著者の所属・活動拠点の国は、イスラエルです。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
研究チームは、高血圧対策の食事法であるDASH食に沿った食生活が、高齢者の虚血性脳卒中(脳の血管が詰まる脳梗塞)の発症の少なさと関連するか、また、その関連が男女で異なるかを調べました。
DASH食と脳卒中の関連は以前から研究されていましたが、脳梗塞に絞った研究は限られ、男女差についても結果が一致していませんでした。そこで著者らは、イスラエルの地域で暮らす高齢者の栄養調査と、全国の脳卒中登録を結び付けて分析しました。
何を、どのように調べたか
もとになったのは、2005~2006年に65歳以上を対象に行われた全国健康・栄養調査です。主な分析には、脳卒中登録による追跡が始まった2014年1月時点で生存していた1,177人を含めました。追跡開始時の年齢の中央値は81歳で、56.2%が女性でした。研究チームは2022年末までの登録情報を用い、初めての脳梗塞の発症を平均6.6年間追跡しました。
食事は、調査時に過去24時間の摂取内容を聞き取って評価しました。9つの栄養素について目標の達成度を採点し、合計9点満点のうち4.5点以上をDASH食への適合群、4.5点未満を非適合群としました。適合群は326人、非適合群は851人でした。
解析では、年齢、人口集団、社会経済状況、摂取エネルギー、喫煙、身体活動などの違いを統計的に調整し、食事と発症との関連を男女別に推定しました。また、追跡中の死亡によって、その後の脳梗塞が起こり得なくなることも考慮しました。食事を研究者が割り当てる試験ではなく、もとの食生活と、その後の発症との関連を調べた観察研究です。
主な報告結果
追跡中に初めての脳梗塞が確認されたのは60人で、うち40人が女性でした。女性では、DASH食への適合群の発症割合は1.9%、非適合群は8.0%でした。
ほかの要因を調整した主な解析でも、女性の適合群は非適合群に比べ、初めての脳梗塞のリスクが76%低いという関連が報告されました。死亡も考慮した相対的な発症指標であるハザード比は0.24で、推定の不確かさを示す95%信頼区間は0.08~0.68でした。
一方、男性では適合群の発症割合が6.3%、非適合群が3.2%で、調整後のハザード比は2.03でした。ただし95%信頼区間は0.77~5.40と広く、統計的に明確な関連は認められませんでした。食事への適合度と発症との関連が男女で異なることを調べる検定では、有意な差が報告されました。
食事の適合度を別の区分で評価した解析や、再発を含む追跡期間中の最初の脳梗塞を対象にした解析でも、女性では適合度の高さと発症の少なさとの関連がみられました。
この報告が示すこと
著者らは、高齢者の食事パターンと脳梗塞との関係を考える際には、男女で関連が異なる可能性に目を向ける必要があるとしています。ただし、この研究が示したのは食生活と発症との関連であり、DASH食によって脳梗塞が減ったという因果関係を確定するものではありません。
食事の評価は2005~2006年の1日分だけで、2014年に始まる発症の追跡までに食生活が変わった可能性があります。また、追跡開始まで生存した人を対象にしているため、健康状態の悪い人や早期に発症した人が含まれにくかった可能性も、著者らは限界に挙げています。発症数、とくに男性の発症数が少なく、男女別の推定には幅があるため、男性で逆向きだった数値も慎重に解釈する必要があります。
原著論文の著者・所属:Miri Lutski(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health; School of Nutritional Sciences, The Robert H. Smith Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem; School of Public Health, Gray Faculty of Medical and Health Sciences, Tel Aviv University)、Carmit Libruder(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health)、Binyamin Binyaminy(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health)、Aliza H. Stark(School of Nutritional Sciences, The Robert H. Smith Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem)、Rita Dichtiar(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health)、Lital Keinan-Boker(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health; School of Public Health, University of Haifa)、Efrat Monsonego-Ornan(School of Nutritional Sciences, The Robert H. Smith Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem)、Tali Sinai(Israel Center for Disease Control, Israel Ministry of Health; School of Nutritional Sciences, The Robert H. Smith Faculty of Agriculture, Food and Environment, The Hebrew University of Jerusalem)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Miri Lutski, Carmit Libruder, Binyamin Binyaminy, et al. DASH diet adherence is associated with lower ischemic stroke incidence among older women: findings from a sex-specific analysis. Frontiers in Nutrition(出版社:Frontiers Media) 2026-11-06. DOI: 10.3389/fnut.2026.1954759. 原著ライセンス:CC BY.