著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Shipin gongye ke-ji
ライセンス: CC BY-NC-ND 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
クズ(Pueraria lobata)の根やケツメイシ(Penthorum chinense)、ケンポナシ(Hovenia dulcis)は、いずれも薬食同源の素材として使われてきた植物です。ただし、こうした素材は独特の生臭さや渋みを持つことが多く、飲料などに加工する際には風味の改善が課題になります。中国・四川省農業科学院などの研究グループは、この3つの素材を組み合わせた配合製剤に対して、酵素処理と微生物発酵を組み合わせる加工を施し、機能性成分や抗酸化活性、香り成分がどのように変化するかを調べました。
酵素処理と発酵でどう加工したか
研究では、まずセルラーゼによる酵素分解を行い、続いて乳酸菌(Lactobacillus)、酢酸菌(Acetobacter)、酵母を組み合わせた微生物発酵を実施しました。加工の各段階でのサンプルを比較し、機能性成分の量や抗酸化活性、揮発性香気成分の構成を経時的に分析しています。中でも、酵素処理と発酵を両方行った群(論文中でM7Dと呼ばれる区分)が、他の条件と比べてどのような特徴を示すかに焦点が当てられました。
成分と抗酸化力に見られた変化
酵素処理によって、プエラリン(250.43μg/mL)やアフゼリン(44.34μg/mL)といった有効成分の含有量が有意に増加したことが報告されています。また、この過程でエピカテキンが新たに生成されたことも示されました。一方、発酵の進行に伴って、フラボスキリンAのような比較的大きな分子が分解される様子も観察されています。総フェノール量と総フラボノイド量については、一度減少したのちに再び増加するという、単純な増減では説明できない推移をたどったとされています。抗酸化力の指標では、酵素処理と発酵を組み合わせたM7D群が、鉄イオン還元能(76.00μg TE/mL)とDPPHラジカル消去能(IC50=0.2447mg/mL)の両方で他の条件を有意に上回ったと報告されています。ただし、ABTSラジカル消去能についてはM7D群がやや弱い結果(IC50=0.3022mg/mL)だったことも記されており、抗酸化力の指標によって結果に差があった点は留意が必要です。さらにM7D群は、α-グルコシダーゼ阻害活性(IC50=0.0898mg/mL)も維持していたとされています。
香りの変化と官能評価
揮発性成分の分析では、対照群と比べて発酵を行った群(論文中のS7DおよびM7D)でアルコール類(それぞれ299.23%、230.89%の増加)、アルデヒド類(同237.78%、207.02%の増加)、エステル類(同51.86%、46.29%の増加)が有意に増加したと報告されています。香りの中心となる成分としては、果実や花のような香りとされるβ-イオノン、花や蜂蜜のような香りとされるフェネチルアルコール、果実様の香りとされる酢酸イソアミルが挙げられており、これらが組み合わさることで香りの複雑さが増したと説明されています。官能評価では、酵素処理と発酵を組み合わせたM7D群が最も評価が高く、ハーブ由来の風味と発酵による適度な酸味のバランスが取れ、渋みが抑えられ、生薬的な香りと発酵香が調和していたとされています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、クズ・ケツメイシ・ケンポナシという特定の配合素材について、特定の酵素・微生物の組み合わせによる加工条件下で得られた結果であり、抗酸化活性やα-グルコシダーゼ阻害活性が確認されたからといって、ヒトでの健康効果が証明されたわけではありません。抗酸化力の指標間でも結果にばらつきが見られた点や、今回の条件が他の配合や加工条件にそのまま当てはまるとは限らない点にも注意が必要です。研究チームは、この成果を発酵飲料の開発に向けた理論的な裏付けとして位置づけています。
今回のデータは、特定の発酵条件下での成分変化や香気特性を示したものであり、今後さらなる研究による検証が必要な一つの知見として捉えるのが適切です。
原著論文の著者・所属:Qian LAI(Gulin County Bureau of Agriculture and Rural Affairs, Luzhou 646599, China)、Shiyan LIU(Gulin County Bureau of Agriculture and Rural Affairs, Luzhou 646599, China)、Zhen WANG(Gulin County Bureau of Agriculture and Rural Affairs, Luzhou 646599, China)、Zhuoya XIANG(Institute of Agro-products Processing Science and Technology (Institute of Food Nutrition and Health), Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610066, China)、Chen XIA(Institute of Agro-products Processing Science and Technology (Institute of Food Nutrition and Health), Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610066, China)、Jieqiong DENG(Industrial Corp Research Institute, Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610300, China)、Xiao YE(Industrial Corp Research Institute, Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610300, China)、Manyou YU(Institute of Agro-products Processing Science and Technology (Institute of Food Nutrition and Health), Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610066, China)、Lu GAN(Institute of Agro-products Processing Science and Technology (Institute of Food Nutrition and Health), Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610066, China)、Yu LI(Industrial Corp Research Institute, Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610300, China)、Yinghao YUAN(Institute of Agro-products Processing Science and Technology (Institute of Food Nutrition and Health), Sichuan Academy of Agricultural Sciences, Chengdu 610066, China)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Qian LAI, Shiyan LIU, Zhen WANG, et al. Effects of Microbial Fermentation on Functional Properties and Flavor Characteristics of a Penthorum chinense, Pueraria lobata and Hovenia dulcis Compound Formulation. 食品工業科技 (2026). DOI: 10.13386/j.issn1002-0306.2025060234.