コンビニのお弁当やスナック菓子、清涼飲料水など、私たちの食卓には「超加工食品」と呼ばれる食品があふれています。超加工食品とは、香料や着色料、甘味料といった食品添加物を多く使い、工業的な加工を経て作られる食品のことです。近年、こうした食品の摂取が心の健康、特にうつ病と関係しているのではないかという議論が広がっています。ただし、超加工食品とひとくちに言っても、その中には風味料、着色料、甘味料、たんぱく質素材、食物繊維など、実にさまざまな成分(マーカー)が含まれています。「超加工食品全体」ではなく「どの成分が」うつ病リスクと関わっているのかを詳しく調べた研究が、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション誌に掲載されました。
研究でわかったこと
この研究は、英国の大規模な健康調査プロジェクト「UKバイオバンク」のデータを用いた前向きコホート研究です。少なくとも1回の食事アンケート(Oxford WebQ)に回答した17万1818人を対象に、10種類の超加工食品マーカーのカテゴリーと、それらに含まれる39種類の具体的な成分の摂取量を、総食品摂取量に占める割合(%TFI)として算出しました。そのうえで、コックス比例ハザード回帰モデルという統計手法を用いて、これらの摂取量とその後のうつ病発症との関連を調べています。
平均10.7年間の追跡期間中に、5424人がうつ病を新たに発症しました。分析の結果、10のマーカーカテゴリーのうち「風味料」「着色料」「甘味料」の3つについては、摂取量が多いほどうつ病リスクが高くなるという、用量依存的な正の関連が統計的に有意な形で見られました(いずれもP<0.0001)。具体的には、最もリスクが低い摂取割合(HR-nadirと呼ばれる基準点)と比べて、風味料は摂取量40%対5%でハザード比1.46(95%信頼区間1.29〜1.64)、着色料は20%対3%で1.49(1.30〜1.70)、甘味料は20%対0%で1.45(1.32〜1.58)という関連の強さが報告されています。
一方、残る7つのカテゴリーのうち「たんぱく質源」と「食物繊維」の2つについては、摂取量が少なすぎても多すぎてもリスクがやや高くなる「U字型」の関連が見られました。また「風味増強剤」「加工助剤」「化工デンプン」「各種糖類」「加工油脂」の5つについては、うつ病リスクとの間に統計的に有意な関連は見られなかったとされています。こうした主な結果は、さまざまな感度分析(分析条件を変えた再検証)を行っても大きく変わらず、頑健であったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文の著者らは、今回の結果について「超加工食品のすべてが一様にうつ病と関連しているわけではなく、特定の成分(マーカー)のみが関連している可能性」を示すものだと結論づけています。そのうえで、この知見は超加工食品の摂取を減らす介入や、今後のメカニズム研究において、どの成分を優先的に対象とすべきかを検討するための、初期的な枠組みを提供するものだと位置づけています。
ここで注意したいのは、これはあくまで一つの観察研究の結果であるという点です。食事摂取量と発症の「関連」が示されたものであり、風味料や着色料、甘味料がうつ病を「引き起こす」と直接証明したものではありません。今後、さらなる研究の積み重ねによって理解が深まっていくことが期待されます。
まとめ
今回紹介した研究では、超加工食品に含まれるさまざまな成分のうち、風味料・着色料・甘味料の摂取量が多いほど、うつ病発症リスクが用量依存的に高くなるという関連が報告されました。一方で、たんぱく質源や食物繊維はU字型の関連、その他の成分では有意な関連が見られなかったとされています。超加工食品と一括りにするのではなく、含まれる成分ごとに異なる関連がある可能性を示す興味深い知見といえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:超加工食品の39種の食事マーカーとうつ病発症との関係:英国バイオバンク前向きコホート研究からのエビデンス(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年08月)