食物繊維は「体によい」というイメージで語られがちですが、その中にもいくつかの種類があります。水に溶ける可溶性食物繊維(SDF)と、溶けない不溶性食物繊維(IDF)は、腸内での働き方が異なることが知られています。今回紹介する研究は、2型糖尿病と高血圧を併せ持つ患者において、この2種類の食物繊維が血圧にどう影響するかを比較したものです。
研究チームには、チリのサント・トマス大学(Universidad Santo Tomás)、マウレ・カトリック大学(Universidad Católica del Maule)、チリ大学栄養食品技術研究所(INTA, Universidad de Chile)の研究者が参加しています。
どのように調べたのか
対象となったのは、2型糖尿病と高血圧をあわせ持つ成人35人(平均年齢50.7歳、77%が女性)です。参加者は12週間にわたるランダム化二重盲検並行群間試験に組み入れられ、今回の報告はその試験データを使った二次解析にあたります。
参加者は2つのグループに分けられました。1つは可溶性食物繊維であるオーツ麦由来のβ-グルカンを1日5g摂取するSDF群(19人)、もう1つは不溶性食物繊維である微結晶セルロースを摂取するIDF群(16人)です。研究チームは血圧の変化に加え、qPCR(定量PCR)という手法で腸内細菌の構成を調べ、あわせて炎症に関わる血清中のバイオマーカーも測定しました。
わかったこと
12週間後、両グループとも収縮期血圧(いわゆる「上」の血圧)が同程度に低下していました。SDF群では平均11.2mmHg、IDF群では平均11.6mmHgの低下が見られ、2つのグループの間に統計的な差はありませんでした。つまり、可溶性・不溶性いずれの食物繊維でも、血圧を下げる方向の変化が確認されたことになります。
一方で、腸内細菌の変化との関連を探索したところ、SDF群に限って興味深い相関が見られました。腸内細菌の一群であるFirmicutesの増加は、拡張期血圧(「下」の血圧)の変化と強い正の相関(相関係数r=0.90)を示しました。また同じくSDF群では、Bifidobacterium属の増加も拡張期血圧の変化と強い正の相関(r=0.90)を示していました。これらの結果は、可溶性食物繊維が腸内細菌の変化を介して血圧に関わっている可能性を示唆するものとして位置づけられています。
この研究を読むうえで気をつけたいこと
この研究は探索的な解析として行われたものであり、著者らは今回得られた腸内細菌と血圧の関連について、プラセボ対照試験による確認が必要だと述べています。対象者は35人と限られた人数であり、糖尿病と高血圧を併せ持つ特定の患者集団を対象にしている点にも留意が必要です。食物繊維の摂取がそのまま血圧改善につながると断定できる段階ではなく、あくまで一つの研究として今後の追試が待たれる結果だといえます。
まとめ
今回の研究では、可溶性・不溶性いずれの食物繊維サプリメントを摂取した場合でも、2型糖尿病と高血圧を併せ持つ患者で収縮期血圧の低下が見られたことが報告されました。さらに可溶性食物繊維を摂取したグループでは、腸内細菌の変化と拡張期血圧の変化との間に相関があることが示唆されています。ただし著者ら自身が述べている通り、これは探索的な解析結果であり、プラセボ対照試験による今後の検証が必要とされています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):José Luis Pino, Bastián Parada-Flores, Miguel Arredondo, et al. Dietary Fiber Supplementation Reduces Systolic Blood Pressure in High-Risk Patients with Type 2 Diabetes and Hypertension: A Secondary Analysis of a Randomized Trial. ニュートリエンツ (2026). DOI: 10.3390/nu18182945. 原著ライセンス: cc-by.