この研究は、メキシコの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Ibero Ciencias - Revista Científica y Académica - ISSN 3072-7197
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
超加工食品とは、工場での加工度が高く、さまざまな添加物を含む食品を指す分類の呼び名です。スナック菓子、加糖飲料、ソーセージなどの加工肉、揚げ物などがこれにあたります。著者らは、こうした食品の摂取が世界的に急増しており、とくに中南米を含む低・中所得国で顕著だと述べています。論文によれば、メキシコは一人あたり年間212キログラムを摂取し、中南米で1位、世界で4位に位置します。
これまでの研究の多くは栄養や代謝への影響に注目してきましたが、著者らは、認知の発達や心の健康、社会性といった、あまり調べられてこなかった側面にも影響が及ぶ可能性が指摘されていると紹介しています。研究の舞台となったカンペチェ州では、2016年から2022年にかけて超加工食品からのカロリー摂取が25.7%増え、これらの製品への一人あたり支出も28.1%増加したと報告されています。
そこで研究チームは、カンペチェ州の小学生を対象に、超加工食品の摂取と、感情をうまく調整する力(感情調整)や、友だちとの関わり方(社会化)との関連を分析することを目的としました。
どのように調べたか
研究は量的アプローチによる観察研究で、介入を行わず、ある一時点の状態を測って変数どうしの関連を見る横断的・相関的な設計です。調査は2025〜2026学年度に、サン・フランシスコ・デ・カンペチェ市の公立小学校で行われました。対象は6〜12歳の児童で、保護者が同意書に署名し、子ども本人も参加に同意した者が含まれています。神経疾患や精神疾患の診断がある子ども、食行動や情緒に影響しうる慢性疾患がある子ども、回答に不備がある質問票は除外されました。
超加工食品の摂取量は、加工度によって食品を分類するNOVA分類にもとづく食物摂取頻度質問票で評価されました。感情調整については、感情のコントロールの難しさ、衝動性、注意、欲求不満への耐性を把握できる、子ども向けに妥当性が確認された尺度が用いられました。社会化は、対人関係の技能や学校での人付き合い、対立の解決、友だちとの関係を評価する構造化質問票で測定されています。あわせて年齢、性別、学年、身体活動、睡眠時間、家庭の特徴といった情報も集められました。
分析にはExcelとIBM SPSS Statistics(バージョン25)が使われ、データの分布に応じてピアソンまたはスピアマンの相関係数が用いられました。相関係数は2つの値がどれだけ一緒に増減するかを示す指標で、1に近いほど関連が強いことを意味します。研究はヘルシンキ宣言の倫理原則にもとづいて実施されました。
報告された主な結果
分析対象となったのは71名です。性別の分布はおおむね均等で、男子が49.3%、女子が46.5%と報告されています。食事の場面については、49.3%が「両親と一緒」で、25.4%は祖父母やおじ・おばなど「その他の家族」と食事をしていました。
著者らは、超加工食品の摂取と評価したすべての心理的変数との間に、正の有意な関連が見られたと報告しています。食行動(CEERO)との関連が強く(r = 0.74、p = 0.000)、摂取が多いほど不適応的な食行動が多く見られました。感情調整の困難さ(DERS-C)も摂取の増加とともに高まり(r = 0.39、p = 0.000)、社会性・行動面(PSOC)では中程度の関連(r ≈ 0.34、p = 0.005)が認められました。心理情緒的リスク全体は強い相関を示しています(r = 0.74、p = 0.000)。
超加工食品の摂取量と感情調整の乱れを示す指標との関係を直接分析したところ、強い正の相関(r = 0.691)が得られました。研究チームは、このサンプルでは感情調整の問題のばらつきのおよそ47%が摂取量の違いで説明されると述べ、摂取が多いのに感情調整の乱れが小さい子どもはほとんど見られなかったとしています。
子どもの体重についての保護者の認識にも特徴が見られました。公的な統計ではカンペチェ州の学齢期の子どもの50%超が過体重または肥満とされている一方、この研究では71.8%の保護者が自分の子の体重を「正常」と考えていました。著者らはこれを、認識と実態のずれとして指摘しています。また、67.6%の子どもに何らかの程度の不注意が認められたと報告されています。
著者ら自身も限界を挙げています。横断的な設計であること、保護者の自己申告に依存しており偏りが生じうることです。得られたのはあくまで関連であり、因果関係を示すものではありません。
この研究が示すこと
この研究は、超加工食品をよく食べる子どもほど、感情の扱いにくさ、衝動性、注意の困難、欲求不満への耐えにくさが目立ち、友だちとのいさかいや良好な関係を築きにくさといった対人面の困難も見られたことを報告しています。著者らは、子どもの食事は栄養だけの問題ではなく、情緒や学校での人間関係ともつながる問題として捉えうると論じています。
同時に、保護者の多くが我が子の体重を問題視していなかったという結果は、家庭で何が課題と認識されているかという視点の重要性を浮かび上がらせます。研究チームは、食品の栄養価だけでなく、心の健康や心理社会的な発達への影響も含めて扱う、教育と栄養の両面からの取り組みが必要だと結論づけています。
著者:Baldemar Aké-Canché(Universidad Autónoma de Campeche)、Román Pérez-Balan(Universidad Autónoma de Campeche)、Eduardo J. Gutiérrez‐Alcántara(Universidad Autónoma de Campeche)、David Tirado Torres(Universidad Autónoma del estado de Hidalgo)、Lopez‐Gutierrez Tomas(Universidad Autónoma de Campeche)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Baldemar Aké-Canché, Román Pérez-Balan, Eduardo J. Gutiérrez‐Alcántara, et al. Asociación entre el Consumo de Alimentos Ultraprocesados y la Regulación Emocional en Escolares de Educación Primaria de Campeche, México. Ibero Ciencias - Revista Científica y Académica - ISSN 3072-7197 2026-09-11. DOI: 10.63371/ic.v5.n3.a1586. 原著ライセンス:CC BY.