コンビニ弁当やスナック菓子、加糖飲料など、いわゆる「超加工食品(ウルトラプロセスドフード、UPF)」は、忙しい毎日を送る働く人々の食生活に深く入り込んでいます。一方で、教員という職業はもともと精神的な負担が大きい仕事として知られ、「知覚ストレス」の高さが公衆衛生上の課題として注目されてきました。この2つ――食生活とストレス――には何か関係があるのでしょうか。今回、インド都市部の教育従事者を対象に、この関連を性別ごとに調べた横断研究が報告されました。
どんな研究か
この研究は、インド都市部の教育機関に勤める教員549人を対象にした横断研究(ある一時点での状況を調べる調査)です。超加工食品の摂取状況は、NOVA分類という食品加工度の考え方に沿った20項目からなる質問票(該当する食品を食べているかどうかを○×式で答える形式)で数値化されました。参加者は、摂取量が少ない群(Low、8項目以下、149人)、中程度の群(Moderate、9〜12項目、241人)、多い群(High、13項目以上、159人)の3グループに分けられています。ストレスの度合いは、心理学でよく使われる「知覚ストレス尺度(PSS-10)」という10項目の質問票で測定されました。
研究でわかったこと
結果を見ると、PSS-10で測ったストレスの平均点は、超加工食品の摂取が少ない群(2.77点)、中程度の群(3.01点)、多い群(2.97点)という順に、おおむね摂取量が多いほど高くなる傾向が見られました。統計的な検定では、摂取量が多い群は少ない群に比べて有意にストレスが高いという結果が示されています。
また、超加工食品の摂取量とストレスの間には、統計的に意味のある正の相関(一方が増えるともう一方も増える傾向)が確認されました。ただし、この相関の強さを示す指標(R²=0.044)はそれほど大きくなく、超加工食品の摂取だけでストレスの違いを説明できるわけではないことがうかがえます。年齢・性別・BMI(体格指数)の影響を統計的に取り除いた分析でも、超加工食品の摂取量とストレスの関連は維持されていました。
さらに興味深い点として、超加工食品の摂取量にかかわらず、女性教員は男性教員に比べて知覚ストレスが有意に高いという結果も示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
論文の考察では、超加工食品とストレスの関連について、腸と脳の相互作用(腸脳相関)の乱れやホルモン・神経系の調節異常といった仕組みが過去の実験的な研究で指摘されていることに触れています。ただし、この点は重要な注意点ですが、今回の研究ではそうした生理学的な仕組み自体を直接調べたわけではありません。あくまで「摂取量」と「ストレスの自己申告」の関連を観察した結果です。
また、この研究は横断研究であるため、「超加工食品をたくさん食べるとストレスが高くなる」のか、「ストレスが高いから超加工食品を多く食べてしまう」のか、あるいは他の要因が両方に影響しているのかを区別することはできません。論文でも、因果の方向性を確かめるには、時間の経過を追う縦断研究や、生体指標を組み合わせた研究、性別ごとの詳しい検討が必要だと述べられています。
対象がインド都市部の教育従事者に限られている点も踏まえ、この結果がそのまま他の職業や地域の人々に当てはまるとは言い切れません。
まとめ
今回の研究では、超加工食品の摂取量が多い教員ほど知覚ストレスが高い傾向が見られ、その関連は年齢や性別、BMIを考慮しても統計的に維持されていました。相関の強さは決して大きくはなく、あくまで一つの横断研究による結果ですが、食生活が教育従事者のメンタルヘルス対策を考えるうえでの一つの手がかりになりうることを示唆する結果といえそうです。今後、時間経過を追った研究や生体データを含む研究によって、より詳しい関係が明らかになることが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:インド都市部の教育従事者における超加工食品消費と知覚ストレスの関連:性別層別横断研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)