著者の所属・活動拠点の国は、中国、韓国です。
掲載誌:Molecules
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:蒸す回数による変化を調べる
アメリカニンジン(西洋人参)には、ジンセノシドと呼ばれるサポニンの一群のほか、ポリフェノールやフラボノイドなどの成分が含まれています。生の根にはRb1やReといった「主要ジンセノシド」が多く、Rg3やRg5などの「希少ジンセノシド」はわずかしか含まれません。蒸すなどの加熱処理を行うと、主要ジンセノシドから糖が外れるなどの化学変化が起こり、希少ジンセノシドに変わることが知られています。
一方、従来の蒸し加工は工程を何度も繰り返す必要があり、60時間以上かかる場合もあると研究チームは指摘しています。そこで著者らは、熱・圧力・水蒸気を組み合わせる高温高圧蒸し処理に着目しました。この処理を1〜4回繰り返したとき、ジンセノシドの組成、ポリフェノールとフラボノイドの総量、抗酸化活性がどう変わるかを調べ、目的に合った処理回数を見極めることを目指しました。
どのように調べたか
研究チームは、栽培4年目の新鮮なアメリカニンジンの根を縦に5等分し、1片を凍結乾燥した未処理の対照に、残りを1〜4回の処理にそれぞれ割り当てました。1回の処理は、120℃で90分間保持する高温高圧蒸しで、加熱・保持・冷却の段階を含みます。
処理後の試料について、液体クロマトグラフィーという分析法で17種類のジンセノシドを個別に定量し、ポリフェノールとフラボノイドの総量も測定しました。抗酸化活性は、DPPH、ABTS+、ヒドロキシルラジカル(·OH)という3種類のラジカルを試験管内でどれだけ消去できるかで評価しました。指標には、ラジカルを半分消去するのに必要な試料濃度(IC50)を用いており、この値が小さいほど活性が強いことを意味します。あわせて、成分量と抗酸化活性の相関も分析しました。
主な結果:主要成分が減り、希少成分が増えた
処理を重ねるごとに、根の色は淡い黄白色から濃い褐色へ変化しました。成分面では、主要ジンセノシドが大きく減少しました。たとえば対照で最も多かったRb1は1グラムあたり16.91ミリグラムでしたが、3回処理後には0.26ミリグラムまで減りました。ReとRg1も、3回処理後には対照より99%以上減少したと報告されています。
反対に、対照では検出されなかった希少ジンセノシドが処理後に現れました。3回処理後には、Rg5が1グラムあたり20.07ミリグラム、Rg3が8.68ミリグラム、Rk1が6.02ミリグラムに達し、F4、Rg6、Rh1も含めて多くがこの段階で最大となりました。ジンセノシドの総量も対照の38.67ミリグラムから3回処理後には49.62ミリグラムに増えましたが、4回処理後には多くの希少ジンセノシドが減少に転じました。著者らは、成分が段階的に変換され、処理が進みすぎると分解なども起こると考えています。
ポリフェノールの総量は2回処理後に対照の6.74倍、フラボノイドの総量は3回処理後に4.27倍となりました。抗酸化活性はどの試験でも処理によって強まり、DPPHとABTS+の消去活性は2回処理、·OHの消去活性は3回処理で最も強くなりました。相関分析では、ポリフェノール、フラボノイド、一部の希少ジンセノシドが抗酸化活性と強い正の相関を示し、主要ジンセノシドは負の相関を示しました。ただし、これは成分量と活性が同時に変化したことを示す関連であり、どの成分が活性を生んだかを直接確かめたものではありません。
研究から見えること
この研究は、高温高圧蒸し処理によってアメリカニンジンの成分構成が大きく変わり、その変化の度合いが処理回数に左右されることを示しました。研究チームは、ポリフェノール量とDPPH・ABTS+の消去活性を重視するなら2回、希少ジンセノシドの蓄積と·OHの消去活性を重視するなら3回の処理が適していると結論づけています。最適な処理回数は一つに決まるのではなく、どの成分や性質を引き出したいかによって選ぶべきだ、というのが論文の示す要点です。
著者:Wenhui Yu(School of Food Engineering, Yantai Engineering Research Center of Green Food Processing and Quality Control, Ludong University, Yantai 264025, China)、Ruoqi Han(School of Food Engineering, Yantai Engineering Research Center of Green Food Processing and Quality Control, Ludong University, Yantai 264025, China)、Taihong Liu(School of Food Engineering, Yantai Engineering Research Center of Green Food Processing and Quality Control, Ludong University, Yantai 264025, China)、Xuemei Sun(School of Food Engineering, Yantai Engineering Research Center of Green Food Processing and Quality Control, Ludong University, Yantai 264025, China)、Han Wang(College of Biological and Pharmaceutical Engineering, Shandong University of Aeronautics, Binzhou 256600, China)、Juan Fu(College of Biological and Pharmaceutical Engineering, Shandong University of Aeronautics, Binzhou 256600, China)、Shucheng Duan(Binzhou Key Laboratory of Edible Fungi Breeding and High Value Utilization (Preparation), College of Biological and Pharmaceutical Engineering, Shandong University of Aeronautics, Binzhou 256600, China)、Seok Hyun Eom(Graduate School of Green-Bio Science, College of Life Sciences, Kyung Hee University, Yongin 17104, Republic of Korea)、Cheng Wu Jin(School of Food Engineering, Yantai Engineering Research Center of Green Food Processing and Quality Control, Ludong University, Yantai 264025, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wenhui Yu, Ruoqi Han, Taihong Liu, et al. The Impact of High-Temperature and High-Pressure Steaming Treatment on Bioactive Compounds and Antioxidant Activity in American Ginseng. Molecules 2026-10-16. DOI: 10.3390/molecules31203706. 原著ライセンス:CC BY.