著者の所属・活動拠点の国は、トルコです。
掲載誌:Turkish Journal of Pediatric Disease
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
乳児の栄養の与え方について、母親がどのような考えや態度を持っているかは、母乳育児の進み方に影響すると考えられています。態度を測る道具の一つに、国際的に広く使われている質問票「アイオワ乳児栄養態度尺度(IIFAS)」があり、トルコ語版も妥当性と信頼性が確認されています。
著者らによると、トルコでのこれまでのIIFAS研究は主に妊娠中や産後6か月までの時期を対象としており、生後6〜24か月の子どもを持つ母親の態度や、早く母乳をやめた理由はあまり調べられていませんでした。そこで研究チームは、この時期の健康な子どもを持つ母親を対象に、授乳に対する態度を測り、それが母親の学歴や就労状況などの背景、実際の母乳育児の状況とどう関連するかを調べました。
何をどのように調べたか
研究はイスタンブールの市立病院の小児外来で、2023年8月から10月にかけて行われました。対象は、正期産で生まれ慢性疾患のない生後6〜24か月の子どもを持つ母親305人です。ある一時点の状況を調べる横断研究で、対面の聞き取りにより、母親と子どもの背景、授乳の開始時期や母乳だけで育てた期間、粉ミルクを始めた理由などを尋ねました。
IIFASは17の項目に「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの5段階で答える質問票で、合計点は17〜85点です。点数が高いほど母乳育児に前向きな態度を示し、70〜85点は母乳育児に肯定的、49〜69点は中立的とされます。研究チームはこの合計点と、母親の背景や授乳の実践との関連を統計的に分析しました。
主な結果
IIFASの平均点は71.7点で、多くの母親が母乳育児に肯定的な態度を持っていたと報告されています。授乳の状況を見ると、出産後1時間以内に授乳を始めた母親は49.8%、4〜6か月間母乳だけで育てた母親は56.7%で、調査時点で母乳を続けていた母親は72.1%でした。粉ミルクを始めた理由として最も多かったのは「母乳が足りないと感じた」(53.5%)で、「子どもの体重の増えが不十分と感じた」(22.9%)が続きました。
母親の背景との関連では、大学以上の学歴を持つ母親は、それより低い学歴の母親よりもIIFASの点数が高い結果でした。また、仕事をしている母親は、仕事をしていない母親よりも点数が低い傾向がありました。複数の要因を同時に考慮した分析でも、学歴の高さと就労状況は点数との関連を保っていた一方、母親の年齢、世帯収入、子どもの数には関連が見られませんでした。ただし、この分析で説明できた点数のばらつきは全体の14%でした。
授乳の実践との関連では、点数が高い母親ほど母乳だけで育てた期間がやや長く、母乳を与えた期間全体も長い傾向がありました。反対に、出産から初めての授乳までの時間が長い母親ほど点数が低い傾向が見られました。ただし、これらの関連の強さは弱いものでした。
この研究が示すこと
著者らは、母乳育児に対する母親の態度が主に学歴と就労状況と関連しており、母乳だけで育てる期間とも関係している可能性があると結論づけています。一方で、この研究は一時点の観察にもとづくため、示されたのは関連であって因果関係ではないこと、統計的に意味のある関連の多くが弱いものであること、単一の施設で行われ、態度は自己申告で測られていることにも注意を促しています。
著者らは今回の結果を、検証すべき仮説を生み出す段階のものと位置づけています。教育の機会や、職場で授乳や搾乳を支える仕組みが実際に母乳育児を改善するかどうかは、まだ確かめられていない問いとして残されています。
原著論文の著者・所属:Aygül Nabaliyeva(Department of Pediatrics, Prof. Dr. Cemil Tascioglu City Hospital, University of Health Sciences, İstanbul, Türkiye)、Belen Ateş(Department of Pediatrics, Prof. Dr. Cemil Tascioglu City Hospital, University of Health Sciences, Istanbul, Türkiye)、Yelda Türkmenoğlu(Department of Pediatrics, Prof. Dr. Cemil Tascioglu City Hospital, University of Health Sciences, İstanbul, Türkiye)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aygül Nabaliyeva, Belen Ateş, Yelda Türkmenoğlu. Maternal attitudes toward infant feeding and breastfeeding duration among mothers of healthy term infants: An Iowa infant feeding attitude scale study. Turkish Journal of Pediatric Disease 2026-09-25. DOI: 10.12956/tjpd.2026.1378. 原著ライセンス:CC BY.