この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Animals

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

キツネメバル(学名 Sebastes schlegelii、中国では「黒魚」とも呼ばれる)は、岩礁域に生息する冷温帯性の底生魚で、成長が比較的速く、味も良いため経済的価値の高い魚種です。中国・遼寧省沿岸の黄海北部には島が多く、この魚にとって好適な生息場所となっています。しかし著者らは、近年の過剰漁獲や海洋汚染によって資源密度が低下し、漁獲される個体の小型化・若齢化が進んでいると述べています。

論文によると、この魚については養殖の最適化や環境変化と分布の関係を扱った研究が多く、資源量そのものを評価した研究は少なく、遼寧省沖の黄海北部を対象とした資源動態の分析はこれまで報告されていませんでした。そこで研究チームは、現地調査のデータを使ってこの海域のキツネメバルの成長特性と個体群動態を評価し、資源管理に役立てることを目的としました。

何をどう調べたか

調査は2019年4月、2020年9月、2021年3月、2022年4月と9月の計5回行われました。キツネメバルが沿岸の岩礁域を好むことから、遼寧省沿岸の5つの島嶼周辺(三山島、王家島、獐子島、大長山島、塔河湾)に調査地点を設け、目合い25ミリの底カゴ網で採集しました。集めた個体については体長、体重、性別、生殖腺の成熟度を測定しています。

解析では、体長と体重の関係を表す式を求めたうえで、フォン・ベルタランフィ成長式(魚が年齢とともにどこまで大きくなるかを表す標準的な数式)を当てはめ、体長組成の頻度データから成長のパラメータを推定しました。さらに死亡係数や漁獲の強さを示す「開発率」を算出し、加入(新しく資源に入る若い個体)1尾あたりの産卵数を表すEPRと、産卵親魚の重量を表すSBRという二つの指標を用いて、禁漁期の設定の違いが繁殖力にどう影響するかを試算しました。なお共分散分析では雌雄で体長・体重の組成に有意な差がなかったため、雌雄をまとめて解析しています。

報告された主な結果

採集された個体の体長は41〜385ミリ(平均140.41ミリ)、体重は1.4〜550グラム(平均112.92グラム)で、体長81〜120ミリの階級が全体の31.51%を占めて最も多かったと報告されています。著者らは、この平均体長が既報の成熟開始体長212.5ミリを大きく下回っており、多くの個体が繁殖可能になる前に漁獲されていることを示すと指摘しています。

成長式の推定では、理論上到達しうる最大体長が407.6ミリ、成長係数Kが年あたり0.21と算出され、体重の増加速度が最大となる「変曲点」の年齢は4.397歳(体長266.57ミリ、体重503.1グラム)と見積もられました。漁獲物の平均値はこの変曲点をいずれも下回っています。また、現在の漁獲開始体長は172.33ミリで、モデル上で漁獲量が最大になる体長240.48ミリを大きく下回っていました。

資源量の推定値は13,141.35トンでした。開発率は0.6858で、最大持続生産量に対応する値(0.343)や最適漁獲に対応する値(0.604)を上回りますが、最大漁獲量に対応する値(0.706)は下回っており、著者らは現時点では乱獲状態にはないものの、適切な管理が遅れれば過剰利用に陥りかねないとしています。

禁漁期の試算では、現行の5〜8月の措置(戦略1)のもとでEPRは未漁獲状態の44.23%、SBRは35.07%にとどまりました。産卵期と完全に重なる3〜6月(戦略3)ではEPRが最大となり、4〜6月(戦略4)はその中間の結果でした。著者らは保全と漁業者の生計の両面を考慮すると、4〜6月の禁漁が比較的均衡のとれた選択肢になりうると述べています。

論文自身が挙げる限界として、禁漁期のため一部の月の標本が欠けていること、底カゴ網による採集が特定の大きさの個体に偏りうること、調査地点数と空間的な広がりが限られていることが記されています。

この研究が示すこと

この研究は、遼寧省沖の黄海北部という、これまで資源評価の報告がなかった海域について、キツネメバルの成長の目安と資源の状態を数値として示したものです。漁獲される個体が成熟前・成長のピーク前に偏っているという著者らの指摘は、漁獲開始サイズや禁漁期の設定を、その魚の生活史のどの段階に合わせるかという問題として資源管理を捉え直す材料になります。

著者:Yikai Lan(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Zengqiang Yin(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Lin Zhang(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Quan Yu(College of Fisheries and Life Science, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Jiahang Wei(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Fan Du(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Lei Chen(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Jun Yang(College of Marine Science and Environment, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Tao Tian(College of Fisheries and Life Science, Dalian Ocean University, Dalian 116023, China)、Hongmei Li(Shanghai Society of Oceanology and Limnology, East China Sea Ecology Center, Ministry of Natural Resources, Shanghai 200062, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yikai Lan, Zengqiang Yin, Lin Zhang, et al. Growth Characteristics and Stock Assessment of Sebastes schlegelii in the Northern Yellow Sea off Liaoning Province, China. Animals 2026-09-08. DOI: 10.3390/ani16182822. 原著ライセンス:CC BY.