「超加工食品(UPF)」という言葉を耳にする機会が増えています。スナック菓子や清涼飲料、即席麺のように、工業的な加工を経て作られる食品群を指す分類です。健康面での議論が多いUPFですが、今回紹介する研究はやや異なる角度からこのテーマに切り込んでいます。着目したのは「家庭で出る食品廃棄」との関係です。加工度の高い食品は保存性が高く手軽に使い切れそうな一方で、大容量パッケージや嗜好性の高さから食べ残しや廃棄につながるのではないか、という素朴な疑問を検証しようとした研究です。
研究チームはイタリアの成人200人を対象に、横断研究という手法でこの関係を調べました。横断研究とは、ある一時点でのデータを集めて要因同士の関連を見る方法で、原因と結果の前後関係までは特定できない点に注意が必要です。参加者にはNOVA分類に基づく食物摂取頻度質問票に回答してもらい、日々の食事に占めるUPFの割合を推定しました。同時に、3日間にわたって家庭で出た食品廃棄を実際に秤で量って記録する「秤量式食品廃棄日誌」をつけてもらい、廃棄の有無と量を客観的に把握しています。
研究でわかったこと
集計の結果、参加者が摂取した食品全体のうち重量ベースで21.2%をUPFが占めていました。また観察期間の3日間で、参加者の44.5%が何らかの食品廃棄を報告しています。ここまでは全体像の把握ですが、研究の核心はここからです。
まず、食品を廃棄したグループと廃棄しなかったグループを比べても、UPFの摂取量に差は見られませんでした。さらにUPF摂取量を四分位(摂取量の少ない順に4つのグループに分けたもの)で比較しても、廃棄の有無や廃棄量に違いは確認されませんでした。年齢や世帯構成など他の要因の影響を統計的に調整した多変量解析でも同様で、UPF摂取と食品廃棄の有無・廃棄量との間に、はっきりした関連は認められなかったとされています。
一方で、食品廃棄そのものに関連する要因は別のところに見つかっています。家庭の食費支出が高い世帯ほど食品廃棄が起きるオッズ(起こりやすさ)が高く、また年齢が高い人や学歴が高い人ほど廃棄量が多い傾向が示されました。つまりこの研究では、家庭内の食品廃棄を左右していたのは、習慣的なUPF摂取の多寡よりも、支出額や年齢・学歴といった社会人口統計学的・世帯的な特性だったとまとめられています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究はイタイタリアの成人200人を対象とした一時点の横断研究であり、UPFと食品廃棄の間に因果関係がないと証明したわけではありません。UPF摂取の測定は質問票による自己申告に基づいており、実際の廃棄量は3日間という限られた期間の記録から推定されています。対象者数や国・文化的背景も限定されているため、この結果がそのまま他の地域や食文化にも当てはまるとは言い切れません。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読む必要があります。
まとめ
この研究では、超加工食品をよく食べる人ほど食品を捨てやすい、という単純な図式は支持されませんでした。むしろ食品廃棄の背景には、家計の食費支出や年齢、学歴といった世帯・個人の特性が関わっている可能性が示唆されています。食品ロス削減を考えるうえで、加工度だけに注目するのではなく、購買行動や世帯の生活状況など、より広い視点から検討する必要があることを示す一例といえそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Sofia Lotti, Daniela Martini, Donato Angelino, et al. Ultra-processed food consumption is not associated with household food waste in Italian adults: a cross-sectional study. フィグシェア (2026). DOI: 10.6084/m9.figshare.33471309.v1. 原著ライセンス: cc-by.