この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとした研究か
動脈硬化は、血管の壁に脂質や炎症にかかわる細胞、線維成分がたまっていく状態で、心血管疾患の主な病理的な土台とされています。研究チームは、世界的に死因の上位を占める心血管疾患の予防のためには、生活のなかで変えられる危険因子、とりわけ食事のあり方を見きわめることが重要だと述べています。
注目したのは「超加工食品」です。これはNOVAという食品分類の枠組みで使われる区分で、工業的につくられた配合食品を指します。一般に五つ以上の原材料からなり、水素添加した油脂や加工でんぷん、分離タンパク質、見た目や風味を整えるための各種添加物など、家庭の調理ではあまり使われない成分を含むものが該当します。論文によれば、米国や英国では超加工食品が総摂取エネルギーの5〜6割を占めるとの報告があります。
著者らは、これまでの研究の多くが心血管疾患の複合的な発症を対象としてきた一方、診断記録上の動脈硬化(国際疾病分類ICD-10のI70)そのものを結果として追った証拠は限られている、と課題を整理しています。そのうえで、超加工食品の摂取と動脈硬化の新規発症との関連を定量的に調べること、その関連が人によって異なるかを探ること、さらに背景にありうる分子レベルの特徴を見つけることを目的に掲げました。
どのように調べたか
用いたのは、英国の大規模な長期追跡研究であるUK Biobankのデータです。イングランド、スコットランド、ウェールズに暮らす参加者のうち、追跡開始の時点で動脈硬化がなく、必要なデータがそろっていた13万3,797人が分析対象になりました。
食事は「Oxford WebQ」というウェブ上の24時間思い出し法の調査票で把握されました。前日に食べた約200品目の種類と量を記録する方式で、多くの参加者が3〜4か月の間隔をあけて1〜4回回答しています。研究チームは各品目をNOVA分類にあてはめ、超加工食品の摂取量を「1日あたりの食べる回数(サービング)」と「1日あたりのグラム数」の二通りで算出しました。複数回の回答がある人はその平均をとり、最後の食事調査の日を追跡開始日としています。動脈硬化の発症は、入院記録と死亡登録に残る診断コードから確認しました。
解析にはCox比例ハザードモデルという、発症のしやすさを群間で比べる手法が使われ、摂取量の少ない順に四つのグループ(四分位)に分けて、最も少ない群を基準に比較しています。年齢、性別、教育、地域の社会経済的指標、喫煙、飲酒、身体活動といった要因に加え、BMI、炎症の指標であるCRP、医師による糖尿病の診断などを段階的に調整したモデルが組まれました。さらに一部の参加者では、核磁気共鳴(NMR)による代謝物の測定と、Olinkという技術による血中タンパク質の測定のデータを使い、多数の候補から関連の強いものを絞り込むLASSOという統計手法で、超加工食品の摂取と結びつく分子の組み合わせを探索しています。
報告された主な結果
追跡期間の中央値は10.93年で、この間に654人が新たに動脈硬化と診断されました。多変量調整後、1日の食べる回数が最も多い群は、最も少ない群と比べて発症リスクが高く、ハザード比は1.40(95%信頼区間1.12〜1.75)でした。グラム数で見た場合も同様の向きで、最も多い群のリスクは最も少ない群より29%高いと報告されています(ハザード比1.29、95%信頼区間1.03〜1.60)。摂取量を連続的な値として扱った制限付き三次スプラインの解析でも、摂取が多いほどリスクが高いという関係が示されました。
ただし著者らは、さらに多くの要因(食事の質のスコア、総エネルギー摂取量、収縮期血圧やLDLコレステロール、脂質低下薬や降圧薬の使用など)を加えて調整していくと関連は弱まり、多くの場合で信頼区間が1をまたぐようになったことも記しています。年齢やBMI、喫煙、身体活動などで分けた解析では関連の向きはおおむね一貫しており、明確な効果の修飾は認められませんでした。
分子レベルの探索では、超加工食品の摂取と結びつく特徴として30種類の代謝物と25種類のタンパク質が選び出されました。代謝物ではリポタンパク質に関する指標が4割を占め、脂肪酸や解糖・エネルギー代謝に関わる物質が続きます。タンパク質では免疫・炎症系と内分泌・成長に関わるものがそれぞれ約3割を占めました。これらの一部は、多変量調整と多重検定の補正を経てもなお動脈硬化の発症との関連が残ったと報告されています。著者らは、こうした所見が脂質代謝の乱れ、エネルギー代謝の変化、全身性の炎症といった複数の経路にまたがることを示し、単一の経路の変化ではないと述べる一方、LASSOで得られた重みは予測への寄与であって因果的な効果ではないと明確に注意を促しています。
この研究が示すもの
この研究は観察に基づくもので、超加工食品が動脈硬化を引き起こすことを証明したわけではありません。著者ら自身も、用いた診断記録上の指標は臨床的に認識された病気をとらえるものであり、症状として表れる前の血管の変化や動脈硬化という現象の全体を測るものではないと述べています。分子レベルの所見についても、独立した検証が必要な候補として位置づけられています。
それでも、13万人規模の集団を約11年にわたって追った結果として、超加工食品の摂取が多い人ほど動脈硬化と診断されやすいという関連が示されたことの意味は小さくありません。著者らは、超加工食品が欧米の食生活で摂取エネルギーの6割を超えることも珍しくない現状を踏まえると、一人ひとりのリスクの上昇が控えめであっても、集団全体で見れば無視できない規模になりうると指摘しています。加工の度合いが低い食品を重視するという食事の考え方を支える証拠のひとつとして、この研究は位置づけられています。
著者:Yixin Zhao(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)、Yixin Zhao(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)、Yuguang Li(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)、Xiangliang Liu(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)、Yuguang Zhao(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)、Yuguang Zhao(Cancer Center, The First Hospital of Jilin University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yixin Zhao, Yixin Zhao, Yuguang Li, et al. Ultra-processed food consumption and atherosclerosis risk: a prospective cohort study of UK Biobank. Frontiers in Nutrition 2026-09-10. DOI: 10.3389/fnut.2026.1925613. 原著ライセンス:CC BY.