この研究は、イタリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ「砂糖を減らす」のが難しいのか
アイスクリームに含まれる砂糖は、甘みをつけるだけの材料ではありません。著者らは、砂糖がとろみや口当たりといった物理的な性質(レオロジー特性)にも関わっているため、単純に減らすと製品の質感が変わってしまい、砂糖の削減は技術的に難しい課題だと述べています。
そこで研究チームは、砂糖の一部を置き換える材料として、イヌリンとキャロブ粉という2つの成分に注目しました。イヌリンは植物に含まれる水溶性の食物繊維の一種、キャロブ粉はイナゴマメの実を粉にしたものです。これらを使い、糖を減らしながらも望ましい質感を保てる配合を見つけることが、この研究の目的とされています。
配合をどう探したか
研究チームは「D最適混合計画」と呼ばれる統計的な実験計画法を用いました。これは、複数の材料の配合比率を組み合わせて試すとき、少ない実験回数で効率よく全体の傾向をつかむための手法です。この方法で、ショ糖(スクロース)、ブドウ糖(デキストロース)、イヌリン、キャロブ粉という4つの成分の配合を変えながら、その影響を調べています。
評価の対象となったのは、粘度、稠度指数、流動挙動指数、チキソトロピーといった流動に関する指標です。これらは、材料がどれくらいとろみを持ち、かき混ぜたときにどのように流れ方が変化するかを数値で表したものです。さらに、市販のアイスクリームを基準として目標とする質感の値を設定し、その目標に合う配合を導き出したうえで、実際に作って確かめる検証も行われました。
報告された主な結果
すべての配合が擬塑性(シアシニング)という性質を示したと報告されています。これは、力を加えてかき混ぜるほど柔らかく流れやすくなる、アイスクリームなどに一般的な挙動です。ただし、実験の範囲内でも配合によって流動特性には明確な違いが見られました。
個々の成分については、ショ糖は粘度と稠度を高め、ブドウ糖は逆にどちらも下げる働きを示したとされています。一方、イヌリンとキャロブ粉は水を抱え込む性質(保水性)があるため、はっきりとした増粘効果を示しました。
こうして選ばれた最適配合は、市販品とおおむね近い流動特性を示したと報告されています。ただし著者らは、予測された値と実際に測定された値のあいだに一部食い違いが見られたことも併せて記しています。
成分面では、実験用の対照品と市販の対照品のいずれと比べても、最適配合はショ糖とブドウ糖の含有量が低く、両者を合わせておよそ71%の削減に相当したとされています。総食物繊維は計算値で100グラムあたり11.59グラムに達し、エネルギー値を抑えつつ「食物繊維が豊富」と分類されうる水準だと述べられています。また官能評価では、対照の配合と比べて感じられる甘さが25%有意に低下したことが示されました。
この研究が示すこと
著者らは、イヌリンとキャロブ粉を用いることで、栄養面の質を高めながら、配合の目標に沿った特性を保った減糖アイスクリームを作ることができると結論づけています。
甘さを支える砂糖と、質感を支える砂糖。その二つの役割を切り分け、食物繊維を含む材料で後者を補うという道筋を、実際の配合設計と検証を通して具体的に示した研究だといえます。
著者:Teresa Stefania Dell'Endice(Department of Biological and Environmental Sciences and Technologies, University of Salento, S. P. 6 Lecce-Monteroni, 73100 Lecce, Italy)、Giusy Rita Caponio(Department of Bioscience, Biotechnology and Environment, University of Bari Aldo Moro, Via Orabona 4, 70125 Bari, Italy)、Anna Maria Giudetti(Department of Biological and Environmental Sciences and Technologies, University of Salento, S. P. 6 Lecce-Monteroni, 73100 Lecce, Italy)、Davide De Angelis(Department of Soil, Plant and Food Science (DISSPA), University of Bari Aldo Moro, Via Amendola, 165/a, 70126 Bari, Italy)、Vito Michele Paradiso(Department of Biological and Environmental Sciences and Technologies, University of Salento, S. P. 6 Lecce-Monteroni, 73100 Lecce, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Teresa Stefania Dell'Endice, Giusy Rita Caponio, Anna Maria Giudetti, et al. Rheological Optimization of Reduced-Sugar Ice Cream Enriched with Inulin and Carob Flour. Foods 2026-09-22. DOI: 10.3390/foods15193362. 原著ライセンス:CC BY.