著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
シソは香味野菜として親しまれていますが、その種を包む「種子皮」は食品加工の副産物として廃棄されることが多い部位です。この種子皮には水に溶ける食物繊維(水溶性食物繊維、SDF)が含まれていますが、そのままでは含有量が少なく、加工食品への応用は限られていました。今回紹介する研究では、超高圧処理と酵素(セルラーゼ)処理を組み合わせることで、この水溶性食物繊維をどれだけ効率的に取り出せるか、またその繊維を使うことでパン生地の食感がどう変わるかを調べています。
研究チームは、シソ種子皮から得た水溶性食物繊維について、①未処理のもの、②超高圧(UHP)処理のみを行ったもの、③セルラーゼ処理のみを行ったもの、④超高圧処理の後にセルラーゼ処理を続けて行ったもの(逐次処理)、という4種類を比較しました。
超高圧と酵素を組み合わせると何が起きたか
まず含有量の変化です。未処理では水溶性食物繊維の割合は3.71%にとどまっていましたが、超高圧処理とセルラーゼ処理を順番に行った逐次処理では8.63%まで増加したと報告されています。逆に不溶性食物繊維の割合は55.74%から50.37%へと減少しており、加工によって不溶性の繊維の一部が水溶性の形に変化したことがうかがえます。
構造面の分析では、逐次処理を経た繊維は分子量や粒子のサイズが小さくなり、電子顕微鏡による観察では多孔質(細かい穴が多く空いた)構造になっていたことが確認されています。また繊維を構成する糖の種類についても変化があり、アラビノースや酸性の単糖の割合が増加したとされています。これらの構造変化に伴って、水を抱え込む力(保水性)や水を吸って膨らむ力(膨潤性)が、4つの処理条件の中で最も高くなったと報告されています。分子が小さくなり表面に穴が増えたことで、水と接する面積が広がったためと考えられます。
パン生地に加えるとどう変わるか
次に研究チームは、この逐次処理で得られた水溶性食物繊維を、小麦粉とコーン粉を混ぜた生地に6%の割合で加える実験を行いました。食感を測定したところ、生地の弾性・弾力性を示す数値が0.59から0.72へ、まとまりやすさを示す凝集性が0.64から0.76へ、それぞれ向上したと報告されています。
生地の中のタンパク質の構造にも変化が見られました。タンパク質が規則正しく折りたたまれた状態を示すα-ヘリックスとβ-シートという構造の合計の割合が、53.93%から66.82%に増加したとされています。さらに、核磁気共鳴(NMR)という手法で生地の中の水の動きやすさを調べたところ、水分子が比較的自由に動ける状態を示す緩和時間(T23)が297.86ミリ秒から81.23ミリ秒へと大きく短縮したことが確認されています。これは、生地の中で水がより強く保持され、動きにくい状態に変わったことを意味していると考えられます。
この研究の位置づけ
この研究は、シソの種子皮という副産物から得られる水溶性食物繊維を、超高圧処理と酵素処理を組み合わせることで増やし、その繊維を使った生地の食感やタンパク質構造、水分保持の状態がどう変わるかを実験室レベルで確かめたものです。要旨には研究の限界について具体的な記載がなく、今回の結果がどのような条件下で得られたものか、実際の製パン工程やより幅広い食品への応用可能性については、この一つの研究だけでは判断できません。あくまで一つの研究成果であり、今後の追加検証が期待される段階と捉えるのが妥当です。
本研究はChangchun University(中国)食品科学工学系の研究者らによって行われたもので、日本の研究機関や食品・食習慣との関わりについては、提供された情報の中には記載がありません。
シソの種子皮のような食品副産物を有効活用する技術は、資源の有効利用という観点から関心を集めている分野です。今回の研究は、加工方法の工夫によって食物繊維の性質を変化させ、食品への応用可能性を探る基礎的な知見を示したものといえます。
原著論文の著者・所属:Fengchen Zhou(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)、Bo Wang(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)、Kai Liu(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)、Yue Yang(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)、Qingbo Wang(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)、Sheng Li(College of Food Science and Engineering, Changchun University, Changchun 130022, China)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Fengchen Zhou, Bo Wang, Kai Liu, et al. Effects of Ultra-High Pressure–Cellulase Pretreatment on the Structural Characteristics and Functional Properties of Soluble Dietary Fiber from Perilla Seed Hulls and Its Application in Wheat–Corn Composite Dough. フーズ (2026). DOI: 10.3390/foods15183180. 原著ライセンス: cc-by.