この研究は、イランの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Veterinary Medicine and Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

尿路や生殖器が大腸菌(Escherichia coli)に感染すると、男性では腎臓や生殖機能の不調につながることがあり、精子がつくられる過程や妊よう性が損なわれる場合があると研究チームは述べています。

こうした状況に対し、近年は細菌叢に働きかける手段として、生きた有用菌そのものを指す「プロバイオティクス」と、菌そのものではなく菌に由来する成分などを指す「ポストバイオティクス」が注目されています。著者らによれば、これらには菌株ごとに異なる免疫調節作用や抗酸化作用があるとされています。

そこで著者らは、ラクトバチルス属の3種(Lactobacillus helveticus、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus casei)を含むプロバイオティクスまたはポストバイオティクスを与えた場合に、大腸菌に感染させた雄ラットの腎臓・精巣の組織や精子の状態がどう変わるかを調べる動物実験を行いました。

調べ方

実験には体重200〜220グラムの雄のウィスターラット28匹が使われ、無作為に4つの群に分けられました。すなわち、何もしない対照群、大腸菌に感染させた群、感染させたうえでプロバイオティクスを与えた群、感染させたうえでポストバイオティクスを与えた群です。投与量はいずれも1ミリリットルあたり10の9乗CFU(菌の数を表す単位)とされています。

投与は細菌の接種を終えた最終日の直後に開始され、胃まで管を通して口から与える方法(強制経口投与)で、1日1回、35日間連続して続けられました。

評価項目は、生化学的な指標(尿素、クレアチニン、ナトリウム、カリウム)、組織の顕微鏡による観察、酸化を打ち消す力の総量を示す総抗酸化能(TAC)、炎症や細胞死に関わる遺伝子(IL-6、TNF-α、Bax、Bcl-2)の発現、そして精子の質です。統計解析には一元配置分散分析とテューキーの事後検定が用いられました。

報告された主な結果

著者らの報告によると、大腸菌に感染した群では腎臓と精巣の組織像が明らかに悪化し、炎症を促す遺伝子や細胞死(アポトーシス)を促す遺伝子の発現が上昇し、総抗酸化能は低下し、精子の状態も悪くなりました。

一方、プロバイオティクスまたはポストバイオティクスを与えた群では、こうした変化が和らいだと報告されています。具体的には、抗酸化能が回復し、細胞死を抑える側に働くBcl-2の発現が高まり、IL-6とTNF-αの水準が下がり、精子の生存性と形態が改善しました。組織の観察でも、腎臓と精巣の構造が部分的に回復していたことが確認されたとしています。

この研究が示すこと

著者らは、複数の菌株を組み合わせたプロバイオティクス・ポストバイオティクスが、感染によって引き起こされる酸化ストレス、細胞死、炎症から腎臓と精巣の組織を守る働きを示し、同時に精子の質を改善したと結論づけています。

これは動物実験で観察された結果であり、感染に伴う男性不妊や腎機能障害に対する補助的な手立てとしての可能性を示すものだと著者らは位置づけています。

著者:Saeid Sedghi(Department of Biology CT.C Islamic Azad University Tehran Iran)、Zahra Keshtmand(Department of Biology CT.C Islamic Azad University Tehran Iran)、Saba Hosseini(Department of Biology CT.C Islamic Azad University Tehran Iran)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Saeid Sedghi, Zahra Keshtmand, Saba Hosseini. Protective Effects of Lactobacillus ‐Derived Probiotics and Postbiotics on Renal and Reproductive Function in Escherichia coli –Infected Rats. Veterinary Medicine and Science 2026-09-29. DOI: 10.1002/vms3.71258. 原著ライセンス:CC BY.