日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Journal of Food and Nutrition Research
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
男性の性の健康は、性欲、勃起、満足感などさまざまな要素から成り立ち、血管や神経、ホルモン、心理状態などが複雑に関わっています。研究チームは、こうした側面を支える手段として食品成分に注目しました。中でも、卵白のたんぱく質を酵素で分解して得られる小さなペプチド(アミノ酸が数個から十数個つながったもの)には、これまでに抗酸化作用や血管の内側を覆う内皮の働きへの影響などが報告されています。
一方で、卵白由来ペプチドにマカや亜鉛などを組み合わせた複合サプリメントが、健康な男性の性的な実感や疲労感にどう関わるかは、十分に調べられていませんでした。そこで著者らは、こうした複合サプリメントの使用中に、自己評価による性的な実感と疲労感がプラセボ(有効成分を含まない見かけ上同じカプセル)使用中とどう違うかを、既存のデータを用いて振り返って検討しました。
何をどのように調べたか
解析の対象は、2011年に実施された製品モニタリング試験のデータです。試験品は、1日分6カプセルに卵白分解物350mg、マカ抽出物粉末350mg、亜鉛を5%含む酵母70mgを主成分として含み、そのほかエゾウコギやシトルリンなど数種の素材を各10mg配合したものでした。プラセボはでんぷんのみのカプセルです。
試験には20〜60歳の健康な男性20人が参加し、そのうち19人が無作為に2つの順番に割り振られました。一方は試験品を2週間使ってからプラセボを2週間、もう一方はその逆の順番で使用し、間には1週間の休止期間を設けました。同じ人が両方を試す「クロスオーバー」と呼ばれる方式で、参加者も評価する側もどちらを使っているか分からない二重盲検で行われました。
評価には、0〜100の線上に現在の状態を書き込む質問票を用い、点数が高いほど良好な状態を表すようにしました。各期間の1週目と2週目に、朝の勃起の状態、勃起の硬さ、勃起の持続、性欲、性的満足感といった性的な実感の項目と、目覚めの疲れや目の疲れ、関節や筋肉の痛みなど疲労に関する項目を尋ねました。必要な評価がすべてそろった16人のデータが主な解析に使われました。複数の項目を同時に比べることで偶然の差が見つかりやすくなる点を考慮し、その補正を行った結果もあわせて示されています。
主な結果
性的な実感に関する5項目はいずれも、試験品の使用中にプラセボより高い点数でした。1週目では、朝の勃起、勃起の硬さ、勃起の持続の3項目で統計的に意味のある差が認められました。2週目には5項目すべてで差が認められ、その差はおおむね10〜13点程度と1週目より大きくなっていました。これらの差は、複数比較の補正後も統計的に意味のある水準を保っていたと報告されています。
疲労に関する項目でも、多くの項目と時点で試験品使用中の点数が高い傾向がみられ、目の疲れや目覚めの疲れなどでは補正前には差が認められました。ただし、複数比較の補正を行うと、疲労に関する項目で統計的に意味のある差は残りませんでした。
安全性については、重い有害事象は報告されませんでした。軽い胃の不快感や吐き気がプラセボ期間と試験品期間の両方で少数みられましたが、いずれも軽く自然に治まり、これを理由に使用をやめた人はいませんでした。
この研究が示すこと
著者らは、このサプリメントの使用と、自己評価による性的な実感の高さとの間に一貫した関連のパターンがみられたと結論づけています。一方、疲労に関する結果は補正後に差が残らず、性的な実感の結果ほど確かなものではありませんでした。
この解析は少人数のデータを後から振り返った探索的なもので、使用期間は2週間と短く、評価は妥当性が確認された尺度ではない独自の質問票による自己申告でした。また、複数の成分を含むため、どの成分が結果に関わったのかは区別できません。著者らは全員、試験品の成分である卵白分解物を製造する企業の社員です。著者ら自身も、結果は慎重に解釈すべきで、より大規模な研究での確認が必要だとしています。
著者:Xuan Li(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Kazuya Watabe(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Maya Sakashita(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Aoi Tamura(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、和巧 池田(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Saki Shirako(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Kenji Sato(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)、Young-il Kim(Pharma Foods International Co., Ltd. , Kyoto 615-8245 , Japan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xuan Li, Kazuya Watabe, Maya Sakashita, et al. Effects of a Multi-Ingredient Dietary Supplement on Sexual Well-Being in Healthy Men: A Retrospective Analysis of a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Crossover Product-Monitoring Study. Journal of Food and Nutrition Research 2026-10-08. DOI: 10.12691/jfnr-14-9-1. 原著ライセンス:CC BY.