この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Ethics
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
スーパーやコンビニに並ぶ食品には、野菜や果物のようにほとんど手を加えられていないものもあれば、スナック菓子や清涼飲料水のように工場で複雑に加工されたものもあります。こうした「加工度の違い」は栄養面でよく話題になりますが、環境への負荷や地域の食文化との関わりについてはどうでしょうか。今回紹介する研究は、この加工度という視点を、食の持続可能性を考えるための枠組みに組み込もうとした理論的な取り組みです。
研究の背景
近年、健康・環境・社会的公平性・文化的な適切さを同時に満たす「持続可能な食事」が、研究や政策の分野で注目されています。ただし、これまでの評価の枠組みは分野ごとにばらばらで、食品がどれだけ加工されているかという構造的な特徴を、正面から取り込んだものは少なかったといいます。
一方で、超加工食品は健康への影響だけでなく、現代の食システムのあり方を映し出す存在でもある、という見方が近年広がっています。生産から流通、消費に至る食のしくみ全体に、環境・経済・社会文化的な影響を及ぼしているという考え方です。
研究でわかったこと
この研究では、食品の加工度を分類する「Nova分類」を、持続可能な食事を構成するさまざまな要素と結びつけた理論的な概念モデルが提案されました。モデルの構築には体系的な手順が用いられ、専門家による意見集約の手法である「デルファイ法」を使った検証も行われています。
提案されたモデルによると、未加工・最小限の加工にとどまる食品を中心とした食事と、超加工食品を中心とした食事とでは、持続可能性に関わる道筋が異なることが示されました。前者は、生物多様性の保全や地域の食システム、文化的・料理的な慣習の維持、栄養の質の高さといった点と結びつきやすいとされています。あわせて、食システムを構成するさまざまな要素同士が互いに影響し合っている様子も示されました。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
研究チームは、このモデルが因果関係を証明するものではないと明言しています。あくまで既存の知見を整理し、まだわかっていない点を洗い出したうえで、今後の実証研究や政策的な分析を後押しするための枠組みだと位置づけられています。
つまり「超加工食品を減らせば持続可能になる」と断定した研究ではありません。加工度という切り口を使えば、食の持続可能性をより体系的に評価できるのではないか、という提案の段階にある研究です。
まとめ
この研究は、食品の加工度という一見身近な視点が、健康だけでなく環境や文化、地域社会ともつながっていることを整理して示しました。今後、このモデルをもとにした実証データの蓄積が進めば、食のあり方を考えるうえでの新たな手がかりになりそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):Nova食品分類に基づく食消費の持続可能性を理解するための概念モデル(フード・エシックス・2026年08月)
著者:Matheus Santos Cordeiro(Department of Nutrition, Universidade Federal de Minas Gerais, Belo Horizonte, Brazil)、Bruna Aparecida Avelar(Universidade Federal de Ouro Preto, Ouro Preto, Brazil)、Alex Oliveira da Camara(Oswaldo Cruz Foundation, Rio de Janeiro, Brazil)、Dayan Carvalho Ramos Salles de Oliveira(Oswaldo Cruz Foundation, Rio de Janeiro, Brazil)、Mariana Carvalho de Menezes(Department of Nutrition, Universidade Federal de Minas Gerais, Belo Horizonte, Brazil)