牛乳の代わりにオーツや大豆、ナッツなどを原料にした植物性飲料は近年広がりを見せていますが、栄養面では乳製品に劣る部分もあると指摘されてきました。今回、ブラジルの連邦ラヴラス大学(UFLA)などの研究チームが、オーツ・アーモンド・ひまわりの種を原料にした飲料を、乳酸菌とその酵母を組み合わせて発酵させることで、栄養価や機能性がどう変わるかを調べた研究を発表しました。
どんな発酵を行ったのか
研究チームは、Lactiplantibacillus plantarum CCMA 0743株と、Pichia kluyveri CCMA 0615株という酵母を組み合わせた共培養で、オーツ・アーモンド・ひまわりの種からなる飲料を24時間発酵させました。この2種はいずれも「潜在的プロバイオティクス」として位置づけられています。発酵後の飲料では、L. plantarumが1ミリリットルあたり9.32 log CFU(コロニー形成単位)、P. kluyveriが7.05 log CFUという高い生菌数に達しており、微生物がよく増殖したことが確認されています。発酵の過程では糖の利用や酸性化が進み、さまざまな生理活性物質が生成されたと報告されています。
成分と体内での吸収されやすさへの影響
発酵によって、飲料中のリノール酸、短鎖脂肪酸、カフェ酸・没食子酸・バニリン酸といったポリフェノール類、ビタミンB2・B12、そしてGABA(γ-アミノ酪酸)の濃度が増加したことが報告されています。さらに、胃腸での消化を模した実験(模擬消化試験)では、必須アミノ酸やビタミンB群の「生体アクセス性」、つまり消化管で実際に吸収されうる形になる度合いが、発酵によって向上したことが示されました。
抗生物質投与後の腸内環境への影響
研究チームはさらに、BALB/c系統のマウスを使い、抗生物質バンコマイシンの投与によって腸内細菌のバランスが崩れる「腸内異常(ディスバイオシス)」のモデルを作りました。バンコマイシン投与によって、Bacillota門やBacteroidota門に属する細菌が減少する一方、Pseudomonadota門やEnterobacteriaceae科に関連する菌群が増加することが確認されています。ここに発酵飲料を投与したところ、腸内細菌叢の回復が促され、腸内環境の恒常性や短鎖脂肪酸の産生に関わるとされるLachnospiraceae科やOscillospiraceae科の菌が増加したことが報告されています。
この研究をどう読むか
今回の結果は、特定の乳酸菌と酵母を組み合わせた発酵が、植物性飲料の栄養・機能性成分を増やし、抗生物質投与後の腸内細菌バランスの回復を助ける可能性を示すものですが、動物実験の段階であり、ヒトでの効果を直接示したものではありません。研究チームの所属機関に関する情報は提供されていますが、そこから研究の結論を広げて解釈すべきではなく、あくまで一つの研究として位置づける必要があります。
まとめ
オーツ・アーモンド・ひまわりの種を原料とする植物性飲料に、L. plantarumとP. kluyveriを組み合わせて発酵させることで、ポリフェノールやビタミン、GABAなどの含有量や消化管での吸収されやすさが高まり、動物実験では抗生物質による腸内細菌バランスの乱れからの回復を助ける可能性が示唆されました。今後さらなる研究の積み重ねが期待される段階の知見です。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Hygor Lendell Silva de Souza, Dirceu de Sousa Melo, Andreísa Teixeira de Castro, et al. Plant-based beverage fermented by a potential probiotic co-culture of Pichia kluyveri and Lactiplantibacillus plantarum: bioactive composition, bioaccessibility, and modulation of antibiotic-induced gut dysbiosis. フード・リサーチ・インターナショナル (2026). DOI: 10.1016/j.foodres.2026.120292. 原著ライセンス: cc-by.