掲載誌:Legume Research - An International Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ヒヨコマメは、タンパク質や必須アミノ酸を多く含む豆類として、世界の食生活で重要な位置を占めています。論文によると、ヒヨコマメは50か国以上で栽培され、生産量は乾燥インゲンマメ、乾燥エンドウに次いで食用豆類の第3位とされています。

同じヒヨコマメでも、系統(遺伝的に区別される品種や育成材料)によって種子の性質は異なります。こうした違いは、品質の良い品種を育てるための手がかりになります。ただし著者らは、調理に関わる性質、栄養成分、種子の貯蔵タンパク質の違いをまとめて調べた例は、多くのコレクションでまだ限られていると指摘しています。

そこで研究チームは、地元品種と海外から導入した系統について、調理に関わる性質、栄養成分、貯蔵タンパク質の型を調べ、栄養面で品質改良に役立ちそうな系統を見つけることを目的としました。

何をどのように調べたか

調査は2023年から2025年にかけて、アゼルバイジャンのバクー南東、カスピ海沿岸にある遺伝資源研究所の試験圃場で行われました。対象は51系統です。このうち2系統は同国の地元品種であるCemileとCemile 1で、残る49系統は国際乾燥地農業研究センター(ICARDA)から導入されたものです。

調理や加工に関わる性質として、研究チームは種子の吸水量、調理(煮える)までの時間、水分含量、100粒の重さを測りました。栄養面では、種子全体のタンパク質含量に加え、必須アミノ酸であるリシンとトリプトファンの含量を化学分析で求めました。必須アミノ酸とは、人の体内で十分に作れず、食事からとる必要があるアミノ酸のことです。

さらに、種子に蓄えられるタンパク質の主成分であるグロブリンを、電気泳動という方法で分析しました。電気泳動では、タンパク質をゲルの中で移動させ、移動のしやすさの違いによって帯(バンド)として分けます。研究チームはバンドの並び方を系統ごとに比べ、ゲルを上から4つの区域に分けて、区域ごとの型の多様さを指数で表しました。論文によると、ヒヨコマメの種子タンパク質の約55〜60%をグロブリンが占めます。

主な結果

系統間では、調理に関わる性質にも栄養成分にも明確な違いが見られました。100粒の重さは27.5gから43.9gまで幅がありました。最も重い5系統は40.5〜43.9gで、基準品種Cemileより4.5〜8.4g(12.5〜23.3%)重かったと報告されています。また、吸水量が多いほど調理時間が短いという強い関係が認められました。比較的好ましい性質を示した系統は、吸水量がおおむね14〜15mL、調理時間が29〜30分でした。ただし、複数の性質をまとめて順位づけする指標は使われていません。

タンパク質含量は21.3%から27.2%の範囲でした。著者らが目安とした25.6%以上の系統は9つあり、Cemile(24.0%)より平均値は高かったものの、統計的な検定ではCemileとの有意な差は認められませんでした。著者らは、これらの系統を「今後さらに評価すべき候補」として扱っています。

リシン含量が高い系統は12あり、その値はCemileのおよそ2倍でした。トリプトファンでは、11系統が乾燥重量100gあたり210〜250mgを示しました。なかでもFilip 08-65という系統は、調べた中で最も高いリシン含量(1294mg)と最も高いトリプトファン含量(250mg)をあわせ持つ唯一の系統でした。ただし、タンパク質含量は25.6%で、中程度でした。系統全体では、タンパク質とリシンの含量に有意な正の関係があり、トリプトファンとほかの成分との関係は弱いものでした。

著者らは、必須アミノ酸全体の組成やタンパク質の消化されやすさは調べていないため、国際的な基準に照らしたタンパク質としての十分さは判断できないとしています。

グロブリンの電気泳動では、系統間でバンドの型に大きな違い(多型)が見つかりました。型の多様さを示す指数は区域によって0.464から0.752まで差があり、著者らがβ領域と呼ぶ部分で最も高い値(0.752)となりました。バンドの型をもとに系統を分類すると4つのグループに分かれ、3つの系統はほかと異なる独自の型を示しました。大半の系統は1つの大きなグループにまとまりました。

この研究が示すこと

この研究は、同じ保存コレクションの中にも、種子の大きさ、調理のしやすさ、リシンやトリプトファンの含量、貯蔵タンパク質の型に幅広い違いがあることを示しました。栄養面で優れた値を示した系統や、独自のタンパク質の型を持つ系統は、品質改良の材料となりうる初期段階の候補として位置づけられています。

一方で著者らは、タンパク質の型の違いは生化学的な違いであり、遺伝的な違いを直接示すものではないと強調しています。そのうえで、DNAを用いた分析や、異なる環境での評価によって確かめる必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Shamsiyya Mammadova、Ulduza Gurbanova、Hamlet Sadiqov、Yegana Kalbiyeva、Metanet Babayeva、Aziza Huseynova

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Shamsiyya Mammadova, Ulduza Gurbanova, Hamlet Sadiqov, et al. Technological and Nutritional Quality Traits and Globulin Protein Polymorphism in Chickpea (Cicer arietinum L.) Germplasm. Legume Research - An International Journal 2026-09-18. DOI: 10.18805/lrf-970. 原著ライセンス:CC BY.