この研究は、インドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Food Chemistry International
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
カボチャ(Cucurbita moschata)の種子を利用したあとに残る「種皮(seed hull)」は、農産加工の現場で廃棄されることが多い部分です。研究チームは、この種皮から食物繊維を取り出し、その性質を詳しく調べることを目的としました。
食物繊維は、水に溶けにくい不溶性食物繊維(IDF)と、水に溶ける水溶性食物繊維(SDF)に分けられます。著者らは、この両方を種皮から回収し、それぞれがどのような構造と性質をもつのかを明らかにしようとしました。
どのように調べたか
回収には、高温の水を使う「熱水処理(ハイドロサーマル処理)」が用いられました。研究チームは、取り出せる食物繊維の量が最大になるように、抽出の条件を検討しています。具体的には、原料に対する液体の比率(20:1〜60:1 mL·g⁻¹)、抽出温度(80℃〜98℃)、抽出時間(80〜120分)という三つの条件を変えて最適化を行いました。
最適な条件で得られた不溶性・水溶性の両画分について、著者らは複数の分析手法を組み合わせて特徴づけを行いました。糖の組成は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で、分子に含まれる化学構造の手がかりは赤外分光法(FTIR)で調べています。また、結晶のような規則正しい並びがあるかどうかをX線回折(XRD)で、熱に対する安定性を示差走査熱量測定(DSC)と熱重量分析(TG)で、見た目の微細な形状を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認しました。
報告された主な結果
糖の組成としては、両方の食物繊維でグルコースが主要な構成単位だったと報告されています。FTIRでは、不溶性側に1450および1257 cm⁻¹、水溶性側に1744、1407、1096 cm⁻¹といった特徴的なピークが認められ、これは組成の違いによるものと説明されています。XRDからは、規則正しく並んだ結晶的な領域と、乱れた非晶質の領域が共存していることが示されました。熱分析では、いずれの画分も良好な熱安定性を示したとされています。
電子顕微鏡による観察では、不溶性食物繊維は開いた構造をもち、水溶性食物繊維は粒状に見えたと報告されました。機能面では両者に違いがあり、不溶性食物繊維は油を保持する能力(4.50 g·g⁻¹)とコレステロールを吸着する能力(8.87〜12.69 mg·g⁻¹)が高く、一方で水溶性食物繊維は水を保持する能力(5.18 g·g⁻¹)、膨潤する能力(3.21 mL·g⁻¹)、グルコースを吸着する能力(1.56〜6.72 mmol·g⁻¹)が優れていました。なお、これらは試験管内で測定された物理的・化学的な性質であり、体内での働きを示したものではありません。
この研究が示すこと
著者らは、熱水処理がカボチャ種皮を有効活用するための費用対効果の高い方法であると結論づけています。得られた不溶性・水溶性の食物繊維は、それぞれ異なる構造と機能特性を示しました。
この成果は、これまで農産加工の廃棄物とされてきた種皮を、多機能な素材へと転換する道筋を示すものであり、廃棄物の削減にもつながると論文は位置づけています。
著者:Rishabh Thakur(Department of Food Engineering and Technology Sant Longowal Institute of Engineering and Technology (Deemed University) Sangrur Punjab India)、Harish Sharma(Department of Food Engineering and Technology Sant Longowal Institute of Engineering and Technology (Deemed University) Sangrur Punjab India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rishabh Thakur, Harish Sharma. Profiling of Dietary Fiber From Pumpkin ( Cucurbita moschata ) Seed Hulls Pertaining to Monosaccharide Composition, Structural, Thermal, and Functional Properties. Food Chemistry International 2026-08-31. DOI: 10.1002/fci2.70092. 原著ライセンス:CC BY.