著者の所属・活動拠点の国は、マレーシア、中国です。

掲載誌:Polish Journal of Food and Nutrition Sciences

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、マレーシア・サバ州のハリナシバチ蜂蜜について、蜜の由来となる植物によってフェノール類の組成と酵素の働きを抑える作用がどう異なるかを調べました。対象としたのは、血圧の調節や糖質・脂質の消化、コレステロールの合成などに関わる酵素です。

蜂蜜のフェノール類は蜜源植物によって異なりますが、サバ州の蜂蜜で、その組成と心血管の健康に関係する酵素への作用を結び付けた知見は限られていました。

何を、どのように調べたか

研究チームは2022年9~12月に、サバ州の3地域の養蜂場で、ハリナシバチの一種Heterotrigona itamaが作った蜂蜜を採取しました。アカシア、ココナツ、シンガポール・ロードデンドロンなどの植物に由来するものと、複数の花に由来する百花蜜の計8種類を対象とし、各蜜源について複数の巣から集めました。

蜂蜜中の総フェノール量、総フラボノイド量、個々のフェノール成分を分析しました。また、試験管内の実験で、血圧調節に関わるACE、でんぷんを分解するαアミラーゼ、脂肪を分解する膵リパーゼ、コレステロール合成に関わるHMG-CoA還元酵素、コレステロールエステラーゼの計5種類に対する阻害作用を測定しました。成分量と阻害作用の関連も統計的に調べました。

主な報告結果

総フェノール量は蜜源によって異なり、本文の報告では蜂蜜100g当たり45.31~105.21mgの没食子酸相当量でした。これは、測定値を基準物質である没食子酸の量に換算したものです。最も多かったのはシンガポール・ロードデンドロン由来の蜂蜜でした。個別の分析では9種類のフェノール成分が確認され、すべての蜂蜜でロスマリン酸が主要な成分でした。

ACEに対しては、蜂蜜濃度10mg/mLで8種類すべてに阻害作用が認められました。最も強かったシンガポール・ロードデンドロン由来の蜂蜜の阻害率は74.62%、最も弱かったローズマートル由来では10.92%でした。ACEの阻害作用は、総フェノール量や総フラボノイド量と正の相関を示しました。

一方、HMG-CoA還元酵素への阻害作用が最も強かったのはココナツ由来の蜂蜜で、阻害率は65.05%でした。膵リパーゼでは百花蜜が、酵素の働きを半分に抑える濃度であるIC50の最小値を示し、12.02mg/mLでした。酵素によって、強い作用を示す蜂蜜は異なっていました。

この報告が示すこと

著者らは、蜂蜜の酵素阻害作用の違いは、蜜源植物やフェノール成分の組成の違いと関連すると結論付けています。蜂蜜をひとまとめにするのではなく、由来する植物と成分の特徴を併せて捉えることの意味を示した報告です。

ただし、今回示されたのは試験管内での酵素への作用です。著者らも、食後の血糖調節への効果については、さらに確認が必要だと述べています。

原著論文の著者・所属:Fuen A. Tan(Food Security Research Laboratory , Faculty of Food Science and Nutrition , Universiti Malaysia Sabah , Jalan UMS 88400 Kota Kinabalu , Sabah , Malaysia)、Ai L. Ho(Food Security Research Laboratory , Faculty of Food Science and Nutrition , Universiti Malaysia Sabah , Jalan UMS 88400 Kota Kinabalu , Sabah , Malaysia)、Chanyuan Xie、Fook Y. Chye(Food Security Research Laboratory , Faculty of Food Science and Nutrition , Universiti Malaysia Sabah , Jalan UMS 88400 Kota Kinabalu , Sabah , Malaysia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Fuen A. Tan, Ai L. Ho, Chanyuan Xie, et al. Phenolic Composition and Enzyme Inhibitory Activity of Sabah Stingless Bee Honey. Polish Journal of Food and Nutrition Sciences 2026-11-02. DOI: 10.31883/pjfns/241503. 原著ライセンス:CC BY.