著者の所属・活動拠点の国は、フランスです。

掲載誌:Horticulture Research

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

植物には、動物のような獲得免疫の仕組みがありません。その代わりに、病原体を見分ける遺伝子の多様性を集団として保つことで、さまざまな病気に対抗しています。中心的な役割を担うのが「NLR遺伝子」と呼ばれる遺伝子群です。NLRは、病原体が植物の細胞内に送り込む物質を感知し、防御反応を引き起こします。NLR遺伝子は染色体上でまとまって並ぶことが多く、その周辺には免疫に関わる別の遺伝子も含まれることがあります。

研究チームによると、NLRが多様化する主な仕組みはある程度わかってきました。一方で、同じ遺伝子にどれだけの型(対立遺伝子)があるのか、またNLRがどのようなゲノム上の環境の中で進化しているのかは、十分に調べられていませんでした。このことが、病害抵抗性に関わる遺伝子の型を見つける妨げになっていました。また、形質に関わる遺伝子の位置を探す一般的な手法であるゲノムワイド関連解析(GWAS)は、通常1つの基準ゲノムに並べた1塩基の違い(SNP)を使います。そのため、遺伝子の有無やコピー数の違い、大きな構造の違いを見落としやすいという課題があります。

そこで著者らは、メロンの多数の系統でNLR遺伝子を含む領域全体を詳しく解読しました。そのうえで、NLRの多様性を明らかにし、得られた情報を病害抵抗性遺伝子の探索に生かすことを目指しました。

何を調べたか

研究チームは、地理的な起源や植物学的なグループが異なるメロン143系統を対象にしました。用いたのは、長いDNA断片を読み取るナノポア・シーケンサーの「アダプティブ・サンプリング」という技術です。これは、狙った領域だけを選んで深く読む方法で、メロンでNLRを含む21のゲノム領域をすべて対象にしました。著者らは、NLR領域を調べた系統数として、どの生物種でもこれまでで最大の規模だとしています。

読み取ったデータからは、各系統の領域が高い精度で組み立てられ、多くは1本の連続した配列として再構成されました。さらに著者らは、143系統分の21領域の違いを「パンNLRomeグラフ」にまとめました。これは、系統ごとの配列の分岐や合流を網目状の構造として一つに表現したものです。

このグラフを利用して、2種類の新しいGWASの手順も提案しました。1つはグラフ上の各部分(ノード)の違いを使う方法です。もう1つは、基準ゲノムを使わず、短い配列断片(k-mer)の有無を直接比べる方法です。これらを従来のSNPによるGWASと並べて、フザリウム萎凋病の2つのレース(race 1、race 2)と、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)による急激なしおれ・壊死(flaccid necrosis)という3種類の病害反応のデータで検証しました。

主な結果

21のNLR領域は、どのメロンのゲノムでもほぼ同じ位置にありました。しかし、領域の大きさ、含まれるNLRの数、配列の複雑さは系統によって大きく異なっていました。143系統全体で13,330個のNLRが見つかり、1系統あたりのNLR数は77〜104個でした。この差は主に、遺伝子のまとまりが系統ごとに増えたり減ったりしていることによるものでした。数十〜数百キロ塩基対に及ぶ逆位、欠失、挿入といった大きな構造の違いも観察されました。

遺伝子の型の多様性も、予想を上回るものでした。似た遺伝子をグループ(オーソグループ)にまとめる従来の数え方では、100系統未満で多様性の95%に達し、ほぼ出尽くしたように見えました。ところが、個々の型を区別して数えると、1つのグループに数百もの型が含まれる場合がありました。たとえば、アブラムシ抵抗性に関わるVat遺伝子の仲間では、167通りの型が見つかりました。統計的な推定(Chao2推定量)では、今回の143系統を調べても、メロンのNLRの型のほぼ半数がまだ見つかっていないと示されました。著者らは、グループ単位の解析では型の違いが見えにくくなる「視野の狭さ」が生じると指摘しています。植物学的グループでは野生・半野生のメロンを含むagrestisグループ、地域ではメロンの栽培化の中心地にあたるインドや東アフリカの系統で、NLRの多様性が特に高くなっていました。

GWASでは、フザリウム萎凋病 race 1 と race 2 について、これまでに機能が確かめられている抵抗性遺伝子Fom-2とFom-1の位置が正確に検出されました。特にk-mer法とグラフ法の上位の信号は、抵抗性品種が持つFom-2の配列そのものを直接捉えていました。Fom-2には抵抗性と結びつく型が4つ、Fom-1には7つ見つかりました。著者らによると、多様性の高いグループや地域ほど抵抗性の型が多く現れるわけではありませんでした。実際、Fom-1とFom-2の抵抗性の型の多くは、極東に由来するマクワウリ(makuwa)のグループに属していました。

ZYMVによる壊死反応については、3つの手法がそろって5番染色体の同じ領域(Chr05.3)に強い信号を示しました。最も強い信号は、配列比較(BLAST)によって「RPV1-like」と分類されたNLR遺伝子と重なっていました。この遺伝子には121系統の中で37の型があり、そのうち5つが壊死反応と結びついていました。同じ領域では、「RUN1-like」と分類された遺伝子と重なる信号も見つかっています。一方、race 1で同じ領域に現れた信号は、NLRではない2つの候補遺伝子を示していました。ただしこの信号は、Fom-2の目印を考慮すると有意でなくなりました。著者らは、両者が同じ系統で一緒に見られる傾向が強いことから、ともに選抜されてきた可能性を示しています。

研究が示すこと

著者らによると、ウリ科植物が持つNLR遺伝子のレパートリーは比較的小さいとされます。著者らは、今回明らかになった豊富な型の多様性が、それでも強い病原体の圧力に耐えられる理由を説明しうると考えています。また、NLR領域をまるごと高精度に解読し、その多様性をGWASに組み込むことで、1つの基準ゲノムに頼る従来の方法では捉えにくかった抵抗性遺伝子とその型を特定できることが示されました。

原著論文の著者・所属:Javier Belinchon-Moreno(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,; INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)、Aurélie Berard(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,)、Aurélie Canaguier(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,)、Isabelle Le-Clainche(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,)、Pascale Mistral(INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)、Karine Leyre(INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)、Vincent Rittener-Ruff(INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)、Jacques Lagnel(INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)、Damien Hinsinger(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,)、Patricia Faivre-Rampant(Centre INRAE Île-de-France Versailles-Saclay, Université Paris-Saclay , EPGV, F-91057 Evry ,)、Nathalie Boissot(INRAE, Génétique et Amélioration des Fruits et Légumes, 84143 Montfavet ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Javier Belinchon-Moreno, Aurélie Berard, Aurélie Canaguier, et al. Pan-NLRome profiling of NLR neighborhoods reveals extensive diversity in melon and boosts GWAS-based resistance gene discovery. Horticulture Research 2026-09-25. DOI: 10.1093/hr/uhag399. 原著ライセンス:CC BY.