影響を比較するランダム化比較試験を行いました。

どんな試験が行われたか

対象は、腹囲や体格指数(BMI 26〜38)が基準を満たし、空腹時血糖・コレステロール・血圧などのうち少なくとも1項目に軽度の異常がある30〜65歳の成人56人です。12週間のクロスオーバー試験デザインが採用され、参加者は3週間の導入期間の後、発酵ガートと非発酵ポリッジをそれぞれ3週間ずつ、順序を入れ替えながら日常の食事に取り入れて摂取しました(間に3週間のウォッシュアウト期間を設置)。1日あたりの摂取量は3〜6デシリットルで、個々のエネルギー必要量に応じて調整されました。両製品は原材料組成が同一で、全粒オーツ粉、オーツふすま濃縮物、ソラマメたんぱく質分離物、ショ糖などを共通の配合で用い、ガートには乳酸菌スターター(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricusとStreptococcus thermophilus)による発酵に加え、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、β-グルカナーゼによる酵素処理が施されました。研究チームは血液検査に加え、β-グルカンやたんぱく質の分子量分布、でんぷんや糖の組成、酸度、粘度、顕微鏡観察などによる製品の物理化学的な特性評価も行っています。

研究でわかったこと

ガート摂取期間では、非HDLコレステロールが平均で0.15±0.51 mmol/L、LDL(悪玉)コレステロールが0.12±0.46 mmol/L、それぞれ低下したと報告されています。血圧や消化器症状(ガストロインテスティナル・シンプトム・レーティング・スケールによる評価)への影響はわずかでした。また、ガート摂取後には貯蔵鉄の指標であるフェリチン値がベースラインと比べて低下したことが示されました。興味深いことに、ポリッジ摂取後にもフェリチンの低下に加え、血圧やHbA1c(過去1〜2か月の平均血糖を反映する指標)のわずかな改善がみられ、これらの効果は発酵の有無による製品間で明確な差にはならなかったとされています。インスリンについては、最初にポリッジを摂取した群でその後のガート摂取期間中に有意な低下がみられるなど、摂取した順序によって異なる反応(シーケンス効果)が確認されました。研究チームは、発酵と酵素処理によってガート中のβ-グルカンの分子量やでんぷん構造、成分組成に明確な変化が生じていたことを製品分析で確認しており、こうした加工由来の変化と、介入期間中に増えたオーツ由来食物繊維の摂取量の両方が、観察された結果に関わった可能性があるとしています。

この研究をどう読むか

論文の結論としては、発酵オーツ飲料の摂取がコレステロール代謝の改善と関連した一方、これは発酵そのものというより、オーツ由来の食物繊維摂取が増えたことによる可能性が高いとされています。また、加工方法にかかわらずオーツ製品の摂取量が増えることがフェリチン濃度の低下や、その他の心血管代謝指標のわずかな改善につながりうるとまとめられています。ただし、この試験のサンプルサイズは、もともと炎症マーカー(hs-CRPやインターロイキン類など)を主要評価項目として設計された際の統計的検出力の計算に基づくものであり、心血管代謝指標については今回の解析がその枠組みの中で解釈されている点には注意が必要です。フェリチン低下についても、値の変化が観察されたことは報告されていますが、その臨床的な意味づけは論文内で慎重に扱われています。

まとめ

この研究は、オーツ麦とソラマメを原料としてたんぱく質と食物繊維を強化した発酵・非発酵の乳代替品を、軽度の代謝異常がある成人が日常的に取り入れた場合の心血管代謝への影響を検討したものです。発酵ガートの摂取でLDLや非HDLコレステロールの低下が示された一方、著者らはこれを発酵という加工プロセス自体の効果というより食物繊維摂取量の増加によるものと捉えており、単一の研究として今後さらなる検証が必要な結果と位置づけられます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Vilma Liikonen, Silvia Cera, Ewoud Blontrock, et al. Role of bioprocessing in modifying cardiometabolic outcomes of an oat–based dairy alternative in a randomised controlled clinical intervention. クリニカル・ニュートリション (2026). DOI: 10.1016/j.clnu.2026.106744.