この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
環境への配慮を含む「持続可能な食事」は、スポーツ栄養の分野でも関心を集めています。食事はエネルギーの確保や疲労からの回復、睡眠や気分などに関わるため、競技者にとっては環境の問題であると同時に、日々の準備や回復を支える生活習慣でもあります。
一方で、持続可能な食習慣が競技者の精神的レジリエンスや、本人が感じる競技パフォーマンスとどう関係するかについては、これまで十分な知見がありませんでした。精神的レジリエンスとは、プレッシャーの下でも集中や自信、感情の安定を保ち、挫折から立ち直って粘り強く取り組む力を指します。研究チームは、持続可能なスポーツ栄養の実践、持続可能性への意識、回復の質、精神的レジリエンス、自己評価による競技パフォーマンスの関係を調べました。
著者らは、競技者にとっての持続可能な食事を、食事制限やエネルギー不足、単なる動物性たんぱく質の削減とは区別しています。十分なエネルギーや炭水化物、たんぱく質の量と質、水分などを確保しながら、環境に配慮し、食品の無駄を減らす食べ方として捉えています。
調べた方法
研究は8週間にわたって行われました。大学チームやスポーツクラブ、トレーニング施設に所属する競技者300人を招待し、230人が参加に同意し、202人が質問票にすべて回答しました。対象者の多くは大学やクラブ・地域レベルで競技しており、一部は全国レベルの選手でした。平均年齢は21.4歳です。さらに、回答者のうち30人には面接調査も行いました。
質問票では、持続可能なスポーツ栄養の実践について8項目を尋ね、40点満点で点数化しました。項目は、植物性食品を中心とした食事、加工度の低い食品の選択、超加工食品を減らすこと、バランスのよい食事計画、多様な食品からの十分なたんぱく質、地元や旬の食品の選択、食品ロスの削減、水分補給の計画です。この指標は今回の研究のために作られた探索的なもので、十分に検証された尺度ではないと著者らは説明しています。精神的レジリエンス、回復の質、持続可能性への意識、自己評価による競技パフォーマンスも、すべて本人の回答で測られました。
分析では、項目どうしがどの程度連動しているかを示す相関を調べました。さらに、複数の要因を同時に考慮した場合に、どの要因が精神的レジリエンスや自己評価パフォーマンスと関連するかを統計モデルで確かめました。面接の内容は、選手の語りに繰り返し現れるテーマを整理し、数値の結果と組み合わせて解釈されました。
主な結果
持続可能な栄養実践の平均点は40点中27.6点でした。持続可能性への意識の平均は5段階で3.88で、意識は比較的高い一方、実践は中程度にとどまっていました。著者らはこれを、大切さを理解していても費用や時間、入手しやすさなどの理由で実行しきれない「意識と行動のずれ」の可能性として示しています。
持続可能な栄養実践を多く行っている選手ほど、精神的レジリエンス(相関係数r=0.47)、回復の質(r=0.43)、自己評価パフォーマンス(r=0.39)が高い傾向がありました。持続可能性への意識が高い選手ほど、実践も多い傾向でした(r=0.51)。加工食品の摂取が多いほど精神的レジリエンスが低い傾向も見られました(r=−0.31)。ただし著者らは、この関係には時間不足や費用、食品の入手しやすさといった事情が反映されている可能性があり、慎重に解釈すべきだとしています。
複数の要因を同時に考慮した分析では、持続可能な栄養実践、回復の質、持続可能性への意識が、それぞれ精神的レジリエンスの高さと関連していました。このモデルは、精神的レジリエンスのばらつきの37%を説明していました。自己評価パフォーマンスについては、精神的レジリエンスとの関連が最も強く、回復の質、持続可能な栄養実践がそれに続きました。
面接からは、「持続可能な食事は心の準備の一部」「回復への自信」「感情の安定と集中」「持続可能な食事を続ける上での現実的な壁」という4つのテーマが見いだされました。選手たちは、規則的な食事や水分補給の習慣が、練習や試合に向けた準備の一部になっていると語りました。また、加工食品に頼る背景として、時間の制約や学業・仕事の予定、遠征、費用などが挙げられました。
研究が示すこと
この研究は、持続可能なスポーツ栄養の習慣が、回復の実感や心の強さ、本人が感じる競技パフォーマンスと結びついている様子を、数値と選手の語りの両面から示しました。食事が体の必要を満たすだけでなく、規律や準備ができているという心理的な手応えとも関わりうることがうかがえます。
ただし、ある一時点の調査であり、評価もすべて本人の回答に基づくため、食習慣がこれらの改善を引き起こしたとは言えません。研究チームは、結果はあくまで関連として解釈すべきだと強調しています。そのうえで、競技者向けの持続可能な栄養は、食事を制限するのではなく、十分なエネルギーとたんぱく質を確保し、競技力と両立する形で進めることが大切だとまとめています。
著者:Fan Xitong(Education and Sports School of Soochow University)、Cheng Miao(Public Physical Education Department, Soochow College, Soochow University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fan Xitong, Cheng Miao. Sustainable sport nutrition behaviors, mental resilience, and perceived athletic performance in competitive athletes. Frontiers in Nutrition 2026-10-06. DOI: 10.3389/fnut.2026.1935463. 原著ライセンス:CC BY.