著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。
掲載誌:Jurnal Pengolahan Hasil Perikanan Indonesia
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
伝統料理を若い世代の視点から見直す
サテ・バンデンは、インドネシア・バンテン州、特にセラン周辺に伝わる郷土料理です。サバヒー(ミルクフィッシュ)の身と小骨を取り出し、身を調味料と混ぜてから魚の皮に詰め直し、焼き上げて作ります。独特の食感と旨みがあり、旅行者のみやげとしても人気で、地域の零細・中小事業者の重要な商品になっています。
一方で著者らは、手軽さや本物らしさ、品質を重視し、デジタル経由で商品を選ぶことの多いZ世代が消費者の中心になりつつあるなかで、伝統食品が支持され続けるには課題があると指摘しています。製造所ごとに品質にばらつきがあることも、消費者の信頼に影響しうる点として挙げられています。そこで研究チームは、サテ・バンデンの現状を把握し、Z世代による好みの評価と化学分析の両面から品質を明らかにすることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは、セラン市とセラン県で実際にサテ・バンデンを製造・販売し、協力に同意した11の事業者を選び、観察と聞き取りを行ったうえで、販売できる状態の製品を集めました。
まず、訓練を受けていないZ世代の30人に、製造元が分からないよう記号を付けた試料を味わってもらいました。見た目、香り、食感、味の4項目について、「1=きわめて嫌い」から「5=どちらでもない」「7=好き」「9=きわめて好き」までの9段階で好みを評価してもらっています。
この評価をもとに、異なる製造元の3製品を選び、水分、灰分(ミネラル分の目安)、たんぱく質、脂質、炭水化物の量を分析しました。炭水化物は、全体の100%から他の成分の割合を差し引いて求めています。さらに、焼くなどの加熱調理で生じることがある有害物質の一群、多環芳香族炭化水素(PAH)が含まれていないかを、ガスクロマトグラフィーで調べました。
主な結果
好みの評価の平均点は、見た目が4.70〜7.20、味が5.10〜6.90、香りが5.70〜7.00、食感が5.00〜7.20でした。おおむね「どちらでもない」から「好き」の範囲にあり、著者らは、サテ・バンデンはZ世代におおむね受け入れられていると報告しています。いずれの項目でも製品間に統計的な差がみられ、製造元によって評価が分かれることも示されました。
成分分析を行った3製品は、灰分が2.21〜3.18%、たんぱく質が8.99〜12.36%、脂質が11.07〜19.86%、水分が53.39〜60.39%、炭水化物が9.80〜13.89%と報告されています。脂質の量は3製品とも、インドネシアの燻製魚の品質基準が定める上限20%以内でした。100gあたりのエネルギーは約204〜273kcalで、たんぱく質が最も多かった製品は1日に必要なたんぱく質の約21%をまかなえると試算されています。脂質が100gあたり19.13gと多かった製品の一つについて、著者らは濃いココナッツミルクを材料に使っていることを理由に挙げています。また、エネルギーが最も高かった製品については、その高さは主に脂質の多さによるものと説明されています。
また、水分が多いため常温での日持ちは1〜2日程度と短く、製造者は一般に真空包装と−20℃での冷凍保存によって約6か月保存できるよう対応していると述べられています。
PAHの検査では、調べた製品から汚染は検出されませんでした。この結果から著者らは、健康面からみてこの伝統食品は安全に食べられると結論づけています。
研究が伝えること
この研究は、地域の伝統料理であるサテ・バンデンが若い世代にも一定程度受け入れられている一方、製造元によって味の評価や栄養成分に違いがあることを示しました。著者らは、伝統食品を守り続けるには文化的な価値だけでなく、今の消費者の好みに合わせて品質を整えていくことが大切だとしています。
原著論文の著者・所属:Sakinah Haryati(Universitas Sultan Ageng Tirtayasa)、Rifki Prayoga Aditia(Universitas Sultan Ageng Tirtayasa)、Devi Faustine Elvina Nuryadin(Universitas Sultan Ageng Tirtayasa)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sakinah Haryati, Rifki Prayoga Aditia, Devi Faustine Elvina Nuryadin. Evaluation of sensory quality from a generation Z perspective, nutritional composition, and PAH safety in satai bandeng (deboned milkfish satay) from Banten Province. Jurnal Pengolahan Hasil Perikanan Indonesia 2026-09-29. DOI: 10.17844/45djvr04. 原著ライセンス:CC BY.