この研究は、パキスタンの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Medicinal Natural Products
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態、あるいは「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールが少ない状態は高脂血症(脂質異常)と呼ばれ、心臓や血管の病気の大きな危険因子とされています。研究チームは、植物性の食品を使った食事面での対策に注目しました。
題材に選ばれたのは、抗酸化作用や抗炎症作用をもつ成分を含むとされるビーツ(ビートルート)とスイートバジルです。著者らによると、どちらも普段の食事ではあまり食べられておらず、水分が多く傷みやすいうえ、季節によって手に入りにくいという課題もあります。そこで研究チームは、果物や野菜のピューレを薄く伸ばして乾燥させる伝統的な食品「ペスティル」(フルーツレザーとも呼ばれる、薄いシート状の乾燥食品)に加工しました。そのうえで、成分を調べ、脂質異常を起こさせたラットでの効果を確かめています。
試作したペスティルの成分と食べやすさ
研究チームは、ビーツのピューレの一部を乾燥スイートバジルの葉の粉末に置き換え、粉末の割合を0%、5%、10%、15%、20%とした5種類のペスティルを作りました。
論文によると、バジル粉末の割合が増えるほど、たんぱく質、食物繊維、灰分(ミネラル分の目安)が増え、水分と脂肪は減りました。最も多い20%配合では、バジルなしのものと比べて、たんぱく質が約1.75倍、食物繊維が約1.32倍、灰分が約2.51倍になったと報告されています。植物に含まれるフェノール化合物(ポリフェノールなどを含む成分のグループ)の総量やフラボノイドの量、そして抗酸化活性も、配合量に応じて高まりました。
一方、20人の評価者による官能評価(見た目や味、食感などを点数で評価する試験)では、バジルが多いほど苦みが出て食感も硬くなり、評価が下がる傾向がみられました。研究チームは、栄養面と食べやすさの両方を考慮して、バジル粉末5%のペスティルを最適な配合と判断し、動物試験に用いました。
ラットでの試験結果
試験には20匹のラットが使われ、5匹ずつ4つのグループに分けられました。3つのグループには、高脂肪の餌を15日間与えて脂質異常の状態にしました。そのうえで、普通の餌だけを与えるグループと、体重1kgあたり1日100mgまたは150mgのペスティルを含む餌を与えるグループに分け、30日間観察しました。脂質異常を起こしていない普通の餌のグループも比較のために設けられています。
論文によると、ペスティルを与えた2つのグループでは、30日間でHDLコレステロールが増え、総コレステロール、LDLコレステロール(いわゆる悪玉)、中性脂肪が減りました。特に150mgのグループでは、試験開始時から30日目にかけて、HDLが30から34.6mg/dLへ増え、総コレステロールは221.6から206.4mg/dLへ、LDLは164.8から156mg/dLへ、中性脂肪は165から154.8mg/dLへ下がったと報告されています。変化は15日目の時点でも小さいながらみられ、30日目にはよりはっきりしました。LDLや中性脂肪の低下は100mgのグループより150mgのグループで大きく、著者らはこれを量が多いほど効果が強まる傾向として示しています。
ペスティルを与えなかったグループについては、論文は次のように報告しています。脂質異常を起こしていないグループでは、15日目の時点で値の変化はごくわずかでした。また、30日間でこのグループと、脂質異常を起こして普通の餌だけを与えたグループの両方でLDLが上昇しました。さらに、脂質異常を起こして普通の餌だけを与えたグループでは、HDLが38.6から37.6mg/dLへ下がり、著者らはこれを非常に有意な低下と記述しています。
研究が示すこと
研究チームは、スイートバジルを加えたビーツのペスティルが、栄養成分や抗酸化性を高めるだけでなく、脂質異常のラットの血中脂質を好ましい方向へ変えたと結論づけています。保存が難しい野菜やハーブを、食べやすい乾燥食品に加工して活かす一つの試みといえます。
ただし、この結果はラットを対象とした試験によるもので、使われた動物の数は少なく、期間も30日間と短いものでした。著者ら自身も、今回の結果はあくまで予備的なものであり、さらなる検証が必要だと述べています。
著者:Iza Almas(National Institute of Food Science and Technology, University of Agriculture, Faisalabad 38000, Pakistan)、Izma Khalid(National Institute of Food Science and Technology, University of Agriculture, Faisalabad 38000, Pakistan)、Khadija Almas(Epidemiology and Public Health, University of Agriculture, Faisalabad 38000, Pakistan)、Hafiza Iqra Almas(Department of Botany, University of Agriculture, Faisalabad 38000, Pakistan)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Iza Almas, Izma Khalid, Khadija Almas, et al. Exploring the Therapeutic Effect of Beetroot-Sweet Basil Pestils on Hyperlipidemia. Journal of Medicinal Natural Products 2026-10-12. DOI: 10.53941/jmnp.2026.100019. 原著ライセンス:CC BY.