著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:International Journal Software Engineering and Computer Science (IJSECS)

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的:少人数の店員に集中する注文業務

インドネシアの飲食店「Warkop Abas」は、店内に約25卓を持ち、1日におよそ100人の客が訪れます。ピーク時には短い時間に最大50人ほどが来店し、1日に用意する品数は300品を超えます。こうした客席の業務を、わずか4人の店員が担っています。注文の聞き取り、メニューの説明、厨房との連絡、レジでの会計までを同時にこなす必要がありました。

研究チームの現地観察によると、料理の提供には通常10〜20分かかり、混雑時には20〜40分に延びることがありました。飲み物も通常の5〜10分が、10〜30分まで延びていました。著者らは、客が店員の手が空くのを待たなければ注文できない仕組みに遅れの原因があると考えました。そこで、客が自分で注文できるウェブ型のQRメニューとセルフオーダーの仕組みを開発し、店で実際に運用して検証することを目的としました。

何をつくり、どう確かめたか

研究チームは、店主や店員への観察と聞き取りから必要な機能を整理しました。試作品を店主に見せて意見を聞き、改良を重ねたうえでシステムを完成させています。土台には、ウェブサイト作成ソフトのWordPressと、その上で通販機能を担うWooCommerceを使いました。

各テーブルには、その席専用のQRコードが置かれます。客がスマートフォンで読み取ると、席の番号が自動的に認識されます。客はアプリを入れたり会員登録をしたりすることなく、ブラウザ上で注文できます。メニューはご飯もの、麺類、飲み物、コーヒー、軽食の5分類です。客は品物をカートに入れ、支払い方法を選びます。支払いは、インドネシアで普及している共通QR決済「QRIS」と、レジでの現金払いのどちらでも可能です。確定した注文はデータベースに記録され、レジ側の「キャッシャーダッシュボード」と呼ばれる管理画面にすぐ表示されます。店員はこの画面で、注文の状態を「保留」「調理中」「完了」の3段階で更新できます。

動作の確認には2種類の試験を行いました。1つ目は、プログラムの中身を見ずに、入力に対して期待どおりの結果が返るかを調べる「ブラックボックステスト」です。2つ目は、プログラム内部の処理の流れを調べる「ホワイトボックステスト」です。ホワイトボックステストでは「循環的複雑度」という指標も使いました。これは、処理の分かれ道がいくつあるかを数で表すもので、値が小さいほど構造が単純で、点検や修正がしやすいとされます。

主な結果

ブラックボックステストは14の場面で行われました。対象は、ログイン、QRコードからメニューへの移動、分類や検索、カートの操作、注文確定、2種類の支払い、管理画面への注文表示と状態の更新、メニューの管理、売上集計などです。著者らは、すべての場面で期待どおりに動作したと報告しています。

ホワイトボックステストでは、重要な4つの処理を調べました。その結果、循環的複雑度はレジ担当者のログイン処理が3、注文確定の処理が5、注文品の追加や変更の処理が4、注文状態の更新処理が4でした。どの処理も、想定されるすべての経路が予定どおりに動いたとされています。著者らは、値がいずれも5以下の低〜中程度であることから、プログラムの構造は安定していて保守しやすいと結論づけています。

運用面では、これまで店員が担っていた注文の記録を客自身が行う形に変わりました。そのため店員は、調理や配膳に集中できるようになったと論文は述べています。取引記録からは、客がQRISと現金払いの両方を実際に使っていたことが確認されました。著者らは、2つの支払い方法を用意したことが客の習慣に合っていたとみています。紙の伝票を突き合わせる作業も不要になり、店主は売上や人気メニューをまとめて把握できるようになったとされます。

一方で、課題も2つ報告されています。1つは、QRISでの支払いをシステムが自動で確認できないことです。レジ担当者が入金の画面などを目で確かめる必要が残っています。もう1つは、新しい注文を知らせる通知機能がないことです。混雑時には、店員が管理画面をこまめに見ていなければなりません。

この研究が示すこと

この研究は、少人数で回している小さな飲食店でも、身近なウェブ作成ツールを使えば、アプリ不要で席から注文できる仕組みを構築して運用できることを、実店舗での事例として示しています。著者らは、席に着いてすぐ注文できるようになったことで注文までの待ち時間が短くなり、店員と客の間で作業の分担が見直されたと報告しています。ただし、導入後の提供時間を数値で比べた結果は示されていません。今回の成果は、主にシステムが正しく動作したことの確認と、店の運用の変化の観察に基づくものです。

原著論文の著者・所属:Romi Naufal Salam(Sekolah Tinggi Ilmu Komputer Cipta Karya Informatika)、Nova Dahliyanti(Sekolah Tinggi Ilmu Komputer Cipta Karya Informatika)、Mesra Betty Yel(Sekolah Tinggi Ilmu Komputer Cipta Karya Informatika)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Romi Naufal Salam, Nova Dahliyanti, Mesra Betty Yel. Implementation of a Website-Based QR Menu and Self-Ordering System at Warkop Abas. International Journal Software Engineering and Computer Science (IJSECS) 2026-11-01. DOI: 10.35870/ijsecs.v6i3.8325. 原著ライセンス:CC BY.