著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。
掲載誌:Precision Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
技術導入への姿勢の違いを調べる
研究チームは、イタリアのワイン用ブドウ生産者が精密農業技術の導入をどう考えているかを調べました。精密農業とは、衛星やセンサーなどの情報を使い、畑の場所ごとの状態に合わせて管理する農業です。生産者をひとまとめにせず、導入への姿勢が異なるグループを見いだし、それぞれに関連する意識や支援条件を明らかにすることが研究の目的でした。
調査には、ヴェネト、シチリア、プーリア、トスカーナの4州でワイン用ブドウを生産する272人が回答しました。研究チームは、衛星情報サービス、ドローン、肥料などの投入量を場所ごとに変える技術、農機の自動操舵、農作業ロボットについて、今後5年間の導入意向を尋ねました。併せて、使いやすさの認識、周囲の人々からの期待や後押し、リスクの捉え方、技術へのなじみ、公的支援の利用などを調べました。
導入意向には三つのタイプ
研究チームは、複数の技術に対する回答の組み合わせから、表面には見えにくいグループを推定する「潜在クラス分析」を用いました。その結果、「リスクに敏感で導入に懐疑的な層」「技術を選んで取り入れようとする実用重視の層」「使いやすさを重視し、幅広い技術の導入に積極的な層」という三つのタイプを報告しました。
特に導入意向が高い層を特徴づけていたのは、技術を理解・操作しやすいと感じることと、周囲から導入を支持されているという認識でした。リスクに関する意識もグループの違いに関わりましたが、その関わり方はより限定的でした。
また、農村開発プログラムによる支援を受けた経験は、懐疑的な層に比べて、選択的な層と積極的な層のいずれに属することとも関連していました。技術へのなじみは積極的な層との関連が認められました。生産者組織を通じて共同で技術を利用する仕組みへの関心も、特に選択的な層で関連が示唆されました。
一律ではなく、生産者の姿勢に合った支援へ
著者らは、導入に懐疑的な生産者には信頼できる相手との交流や実演、技術を選んで導入する生産者にはデータの読み取りや運用の支援、積極的な生産者には複数の技術を組み合わせて使うための支援など、姿勢に応じた対応が重要だと論じています。
ただし、この研究が捉えたのは自己申告による導入意向であり、実際の導入ではありません。また、一時点の調査から、支援や意識が導入意向を高めたという因果関係までは判断できません。研究が示すのは、精密農業への向き合い方には違いがあり、普及を考える際には技術の提供だけでなく、生産者ごとの認識や利用条件を見る必要があるということです。
原著論文の著者・所属:Adriano Biondo(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences, University Palermo, Palermo, Italy)、Antonino Galati(Department of Agricultural, Food and Forest Sciences, University Palermo, Palermo, Italy)、Francesco Caracciolo(Department of Agricultural Sciences – Economics and Policy Group, University of Naples “Federico II”, Portici, Italy)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Adriano Biondo, Antonino Galati, Francesco Caracciolo. Heterogeneous behaviours towards precision agriculture adoption among Italian winegrowers: insights from latent class analysis. Precision Agriculture 2026-09-10. DOI: 10.1007/s11119-026-10448-0. 原著ライセンス:CC BY.