著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Food Chemistry X
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
著者らは、たんぱく質を使ってでんぷんの物理的・化学的な性質を調節するには、でんぷんとたんぱく質の分子どうしの結びつき(相互作用)を強めることが重要だと位置づけています。
そこで研究チームは、エンドウ豆から取り出したたんぱく質(エンドウ豆たんぱく質分離物)にあらかじめ「ボールミル処理」を施しました。そのたんぱく質を米でんぷんと混ぜたときに、でんぷんの物理的・化学的な性質や、試験管内での消化のされ方がどう変わるかを調べています。ボールミル処理とは、容器の中で硬い球と試料を一緒に回転・衝突させ、機械的な力で試料を細かく砕いたり構造を変えたりする方法です。
調べたこと
研究では、エンドウ豆たんぱく質を0分(未処理)、10分、20分、30分、40分の5通りの時間でボールミル処理し、それぞれを米でんぷんと混ぜた試料を用意しました。
そのうえで、水を含んで膨らむ度合い(膨潤力)、水を吸収する能力、水への溶けやすさといった基本的な性質に加え、加熱で糊状になる際の性質、粘りの変化、冷えて固まったゲルの硬さなどを比較しました。さらに、人の体内ではなく試験管内で消化を再現する試験を行い、でんぷんの消化されやすさを評価しました。
主な結果
論文の報告によると、40分間ボールミル処理したたんぱく質を使った混合物では、未処理のたんぱく質を使った場合と比べて、膨潤力が5.38%、吸水能力が6.39%低下し、溶けやすさは21.25%高まりました。
また、ボールミル処理したたんぱく質を混ぜることで、でんぷん分子の局所的な並びの規則性(短い範囲での秩序)が弱まりました。あわせて、糊化(加熱によってでんぷんが水を吸って糊状になる変化)に必要な熱量や、加熱・冷却の過程で測った各種の粘度、冷えてからの粘りの戻り、ゲルの硬さが低下したと報告されています。
試験管内での消化試験では、40分処理したたんぱく質を混ぜた試料ででんぷんの消化が遅くなり、消化されにくい「レジスタントスターチ」の含有量が23.78%増えたとされています。
一方で、処理時間が20分を超えると、糊化に必要な熱量、冷えてからの粘りの戻り、ゲルの硬さ、そして速やかに消化されるでんぷんの量については、それ以上の統計的に有意な変化は見られなかったと報告されています。
研究が示すこと
この研究は、たんぱく質にあらかじめ機械的な処理を加えることで、混ぜ合わせた米でんぷんの性質や試験管内での消化のされ方が変わりうることを示しました。また、一部の性質では処理時間を20分より長くしても変化が頭打ちになるという結果も得られています。
著者らは、この成果が栄養面で質が高く、血糖値を上げにくいでんぷん系食品を開発するうえでの指針になりうると述べています。ただし、今回の消化に関する結果は試験管内の試験によるものであり、人が食べたときの効果を直接確かめたものではありません。
原著論文の著者・所属:Jun Jiang(Key Laboratory of Jianghuai Agricultural Product Fine Processing and Resource Utilization of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Yirong Zhang(Key Laboratory of Jianghuai Agricultural Product Fine Processing and Resource Utilization of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Jun Wang(School of Cultural Tourism and Education, Anhui Technical College of Industry and Economy, Hefei 230036, China)、Derui Kong(Key Laboratory of Jianghuai Agricultural Product Fine Processing and Resource Utilization of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Tianyu Yang(Key Laboratory of Jianghuai Agricultural Product Fine Processing and Resource Utilization of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)、Zuohua Zhu(Institute of Bast Fiber Crops & Center of Southern Economic Crops, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Changsha 410205, China)、Naifu Wang(Key Laboratory of Jianghuai Agricultural Product Fine Processing and Resource Utilization of Ministry of Agriculture and Rural Affairs, College of Food and Nutrition, Anhui Agricultural University, Hefei 230036, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jun Jiang, Yirong Zhang, Jun Wang, et al. Modulating rice starch physicochemical and in vitro digestive properties with ball-milled pea protein isolate: Effect of ball-milling time. Food Chemistry X 2026-09-19. DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104466. 原著ライセンス:CC BY.